「なんで私だけがこんな生活をしているんだろう? って疑問に思っていました」
物心ついた頃には両親が離婚、暴力、ネグレクト、家出など、その半生は壮絶なものだった……!(記事は全2回の2回目)
「俺のところに来い」“東京在住の23歳の男”を頼って家出
あおいちゃんが17歳の頃、幼少期から人生に悩み続ける彼女にとって、唯一の救いはインターネットだった。自身の吐露した悩みを真剣に聞いてくれていた“東京都在住の23歳の男性”に想いを寄せて、大掛かりな家出を決行した。「彼が『東京に出てきなよ!俺のところに来たらいい』と言ってくれたので、全てを捨ててボストンバッグひとつで夜行バスに乗り込みました」
当時はまだガラケーで、居場所を特定されないために「電池パックを抜いた」というから用意周到だ。
「連れ戻されないために、かなり注意していました。横浜に着いて彼に連絡したら『え、本当にきたの?』って言われてしまって……」
彼は23歳ではなく、なんと、まだ高校生だった。当然、実家で暮らす彼を頼れるわけがない。頼る人も行くあてもないあおいちゃんは、“神待ち掲示板”を使って、家に泊めてくれる男性を探した。
神待ち掲示板で出会った男性と同棲、「結婚する」と宣言したが…

疎遠だった実母にも「結婚する」と伝えていたほど。しかし、あおいちゃんにとって気掛かりだったのが、家の中には絶対開けてはいけない“開かずの間”があることだった。
「その1室が気になりつつも、入ったりはしませんでした。それが、ある時、すごく大きな荷物が届いて、どうしても気になって、彼が仕事中、入っちゃったんです。
彼は政治的な思想があったり、前から少し変わっているとは思っていたんですが、理解できないところがどんどん出てきました」
その後、犬を飼うことを提案され「ペットを飼う=家に縛り付けられるのかも」と恐怖を感じた彼女は、実母を頼ることにした。
介護職に就くが、“ホス狂い”の道へ…

「老人ホームで働きながら資格が取れる区の制度を利用して、介護ヘルパーの資格を取って。でも、当時はストレスも半端なかった。友達がいなかったので、とにかく友達がほしくて。そのときに仲良くなった子が“ホス狂い”で、私がホストにハマるきっかけになったんです」
とはいえ、あおいちゃんは17歳。ホストクラブに入れるのか?
今の厳しい風営法では絶対に無理だろうが「あの頃はゆるかったから全然お店に入れましたね」と笑う。
「店に行かなくてもタイプなホストがまめに連絡をくれて、デートをしたり悩みを聞いてくれたり、抱きしめてくれたり……。もうめっちゃハマってしまいました」
池袋の1K5畳の部屋に困っている女の子たちを“保護”
そして、アフターなどで通っていたバーでスカウトされ、そこで働き始めた。時給は1200円だったが「(飲み屋で働くことが)すっごい自分に合ってる」と感じたようだ。
「その頃は、池袋の1Kで4万3000円のアパートに住んでいました。ホス狂いでお金がなくて家がない子や困っている子を放っておけなくて、しょっちゅう連れて帰ってました。
たくさんの子を居候させたが、中でも忘れられないMちゃん(仮名)という子がいるという。あおいちゃんは「彼女と出会って人生狂いました」と真顔で語る。
「助けてー!」風呂場から叫び声

