―[経済レポーター×銀座No.1ホステス・山崎みほ]―

クライアント(取引先)とトラブルがあったとき、丁寧に謝罪したのに、逆に火に油を注いでしまった経験はありませんか?
あるいは、無理難題を求めるクライアントに丁重に断ったら、予想以上に怒らせてしまったことはありませんか?

もしかすると、その原因はあなたが無意識につくってしまっているのかもしれません。

昼は経済レポーターとして上場企業の社長たちを取材し、夜は銀座ホステスとしてトップクラスのビジネスパーソンを接客してきた私が、現場で学んだ「人の心の動かし方」をお届けします。
ビジネスマンのあなたの「今日から使える武器」になれば幸いです。

銀座No.1ホステスが教える「人を怒らせないテクニック」。相...の画像はこちら >>

会社側に立っての謝罪で事態が悪化

トラブル時にやってしまいがちなのは「会社+自分」対「クライアント」という構図にしてしまうことです。“会社側の人間”として謝るのはごく当たり前のことですが、事態を悪化させてしまう場合も。

効果的なのは「クライアント+自分」対「会社」という構図をつくること。つまり、自分はクライアント側に立つのです。

心理学では、「“共通の敵”をつくると、人と人との関係性が強くなる」とされています。クライアントに寄り添い、会社が“共通の敵”であるかのような対応をすると、顧客満足につながることがあります。

売れっ子ホステスの“共通の敵”演出

夜の世界で売れているホステスはこの構図をつくるのが上手です。

たとえばーーキャバクラの密着動画で、黒服スタッフがお客様に失礼な対応をし、No.1ホステスがお客様の前で黒服を厳しく叱責するシーン。「黒服への態度がきつすぎる」「売れているからって調子にのっている」とSNSで批判コメントが溢れているのを見かけたことがあります。

でも、彼女は決して感情的に黒服に怒りをぶつけているわけではありません。「お客様+自分」対「黒服(=お店)」という構図を演出しているのです。

自分はお客様に寄り添い、黒服を“共通の敵”に見立てることで、「自分のためにここまで怒ってくれるんだ」と感じさせると同時に、それ以上怒りが黒服に向かないようにさせます。

しまいには、お客様が「いやいや、いいんだよ。
ミスぐらい誰にでもあるんだから」と黒服をかばい始め、丸く収まります。ホステスのあまりの熱量に、お客様の怒りが負けてしまうのです。

また、夜のお店では、複数の席で指名が重なれば、ホステスは順番に席を移動します。ホステスが黒服に呼ばれて席を抜けるとき、「え、行っちゃうの?それなら帰るよ」と拗ねてしまうお客様も少なくありません。

ここで「ごめんなさい、呼ばれたから行かないと」と店側の目線で謝ってしまったら、お客様は面白くありません。

「やだ、呼ばれちゃった!〇〇さんの席にいたいのに…」と言って抜けるのを拒んでみせると、お客様は嬉しくなって「でも呼ばれてるなら、行かないとまずくない?行っておいで、待ってるから」と気遣ってくれる。

これも「私もあなたの席にいたい。でも黒服が呼んでいる」という構図になっています。

ビジネスシーンでも“共通の敵”は有用

銀座No.1ホステスが教える「人を怒らせないテクニック」。相手に正面から「向き合う」よりも有効なのは
画像はイメージです PHOTO/AdobeStock
“共通の敵”は、昼のビジネスシーンでも有用です。

会社の不手際で顧客を怒らせてしまったとき、“会社側の人間”として謝罪するだけでなく「◯◯様のお気持ちを思うと心苦しいです。すぐに改善させます!」と顧客側に寄り添った方が、怒りが静まりやすくなります。

また、値引きなどの無理な要求をされたとき。「申し訳ございませんが、対応できかねます」とマニュアル通りに答えたら、顧客の不満は募るだけです。


「私もできる限り対応したいので、本部に掛け合ってみます。でもルールが厳しくて…」と、会社のルールを“共通の敵”にする構図をつくるのです。

要望に応えられないという結果は同じでも、少しでも「自分のことを思ってくれた」と感じられれば、顧客の心証は180度変わります。

社内の人間関係でも、たとえば部下が上層部に不満を抱えているとき。

「悪いけど、会社の方針だから」と突っぱねるのではなく、「私もなんとかしてあげたい。でも、会社の方針があるから難しいんだ」と伝えれば、会社の方針が“共通の敵”になり、部下は「上司は味方でいてくれている」と気持ちが救われるでしょう。

相手の気持ちに向き合ってはいけない

恋愛でも同じです。デートの夜に「ごめん、仕事で会えなくなった」と事実だけを伝えるよりも、「俺も会いたいけど、残業を頼まれちゃって…」と言ってあげた方が、会いたい気持ちは同じなのだと伝わります。ここでは、仕事が“共通の敵”ですね。女性は「お仕事なら仕方ないよね、がんばってね」と素直に受け入れられます。

大切なのは、相手に正面から「向き合う」のではなく、隣に「寄り添う」イメージです。

相手の気持ちに寄り添い、“共通の敵”をつくることで、トラブルは瞬時に好転するのです。


<文/山崎みほ>

―[経済レポーター×銀座No.1ホステス・山崎みほ]―

【山崎みほ】
経済レポーター。証券外務員一種/行動心理士。
株式投資情報のレポーターとして、上場企業の取材記事や経済ニュースを執筆。Yahoo!ファイナンス、YouTube等メディアでは上場企業社長のインタビューも行う。また、銀座の高級クラブでホステスとしても勤務、心理学と行動経済学の知識を基にNo.1を獲得。経済レポーターの深い洞察力と人気ホステスとして培った対人関係術を融合し、夜の世界では1日40組、昼間の営業職では成約率90%の成績を上げるなど、昼夜問わず結果を出すスタイルを築いている。Xアカウント:@mihoy001
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