1時間以上並ぶことも珍しくないのが、人気ラーメン店。多くの人が訪れるだけに、迷惑客もしばしば紛れ込んでしまうようだ。

 石川光夫さん(仮名・40代)は、ラーメン店で“ありえない客”を目撃したことがあるという。

「美味しんぼの海原雄山か」人気ラーメン店で女性客に知識マウン...の画像はこちら >>

超有名店で講釈を垂れる50代男性

 ある日、石川さんは都内の超有名店を訪れラーメンを食べていたところ、50代くらいの男性がブツブツと独り言を言っていた。

「『このスープはガラを使って炊いているから旨味がすごい。セントラルキッチンを使わず、店でしっかり炊いているからこの味が出る。チェーン店では出せない味だ。ガラは……』と、うんぬんかんぬん。『美味しんぼ』の海原雄山かと思うような感じで、隣の女性に向かって講釈を垂れていたんです。てっきり2人は知り合いだと思っていたのですが……」

 着丼を待っていた女性から、予想外の発言が飛び出す。

「女性は『なんなんですか。やめてください。うるさいし、私、あなたの講釈を聞きに来たわけではありませんよ。余計なことしないでください。だいたい、あなたは一体誰ですか? なにが目的で私に話しかけるんですか?』と、言い返したんです。
おそらく店内の全員が知り合いだと思っていたことでしょう。ラーメンの熱気に包まれた店内が、一気に凍りつきました」

「話しかけないでください」と言われているのに…

 一方の男性はどこ吹く風で、口数を減らさない。

「『いやいや、ラーメンの楽しみ方を教えてあげているんですよ』と言い、その後も『ご飯は注文しましたか? ラーメンにのりを巻いて食べるのが正しい食べ方ですよ』『にんにくはたっぷり入れないとおいしくない』などと、しつこく説明を続けていました」

 女性は「あなたの言っていることは全部知っています。とにかく話しかけないでください」と何度も伝えるも、効果はなかった。

「男性は『僕はラーメンにめちゃくちゃ詳しいから、普通の人じゃわからないことも全部知っている。たとえばこの麺。ここの店は◯◯製麺の麺を使っていて、このスープでなければ合わない』と知識自慢のギアを上げました。果てには『僕についてくれば、おいしいラーメンをたくさん食べさせてあげますよ』とナンパまがいの台詞まで発して。これはちょっと、さすがに見て見ぬふりはできないぞと思いはじめていました」

「食べログに低評価をつけるよ?」と悪あがき

 一体どうなったのだろうか。

「厨房から店主と見られる男性が現れ、『お客さん、いい加減にしてください。迷惑行為をするなら出ていってください』と声をかけました。それでも男性は『迷惑行為なんかしていないだろ。だいたい、客にそんな口を利いていいの? SNSで拡散するし、食べログに低評価をつけるよ?』と脅していました」

 これに店主がブチ切れる。

「『うるせえよ。
どうとでも書けばいい。おまえみたいなのに食わせるラーメンはねえ。さっさと出ていけ。ラーメンを作ったこともないくせに評論家を気取るんじゃねえ』と、大声で一喝。男性はすっかり元気がなくなって、『僕はラーメンが好きで教えているだけ。お金を払ってきたのにひどすぎる』と涙目になりながら去っていきました」

ああいう人がいると“ラーメン好き”が…

 迷惑行為の自覚がまるでないことに驚く一同をよそに、フォローを忘れない人物がひとり。

「店主は女性に『ゆっくり食べてください。嫌な思いをさせてすみません』と謝っていました。店主の判断に拍手を送りたい気持ちになりましたが、それ以上に『あんな人間がいるのか』とドン引きしました」

 石川さんは、目撃した出来事を振り返りながら語る。

「個人のこだわりを他人に押し付ける行為は良くありません。ましてや女性をナンパしようとするなんて、言語道断です。二度と遭遇したくないタイプの男性でした。
僕もラーメンが大好きで食べ歩いていますが、ああいう人がいると“ラーメン好き”が奇異の目で見られるのですごく嫌ですよ」

 ラーメン店に限らず、ゴルフや釣りなどでも、おじさんが若い女性に対して「教えたがる」事例は多いと聞く。望まれない解説で相手を困らせては、退店命令は当然の帰結だろう。

<TEXT/佐藤俊治>

【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など
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