風呂場から「助けてー!」と叫ぶMちゃんの声が聞こえ、慌ててユニットバスに向かうと、彼女の下半身は血まみれで「もう赤ちゃんの顔半分が出ていたんです」と話す。
「救急車を呼ぼうと電話したら、『清潔な布で包んで、初声をあげていないなら膜を剥がして背中をトントンしてください』と指示をされて……『え、私がやるの?』って(笑)。その通りやって、無事に『オギャー!』と泣きました。そう、私が赤ちゃんを取り上げたんですよ」
Mちゃんの実家に連絡してみたが「もうMとは縁を切っています」とピシャリ。
「出産事件以外にもMちゃんがホストの売掛を返さないから、我が家に知らないホストが土足で乗り込んできたり、本当に大変でした」
この頃のあおいちゃんはバーで店長を任され、ホスト通いを楽しみつつ、「ホス狂いあおい」としてSNSで知名度を上げていった。
SNSでバズ連発!「ROLANDの次に数字が取れる!」と界隈で話題に
「YouTubeチャンネル『ぶーちゃんねる』の立ち上げから関わり、100万回再生を連発させました。あの頃、界隈では『ROLANDの次に数字が取れる!』って言われていました」
ちょうどコロナ禍の真っ只中。バーの営業が昼しかできず、閉店に追い込まれてしまったが、出す動画出す動画、全てバズり続けた。
あおいちゃんは「本当にタイミングが良かった。波に乗れていました」と話すが、まさに「これから!」というところでトラブルに巻き込まれてしまった。
「先程のMちゃんがホストに行くお金を闇金から借りて、私を勝手に保証人にしていたんです。もちろん、私は承諾していません。彼女は3社から借りていて、借金の総額は500万円。“ジャンプ” と言って利息分だけ払うにしても月に9万円支払う必要がありました」
月に9万円を支払っても元金は1円も減らなかった。あおいちゃんは仕事が波に乗っている最中で「絶対に借金があることはバレたくなかった」という。
「なんとか自力で返そうと、バーで無茶な営業をして、お客様を傷つけてしまいました。それが有名配信者さんに暴露されてしまいました。夜職のみんなは『あおいちゃん、やっちゃったね(笑)』程度の反応でしたが、世間一般の私を見る目は完全に変わりました」
借金がバレてしまい、当時勤めていたバーのオーナーに全額肩代わりしてもらった。
「それからは月収制で、毎日夜から朝までバーで働いて仮眠を取ってYouTubeの撮影。スケジュールが毎日パツパツで、空白の日が1日もありませんでした。借金と私が生んでしまった損害金とかいろいろ合わせて約1000万円……。4年間コツコツ働いて、全て返せたわけじゃないんですが、話し合いをして辞めることになったんです。
当時はインフルエンサーとして自身が表に立ちながらも、メンズ地下アイドルのメンバー兼プロデューサーとしても活動していたという。
「メン地下って『無店舗型ホストじゃん!』って気がついたんですよ(笑)。私のファンの子も女の子が多いからちょうどいいし。すぐにメン地下の事務所の代表にプレゼンしたら『人が集まるならいいよ』って言われて、5日間で6人集めました」
メン地下の活動で青春を取り戻した

「メン地下ラクそう!って思ってたけど、現実はキツかった。デビューまで2ヶ月で5曲の歌やダンス、フォーメーションを覚えたり。あとはやっぱりメンズ地下アイドルなので『なんで女がいるの?』っていう批判もあったし。ただ、メンバーと一緒に練習して、ライブして、地方にも行って。なんだか部活動みたいでした。小中高と部活はおろか、学生らしいことをしてこなかったから、青春を取り戻せた気分です。メンバーには感謝です」
元メンバーたちは今、それぞれの分野で活躍しているそうで「私を踏み台にして欲しかったから、彼らが有名になっていくのはすごく嬉しい」と優しく微笑む。
現在もメン地下のプロデュースなどに関わりつつ、インフルエンサーとしてTikTokのダイエットCMに出るなど、多岐にわたって活動しているあおいちゃん。
天国と地獄を味わってきた彼女は、インタビューの最後にこう話す。
「バズを連発させて『これからだ!』ってタイミングで暴露されて地獄を見ました。でも、そんなときに友達が私から携帯を取り上げてくれて、外に連れ出してくれました。
今では何を言われても『あいつなんか言ってるな』ってスルーできるくらい、メンタル激強になったし、いろいろ乗り越えたことで自己成長につながったと思います」
あおいちゃんは「叩かれてナンボ!これからも好きな仕事をたくさんやっていきたいです!」と、そのまま次の撮影に笑顔で向かっていった。
<取材・文/吉沢さりぃ、撮影/藤井厚年>
―[ホス狂いあおい]―
【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720