メジャーリーグのレギュラーシーズンは残り2週間を切った。レギュラーシーズンを終えると、オフを1日挟み、早くもポストシーズンが始まる。

大谷翔平「3年連続4度目のMVP」は当確?本塁打王を逃しても...の画像はこちら >>
 注目のナ・リーグ西地区は、首位ドジャースと2位パドレスによる一騎打ちが続く。ドジャースは注目されたフィリーズとの3連戦で1勝2敗と負け越し、パドレスに2ゲーム差に迫られた。両者の直接対決はすでに終わっているだけに、地区優勝に向けてどちらも負けられない戦いが続く。

本塁打王争い直接対決でシュワーバーとの差は2本に

 気になる個人タイトル争いだが、今季2年ぶりに二刀流復活を果たした大谷翔平に、3年連続本塁打王のチャンスがある。カイル・シュワーバーが3本リードして迎えた直接対決3連戦は、大谷が“2対1”で勝利。その差を2本に詰めた。両者ともに勢いに乗ると固め打ちできるタイプの打者だけに、こちらの争いも最後まで目が離せない。

 もしシュワーバーが大谷に競り勝って本塁打王に輝けば、地元フィラデルフィアからシュワーバーをMVPに推す声が聞こえてきそうだ。ただし、シュワーバーは昨季の大谷と同じようにDH専任。今季は8試合で左翼の守備に就いているが、守備面の貢献度は皆無。

 本塁打だけでなく打点でも大谷を上回っているが、打率は.250に満たず。10個の盗塁を成功させているものの、仮に本塁打王争いで大谷を突き放したとしてもMVPは絶望的だろう。

MVP評価を左右する「WAR」で大谷が圧倒

 実際に、MVPで重視されるWARの数値を見ると、両者の差は歴然だ。

 WARとは勝利への貢献度を示す総合指標のことで、近年はこのWARでリーグ1位の選手がMVPに輝くことが多い。
打者の場合、打撃成績だけでなく、走塁や守備なども評価対象となっており、三拍子そろった選手が高いWARを記録する傾向にある。

 一般的には『Baseball Reference』版のrWARと、『Fangraphs』版のfWARの2つあるが、今回は日本時間17日終了時点のfWAR(以下、WAR)を参照した。

 WARでは打者も投手も同じ土俵で評価されるため、『Fangraphs』版では投手もランキングに名を連ねているが、基本的に投手はMVPで投票されることはほぼないため、ここでは打者だけを抜粋したランキングを紹介する。

【ナ・リーグfWAR10傑(日本時間17日時点)】

1位 8.5 大谷翔平(ドジャース)※投手としての1.6を含む
2位 6.7 トレイ・ターナー(ナショナルズ)
2位 6.7 ヘラルド・ぺルドモ(ダイヤモンドバックス)
4位 6.1 コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)
5位 5.5 フェルナンド・タティスJr.(パドレス)
6位 5.3 フアン・ソト(メッツ)
6位 5.3 フランシスコ・リンドーア(メッツ)
8位 5.2 ピート・クロウ=アームストロング(カブス)
9位 4.9 カイル・シュワーバー(フィリーズ)
10位 4.7 カイル・タッカー(カブス)


 MVPの有力候補に名前が挙がるシュワーバーだが、fWARはなんとナ・リーグ打者の9位。投手としても加算がある大谷に大きな差をつけられている。大谷に限っていえば、やはり投手としての活躍も大きい。

ターナーが負傷離脱でMVP争いから脱落

 もし今季の大谷が打者一本なら、現在2位タイのターナーと大接戦になっていたかもしれない。ターナーは三拍子そろった遊撃手で、首位打者と盗塁王を狙える位置に付けていた。

 ところが、ターナーは今月上旬の試合中に右ハムストリングを負傷し、10日間の負傷者リスト(IL)入り。現地では“予定より早く回復している”という報道があったが、おそらく戻ってくるのはレギュラーシーズン最終週の来週となるだろう。

 万全の状態でポストシーズンを迎えるためにも、焦って復帰させることはしないはず。MVP争いからはすでに脱落したといっていいだろう。

ペルドモ、キャロルら有力候補も決め手は欠く

 そのターナーと並ぶ2位と4位につけているのがダイヤモンドバックスの2人。ペルドモとキャロルは後半戦のチームの快進撃を支えたが、どちらもパンチ不足の感が否めない。
両選手とも走攻守そろった好打者ではあるが、OPSは8割台。ナ・リーグ断トツの1.008をマークしている大谷とは比較対象にもならないだろう。

 大谷超えの超大型契約を結んだフアン・ソトは、開幕から精彩を欠いていたが、6月に打棒を爆発させ巻き返しに成功。すでに40本塁打に達しただけでなく、盗塁も40個をうかがう勢いで量産している。しかし、チームは低迷しており、やはりシーズン序盤のチャンスに打てないイメージがさらに印象を悪くしている。

 そしてソトのチームメート、リンドーアがこれに続く。リンドーアといえば、昨季夏場まで大谷とMVP論争を巻き起こし、メッツの本拠地では“MVPコール”も鳴り響いたが、最後は大谷に大きく差をつけられた。

3年連続4度目のMVPへ「満票当確ムード」

 WAR5.0以上は8位のPCAことクロウ=アームストロングまで。PCAは開幕からハッスルプレーと堅守で、MVP争いで大谷をリードしていたが、後半戦に入ってから急失速。特に8月以降は打率1割台、2本塁打とサッパリだ。一時はシーズン40本塁打超えも視界に入っていたが、致命的なスタミナ切れを起こしている。

 ターナーの離脱やPCAの急失速など、ライバル勢の“自滅”も手伝って、大谷の3年連続4度目となるMVPは当確といっていいだろう。
そして、ライバル無き今年もやはり、文句なしで満票で受賞となりそうだ。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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