我が国はG7に加盟はしているものの、2022年のOECD調査によると、平均年収は約452万円で、これはOECD諸国の平均年収である約582万円を大きく下回っています。給与水準の低迷は解消の兆しはあるものの、課題が山積しているというのも事実です。
 
 そんな労働環境の日本において、今回のエピソードは、我々に少なからず希望を与えてくれるかもしれません。

家業を支える日常と“愚痴多め”の姉

「肉屋の仕事って大変でしょう?」

 と問いかけると、今回取材に応じてくれた横溝さん(仮名・28歳)は笑いながらうなずきました。彼の実家は、地元で人気の食肉店を営んでいて、父は社長、母は専務。そして3歳年上の姉がいるそうです。

 その姉は、高校時代に全国大会に出場するほどのバドミントン選手で、その後の進路は、隣県の大学にスポーツ推薦で入学し、今は事務機器販売メーカーに勤めています。しかし、話を聞けばーー、

「給与が安くて、いつも16万円くらいしか振り込まれないんだよね。何か副業でも探さなきゃ」

「手取り16万円」なのに何故かレクサスを購入できた姉。「やけ...の画像はこちら >>
 と愚痴をこぼすことが多かったそうです。

 姉の愚痴は一度始まれば止まらなくなり、「姉ちゃん、よくそんな給料でやっていけるなあ」と適当に相づちを打ちながら話を聞いていたといいます。

突然真っ赤なレクサスで現れた別人のような姉

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Sergey Kohl - stock.adobe.com
 そんなある日、実家に帰ってくると聞いていた姉を店先で待っていた横溝さん。約束の時間を過ぎても現れず、しょうがなくテレビに見入っていると、外から「グォオーン」という重厚なエンジン音が響いてきました。
 
 店の外に目をやると、そこには真っ赤なスポーツカーが停まっていました。見慣れない高級車に思わず目を奪われていると、中から出てきたのは、なんと姉だったのです。

「姉ちゃん? え、これ誰の車?」

 驚いて声を上げると、彼女は涼しい顔で答えました。

「私のだよ。
買ったの。レクサスのLC。カッコいいでしょ?」 
 
 さらに驚かされたのはその服装でした。いつものデニムやフーディー姿ではなく、ベージュのパンツにタンクトップ。程よくヘルシーな肌見せもあり、以前の“野暮ったい姉”のイメージは跡形もありませんでした。

「副業があるから早めに帰るね」と言い残して、夕方にはさっさと立ち去った姉。横溝さんは「あの低賃金でレクサス? 副業かなにかしてる?」と疑問を募らせたといいます。

推しの配信者がまさかの……

 それから1週間経ったある日。横溝さんは、いつものようにスマホで推しライバーの配信を見ていました。色白で目が大きく、会話も軽妙な彼女に癒やされるのが日課だったといいます。

 しかし、その日の配信中にアクシデントが起きました。突然映像が乱れ、次の瞬間、美しい顔を覆っていたフィルターが外れてしまったのです。そこに現れた素顔は……、見間違えようもない、自分の姉だったのです。


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スマホ 驚く男性
「……うそだろ」

 あまりの衝撃に、横溝さんはスマホを手から落としてしまいました。すぐに拾い上げると、画面の向こうで姉は、何事もなかったかのように流暢に話を続けていました。

「自分が投げ銭してた相手が姉ちゃんだったなんて……。頭が真っ白になりましたね」

 彼はその瞬間を、今でも忘れられないと語りました。

始まった姉弟二人三脚の副業

 後日、思い切って姉に尋ねてみると、意外にもあっさりと事実を認めたといいます。

「うん、私だよ。あれが副業。時間あるなら手伝ってよ」

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パソコン
 突然の告白に戸惑いつつも、横溝さんは撮影や編集のアシスタントを頼まれるようになりました。肉屋の仕事と両立しながら、姉の配信活動をサポートする日々が始まったのです。

「正直びっくりしましたけど、あんなに生き生きしてる姉を見たのは初めてかもしれません。レクサスに乗って登場した時も驚きましたが、それ以上に『自分の道を見つけたんだな』って思えましたね」

 姉の変化は単なるイメチェンや贅沢ではなく、人生を自分らしく切り拓く姿そのものでした。そして横溝さん自身も、推しの正体が姉だったという数奇な縁を受け入れ、共に歩む覚悟を固めたようです。


<TEXT/八木正規>

【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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