今回は、国内最大級のスニーカー&トレカフリマアプリ「SNKRDUNK(スニダン)」を運営する株式会社SODA 執行役員CBOの神 義詞さんに、ポケモンカード市場の動向や、横行する詐欺の実態について話を聞いた。
コレクター・プレイヤー・投機勢が共存するポケモンカード市場の絶妙さ

トレカ自体は昔から人気があり、「遊戯王」や「マジック:ザ・ギャザリング」「ワンピースカード」「ポケモンカード」など、それぞれ熱狂的なファンがいる。特にポケモンカードは2023年6月頃に大きな盛り上がりを見せた。
その経緯について、神さんはこう説明する。
「コロナ禍によってトレカ市場全体が活性化したのに加えて、ポケモンは1980年代から続く歴史あるIPであり、世界的に広く知られているため、海外でも人気が高まりました。そして、ポケモンカードのデザインには、著名イラストレーターであるさいとうなおきさんが関わったことも大きな話題を呼びました。
海外ではPSA(世界最大のトレーディングカード真贋鑑定)というサービスがあり、カードの保存状態を評価して価値を保証する仕組みが確立されています。こうした環境も相まって、コレクターやプレイヤーはもちろん、投資的な視点で購入する人々が参入し、結果的にポケモンカードは急激な盛り上がりを見せたわけです」(神さん)
ポケモンカード市場の面白いところは、いろんな目的で参加してくるユーザーの多様性にある。とにかく希少性の高いカードだけを集めるコレクターもいれば、大会に出ながら手元にレアカードをコレクションする人、あるいはシンプルにゲームを楽しむことを目的にしている人など、さまざまな層が共存しながら市場が成り立っているのは、まさに絶妙のバランスだと言えるだろう。
「ポケポケ」のリリースでカード人気が急激に上昇

「ポケポケの人気をきっかけに実物の紙のカードにも関心が高まり、需要が急増した結果、カードパックは品薄状態が続いており、玩具店やコンビニで『1人2パックまで』と購入制限が設けられています。
面白いのは、ポケモンカードが日本発のIPであるにもかかわらず、日本で流通している日本語版と海外で流通している英語版は仕様が微妙に異なる点である。コレクターの中には、それぞれの仕様の違いを楽しみながら収集している人もいるなど、世界中の人が欲しがる“希少性の高さ”から、ポケモンカードは今でも非常に盛り上がっている状況と言えるだろう。
希少性の高いポケモンカードは「7億円」で取引されたことも
希少性の高いポケモンカードでは、人気キャラクターのレアカードが特に高額で取引されると神さんは話す。スニダンでの取引においても、過去のポケモンカードで700万円の高値で売買されたとか。「分かりやすい事例としては、初期に発売されたピカチュウやリザードンといった、根強い人気を誇るポケモンのカードは値段が高騰しています。リザードンのカードでいえば、PSAによって最高評価の10と認定されたものがあり、それを有名YouTuberが約5000万円で購入したことで大きな話題となりました。
そのほか、かつて開催されたイラストレーターコンテストで上位入賞者のみに配布されたカードは、世界に数枚しか存在しない超希少品です。数年前には海外で約7億円で購入された実績があり、その価値の高さがうかがえます」
基本的にポケモンカードは1つのパックに5枚入っており、誰でも入手しやすいカードは揃えやすく、購入すれば自然に集まっていく。一方で、ごく一部に存在する高レアリティカードが人気を集め、価格が高騰する傾向があるという。そうしたカードは、おおよそ30パックに1枚程度の割合で封入されているとのこと。
ポケモンカード取引に潜む“闇”。巧妙化する詐欺の手口とは

「オンライン取引の際は、間に鑑定や検品を挟まないとトラブルが“水掛け論”になってしまうケースが非常に多いんです。
従来多かったのは『購入者がお金を払ったのに、出品者が違うカードを発送する』というトラブルでした。出品者側の対応次第で、状態が『美品』と書いてあっても、実際には傷がある状態でカードが届くなど、購入者は受け身にならざるを得ない状況だったんです」
ところが、直近では詐欺の手口がより巧妙化していると神さんは続ける。
「近年新しく問題になっているのが『返品すり替え』のトラブルです。どういうものかというと、出品者が本物を発送しても、購入者が『説明にない傷がある』とクレームを入れて返品を希望し、出品者が返品を受け入れて返送してもらうと、戻ってくるのは全く別の安価なカードという手口です。
つまり詐欺を行う購入者は10万円のカードを手に入れながら、支払いはせずに済んでしまうわけです。このような悪質な手口が昨年から増えています」

「ポケモンカードのように偽造品が急増している市場では、『安心して取引できる環境』を提供することが何より大切だと考えています。だからこそ、当社は常に『安全・安心なマーケットプレイスである』という軸をぶらさず、進化する偽造手口にも対応し続けていくことを最も重要視しています」

いまや、普通に入手することも困難を極めるポケモンカード。
その裏では、次々に現れる新手の偽造手口が生まれていることも頭に入れておくべきなのではないだろうか。
<取材・文・写真(人物)/古田島大介>
【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている