‘24年9月9日にデビュー25周年を迎え、その「25周年イヤー」の締めくくりとなるニューアルバムを10月15日に発売する後藤真希。’24年11月に発売された写真集は重版をくり返す大ヒットとなり、電子版では日本における「歴代売上No.1」となる記録を達成した。
メディア露出も増え、ますます勢いに乗る彼女は、その足を止めることなく意欲的に新しいことに挑戦しつづけている。
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今月、ちょうど40歳の節目を迎えるタイミングでもある彼女に、改めてこれまでの25年間の軌跡を振り返ってもらった。最新アルバムの情報はもちろん、彼女にとって「モーニング娘。」とはどのような存在か、過去の自分といまの自分の違いや変化、活動するうえで大切にしてきたことなど、彼女の内面や考え方にも触れながら、たっぷり語っていただいた。

後藤真希『オーラは作れる!』 写真集ヒットから握手会復活まで、止まらない挑戦の理由
後藤真希
――新しくリリースされるアルバムはデビュー25周年を総括するアルバムということでタイトルも『COLLECTION』となっています。どのような内容になっているのでしょうか。

後藤:アルバム全体がファッションショーみたいな感覚の「コレクション」だと思っています。モーニング娘。の曲のカバーに加えて、新曲2曲が入っていたり、(花村)想太くんとコラボした曲が入っていたりと、それぞれ違う“お洋服”が収納されているようなイメージで曲を楽しんでいただける内容です。タイトルをつけるときにどうしようかと悩みましたが、私としてはいい意味で統一感がない収録曲が集まっているので、タイトルは「COLLECTION」しかないなと思いました。

――楽曲をお聴きすると、全体を通して後藤さんらしさを感じる内容にも思えましたが、「いい意味で統一感がない」というのは具体的にどのような部分でしょうか。

後藤:モーニング娘。時代の「Memory 青春の光」や「NIGHT OF TOKYO CITY」は26年くらい前の曲で、私が在籍する前の曲になります。
「そうだ! We’re ALIVE」は在籍中の曲になりますが、それでも高校生のときの楽曲です。今年リリースされた楽曲や2曲の新曲という、発売時期も性格も全然違う曲たちを1枚のなかに詰めるのは、けっこうチャレンジングな試みだったんです。 ‎

――新曲「Which? Prod. Giga」はAdoさんの楽曲を手がけるGigaさんによる完全プロデュース曲です。どのような1曲に仕上がりましたか。

後藤:1曲のなかで展開がたくさん詰まっているところが見どころであり、面白い曲だと思っています。テンポ感がめちゃくちゃ早いんですよ! 曲のテイストとしても、私の曲にはない新鮮さがありました。楽曲自体が新しい挑戦です。ボーカルではいろんな声色というか、「声の出し方」で変化をつけたりもしていて、現在の私の「自己紹介」的な曲にもなっていると思います。「こんな感じでやってます!」みたいな。

――モーニング娘。のカバー曲は3曲収録されていますが、選曲にも後藤さんの意見が反映されているのでしょうか。

後藤:3曲とも私が選びました。
でも、けっこう迷いましたね。たとえば、モーニング娘。といえば「LOVEマシーン」や「ハッピーサマーウェディング」などがテレビやSNSでよく流れています。しかし、「そうだ! We’re ALIVE」は前の2曲に比べればそれほどではありませんし、モーニング娘。在籍中の曲だというのもあって、久しぶりにここでもう一度歌ってみたいと思ったんです。モーニング娘。は、はっちゃけた曲や明るくてかわいらしい曲が多いんですけど、「この曲はやり方を変えれば、もっとかっこいい雰囲気を出せるはずだ」という思いもあって「そうだ! We’re ALIVE」を選びました。

――デビューから25周年を迎えた「いまの後藤真希」がモーニング娘。を歌う率直な心境とはどのようなものでしょうか。もしくは、どのようなものを届けたいとお感じになっているのかを教えてください。

後藤:私が加入前に抱いていたモーニング娘。のイメージといえば、「Memory青春の光」や「NIGHT OF TOKYO CITY」のイメージでした。
ですから、「モーニング娘。って本来こうだったよね」という気持ちを大切にしながら歌っています。そのなかで、「Memory青春の光」は、男性の声で入っていたラップを女性の声にしたりと変化を加えています。「NIGHT OF TOKYO CITY」も原曲に忠実なアレンジになっていますが、ミックスのバランスを取りながら、強調して聞きたい部分のレベルを調整しました。昔の音色ではなく「いまの音色」に変わってるので、新しい感覚で聴いていただけると思います。

――ニューアルバムの発売のほか、完全生産限定BOXが発売されます。CD4枚とBlu-ray3枚の計7枚組に加えて、豪華特典も用意されているとのこと。そのなかの1つに「完全撮り下ろしのフォトブック」がありファンならずとも気になるところかと思いますが、どのような内容になっているのでしょうか。

後藤:アルバムのジャケット撮影はかわいらしいイメージを出しながら撮影させていただいたのですが、特典のフォトブックのほうはもうちょっと「ツン」としてるというか、たぶん世の中の人が思う「後藤真希」の雰囲気が感じられるのがフォトブックだと思います。完全生産限定BOXの魅力としては、やっぱりディスクがたくさん入ってるので、(ソロデビュー曲となる)「愛のバカやろう」からはじまる過去の楽曲やMVを一気にたどって見られるところです。25周年ならではの要素が大いに盛り込まれたボックスになっているので、私の成長過程がしっかり見られます。ちょっと恥ずかしいですけどね(笑)

25年はあっという間だった

後藤真希『オーラは作れる!』 写真集ヒットから握手会復活まで、止まらない挑戦の理由
後藤真希
――そんな後藤さんの25周年を振り返る質問をいくつかさせてください。
まず、デビューから今日までの25年間を総括するとしたら、どんな25年でしたか?

後藤:「早かった」のひと言ですね。私は‘08年にハロプロからエイベックスに移りましたが、エイベックスにいるほうがもう長いんですよ。そう考えると、どの時代も内容が濃くて、本当に1年ずつがあっという間でした。いまの時代はSNSで過去の映像が流れてくることも多いので、そういうのを見ると「いやいや、全然このときのこと覚えてる!」という感覚で見ちゃうものがたくさんあります。だから、より「あっという間感」があります。

――アイドルを卒業された後にタレントになる方は多くいますが、デビューから25年経ってもなお、歌い続ける人は決して多くないと思います。歌い続けることへの理由がなにかあるのでしょうか。

後藤:自分でも思うんですよね、「なんで歌っているんだろう?」って。でも、新しい曲を作るたびに自分の好みがどんどん出てくるし、やりたいことが増えていく。その過程を楽しめているから、結局、「好きなことをすること」が歌うことに結びついているんだと思います。

――昨年は写真集『flos』が大ヒットしました。大きな注目を集めた1年だったと思いますが、ご自身ではどう受け止めていますか?

後藤:正直、びっくりしました。
「たくさんの人に見てもらえたらいいな」という思いで撮影していましたが、それが本当に実現したことに衝撃を受けました。まるで自分のことじゃないような気持ちです。実際に日常の何かが劇的に変わったわけではありませんが、番組で共演するタレントさんが写真集を持っていたりするんですよ。「そこにも私の写真集が届いているんだ!」という気持ちになってうれしく思います。

――番組での共演といえば、話題になっているアイドルの方と共演することも多いと思います。ご自身がアイドルをしていたときと比べて、「いま話題のアイドル」の方に何か違いを感じる部分はありますか?

後藤:いろいろ感じます。私が現役バリバリでアイドルをやっていたころは「アイドルやってます!」という意識はそれほどないというか、「かわいく見せる」よりも「かっこよく見せる」イメージでやっていました。振付の先生も「ここはかっこよく」とか「ここはちょっとふざけて」とか、そういうメリハリを大事にしていました。たとえば表情について、「こういう意味でやってほしい」と意味を持たせてやっていたので、自分をかわいく見せるというよりも、この曲で求められていることをそれぞれが忠実に再現したり、先生が表現したいパフォーマンスを自分たちなりにできるかということを考えたりして挑んでいました。いま活躍されているアイドルさんたちは表情の作り方が「かわいい」で統一されていて、ふわっとした雰囲気を重視されているように感じます。それに比べて当時の私たちは、表現するなら「オラー!」っていう感じでした。

――比較していただくと、当時のアイドルといまのアイドルの見せ方が全然違うことに気づかされます。


後藤:「かわいい」ことをやろうと思うと照れが出てしまうものですが、普通にそれができるのはすごいことだと思います。「これ、かわいくやってください」って言われても「えっ!?」ってなることが多いと思うんですけど、それを普通にできるのがすごい。 ‎

――ご自身も、時代も変化していくなかで、これまでで一番大変だった時期、もしくは辞めようと思った瞬間はなかったのでしょうか。

後藤真希『オーラは作れる!』 写真集ヒットから握手会復活まで、止まらない挑戦の理由
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後藤:ありますよ。デビュー曲の「LOVEマシーン」がリリースされる直前、もうやめたいなと思いました(笑)。「なんで私はここに来てしまったんだろうか」と思うこともありましたね。すでに存在しているグループに入るために覚えなきゃいけないことが目まぐるしいほどあって、そのなかで毎日違う内容のお仕事もしている状態でした。自分的に容量オーバーのままずっと続いていたので、入ったばかりの頃は、その時点でもう「私、無理かも」という感じでした。でも、ステージに立って目の前にお客さんがたくさん来てくれているのを見ると、「もう辞めてやる」という気持ちを忘れるんですよね。そういった意味では、やっぱり出る側も見る側も、ステージからもらえるパワーがあるのだと思います。

――メディア露出も増えているなか、視聴者がSNSで「やっぱり後藤真希だよな」と投稿するケースをよく見かけます。いまの後藤さんの変わらない魅力や存在感に驚く人が多いということもでもあるかと思いますが、ご自身の魅力をキープするために意識していることはありますか。

後藤:たとえば見た目とか、そういうものは常日頃の努力というか、ちゃんとケアしてキープしようという意識は元々あります。それ以外の魅力や存在感ということでいえば、よく「オーラがある」と言ってくださるのですが、そういうものも私は「作れるもの」だと思っているんです。ちょっとした仕草や目線、身体の向きや顔の角度など、そういう部分をリハのときに鏡を見ながら「この感じがいいな」と自分のなかに落とし込んでやっています。

――年齢を重ねていくなかで経験による変化はありましたか。

後藤:気持ちの面での変化はあったと思います。元々そんなに自分のことを家族以外の人にたくさん喋るような人間ではありませんでした。ですが、周りの人がいろいろ気にしてくれるような状況が生まれて、私も自然とコミュニケーションを取るようになっていきました。それが普通になっていくにつれ、仕事でもコミュニケーションをとるのが以前よりしやすくなったし、精神面でも余裕が持てるようになったんです。あまり1人で考えすぎなくなったのは大きな変化です。

――いまアイドルグループの楽曲を中心に、自己肯定感を高めるような曲が広く受け入れられています。後藤さんは自分に自信はあるタイプなのでしょうか。

後藤:ある程度の自信は持っています。でも、やっぱり不安なこともたくさんありますよ。たとえば、歌うことは毎回不安です。「この曲、うまく歌えるかな」っていつも思っています。だから歌番組の収録などは、実は、本当にすごく緊張しているんです。カメラ目線を送るときも「ちょっとぎこちないかも」と自分で感じてしまうときもあるくらい。

――仕事でもプライベートでも、自信を持てないという人は多くいます。後藤さんは自信がなくなったり不安になったりしたとき、どうやって対処していますか。

後藤:私の場合、結局、やるしかない職種じゃないですか。どんなに悩んでも「本番」は来ちゃいますからね。だからある程度、自分でやれるところはやって、少しでも「安心材料」を増やしていく作業をすることだと思います。私は「努力」という言葉が全然好きじゃないし、努力すること自体も好きじゃないんですけど、でも結局してるんですよね、努力を。人からは「努力しなくてもそつなくできちゃうタイプ」って言われがちなんですけど、でも多分めっちゃやってて、それが安心材料になっているなと思います。 ‎

――25周年の節目を迎え、今後、どのような「後藤真希」を見せていきたいでしょうか。

後藤:それはずっと考えてきたテーマです。いろいろ試してみたいなと思っていて、この1年は挑戦する活動を多めにやってきました。昨年はももいろクローバーZさんが主催する「ももいろ歌合戦」に出演させていただいて、現役のアイドルさんたちとコラボさせていただいたり。今年のTIF2025への出演もそうですし、9月27日のライブなど現役のアイドルの方々とのコラボを増やしています。アイドル出身なのでアイドルとしての要素もやっていく一方で、それに依存するのではなく、あくまで自分のなかの「これもできる」というアイテムみたいなものだと思ってやっています。そのうえで、自分の好きな「オシャレ」や「かっこよさ」という方向性を目指して活動していくことが、自分にとってもいいのかなと。迷うこともありますが、結果、どれが正解かなんてわからないので!

――今後のイベント予定を拝見すると、そのなかのひとつに握手会が予定されていました。最近はさまざまな観点からアイドルグループでも握手会の開催を控えることが増えていますが、率直なところ、後藤さんは握手会に抵抗はないのですか。 ‎

後藤:抵抗ないですね。「後楽園ゆうえんちで僕と握手!」っていうヒーローショーのCMを私もよく見ていて、「いいなあ」と思っていたんです。このセリフを私も言いたいなと思っていたので、握手会がある名古屋のファンミーティング&LIVEイベントでは「名古屋でマキと握手♪」っていうタイトルをつけたくらいです(笑)

――そんな背景があったとは。もしかしてこの握手会自体、後藤さんの発案ですか。

後藤:そうなんです! 最近、2ショット撮影が多いので握手会をしたいなと思って。もちろん2ショット撮影も他の日程のイベントでやりますが、名古屋では内容を変えて握手会をすることにしました。触れ合う機会も大事ですから。2ショット撮影は横に並んでいるのでファンのみなさんのお顔がそれほど見られないんですよ。でも、握手会だとちゃんと正面から見えますからね。

――今後、やってみたいイベントや広げていきたい活動はありますか。

後藤:とりあえず「こういうのをやりたいね」と口に出して言っているのは、体験型のライブや時期をテーマにしたライブです。たとえば、10月ならハロウィン、12月はクリスマスとか、その時期ならではのイベントがいろいろあるじゃないですか。それらをテーマにしたライブをやってみたいと伝えています。ライブ以外の活動としては、美容関連もずっと好きでやっているテーマなので、何か形にできたらいいなと思っています。私は今月で40歳になりますが、嬉しいことに、そう見えないと言ってもらえることが多いんです。確かに私が子どものころにイメージしていた40歳に比べて、いまの40歳の方ってもう見た目ではそう見えない方が多いじゃないですか。「何を使ってるか」とか「どういうケアをしているのか」を気にしている人が多いのだなということを、Xの投稿でもよく見かけます。自分では当たり前だと思っていたことが、じつは当たり前じゃないこととして褒めてもらえることがあるので、美容に関心のある人に向けても何かアプローチできたらなと思います。 ‎

――それでは最後に、読者の方にメッセージをお願いいたします。

後藤:世の中の多くの人は「後藤真希=モーニング娘。」というイメージがまだ強く残っていると思います。それも本当に嬉しいことなので、改めて感謝だなと思っています。そのうえで、25周年を迎えるにあたり、「意外といろんな活動をしてるよ」ということがまだまだ伝わりきれていないのかなという思いもあります。今回のニューアルバムや新曲を聞いていただき、ぜひ「昔の名刺」と「現在の名刺」を入れ替えていただきたいなと思います。‎

後藤真希『オーラは作れる!』 写真集ヒットから握手会復活まで、止まらない挑戦の理由
後藤真希
アイドルを卒業した人のなかにはアイドル活動はもうやらないという人も多いが、40歳を目前に控えた彼女は、臆することなく現役の人気アイドルと共演し、かといってそれに依存するでもなく、自身の目指す活動をつづけている。「オーラは作れるもの」と語る彼女が、25周年の節目にその存在感の大きさを世間に再認識させたのも、決して偶然ではないだろう。やはり、いつの時代も「後藤真希」は目が離せない存在なのだ。

取材・文/綿谷 翔 撮影/山川修一

【綿谷 翔】
東京大学卒業後、出版社にて多数のベストセラーを担当し独立。書籍編集、著者プロデュース業のほか、アイドルを中心としたエンタメ記事などを担当。認定専門公認心理師としても活動し、とくに離婚、DV、虐待、モラハラなどに関連した家族・夫婦のカウンセリングや犯罪被害者の支援を行う。X:@mellowamber
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