―[貧困東大生・布施川天馬]―
みなさんはMENSAをご存じでしょうか?
「人類の上位2%のIQ」を入会条件に掲げる団体です。もともとイギリスの弁護士が、知能の高すぎる妹に釣り合うパートナーを見つけるために設立されたそうですが、今となってはもっぱら「高IQ」ばかりが強調されています。
タレントや著名人の会員も多く、人気お笑いコンビ・ロザンの宇治原史規氏や、脳科学者の茂木健一郎氏、元日向坂46の影山優佳氏などが有名です。
そもそもIQとは知能指数のこと。記憶力や語彙力、数的処理能力や視覚情報の処理能力など様々な能力を計測し、その能力が人類全体のどの程度に当てはまるかを表します。
MENSAの入会条件である上位2%は、およそIQ130以上が当てはまるとされており、しかもIQの数値は一生を通じて大きく変化することは少ないそう。
「MENSAに入りたい!」と思ってもそう簡単に入れません。
ところで、私事ですが、この8月にMENSA会員になりました。あまりにゲームが下手で、人の話を集中して聞けない自分に危機感を抱いたことがIQテスト受験のきっかけでしたが、偶然のチャンスとはいえ入れるものなら入ってみようと思い立ちました。
そこで、今回は謎に包まれた「MENSAの実態」についてお伝えします。
これは当たり前で、MENSAが主催して何かイベントを行うこと自体が、ほとんどないのです。
MENSA会員ページにログインすると、様々なイベントの誘いが並んでいます。
内容は「オンライン読書会」「初心者歓迎のボードゲーム大会」「勉強会」のようなインドア系の集いもあれば、「みんなで○○を訪れる」のようなアウトドア企画、ただご飯を食べに行くだけの会に、果ては「みんなでレンタルスペースを借りてだらだらするだけ」のような自由すぎるイベントもありました。
なんだか楽しげですが、これらはみんな公式開催ではなく、98%が「有志会員による自主企画」。誰かの善意と熱意によって成り立っているのであり、したがって参加義務は一切ありません。
MENSA会員同士で強いつながりがあるわけでもないので、自分からアクションを起こしてコミュニティに飛び込まないと、「一緒にこのイベント行こうよ!」と誘ってくれる人すらもできない。
入っただけでは本当に何の得もありません。大学の文化祭をイメージしてもらえると近いかもしれない。中に入るだけでは何もできず、何かイベントを探して、自分から参加表明をしないと、楽しい体験にはありつきにくい。
「ただいるだけの人」には、全く恩恵がないのがMENSAです。
MENSA会員のバックグラウンドは様々で、私のように自由業をしているものもいれば、会社勤めの人も、学生の人などなど。
ボードゲームやカードゲームのような頭を使うゲーム、俳句や詩など創作・表現活動が好きな人が割合多いようにも感じましたが、別に全員に共通する特徴があるわけでもありません。
そもそも、特別な人が集まっているなんてこともありません。
筆者もオンラインのオフ会イベントに一度参加してみましたが、「驚くほど頭がいい人たちがひっくり返るくらい知的な会話をしている」なんてこともなく、ただ普通の会話をだらだらとしているだけ。
ゲームで遊ぶときも、別にとびぬけて飲み込みが早い人ばかりではなく、私のようにいつまで経ってもへたくそな人だっています。
おそらくこれを持ち出す人は、「あなたとは話が通じない(くらい、あなたはIQが低い)」と言いたいのでしょう。
ですが、少なくとも私の主観では「話が通じない」と感じたことは、一度もありません。私が計測に用いたIQテスト(WAIS-Ⅳ)では、言語理解やワーキングメモリーなど、細部化された項目に分けられたIQが個別に出されます。
冒頭の130はあくまで総合評価の話であり、私の言語理解とワーキングメモリーの値は両方とも140を上回りました。どちらも言葉の処理や聞こえてきた情報解析の能力や速さ、深さを測定する項目です。
IQ120以上の人が大体人口の上位10%ぐらいだといいますから、もしも本当に「IQが20以上離れると会話が成り立たなくなる」ならば、私はこの世の90%以上の人間と会話できなくなってしまいます。
もちろん、実際にそんなことはありません。少なくとも「10人中9人と会話がかみ合わない」なんて感じるわけもない。
別に、IQが高いとか低いとか、それだけで人生は変わりません。そもそもIQテスト自体「自己理解を助ける指標にするため」の受験が推奨されています。
私も中に入るまでどんな世界が広がっているかとワクワクしていましたが、正直今では「こんなものか」と拍子抜けするほど。
ショーウィンドー越しに憧れを眺める時間こそが至福の時であり、それそのものには、大して意味がないのかもしれません。
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
みなさんはMENSAをご存じでしょうか?
「人類の上位2%のIQ」を入会条件に掲げる団体です。もともとイギリスの弁護士が、知能の高すぎる妹に釣り合うパートナーを見つけるために設立されたそうですが、今となってはもっぱら「高IQ」ばかりが強調されています。
タレントや著名人の会員も多く、人気お笑いコンビ・ロザンの宇治原史規氏や、脳科学者の茂木健一郎氏、元日向坂46の影山優佳氏などが有名です。
そもそもIQとは知能指数のこと。記憶力や語彙力、数的処理能力や視覚情報の処理能力など様々な能力を計測し、その能力が人類全体のどの程度に当てはまるかを表します。
MENSAの入会条件である上位2%は、およそIQ130以上が当てはまるとされており、しかもIQの数値は一生を通じて大きく変化することは少ないそう。
「MENSAに入りたい!」と思ってもそう簡単に入れません。
ところで、私事ですが、この8月にMENSA会員になりました。あまりにゲームが下手で、人の話を集中して聞けない自分に危機感を抱いたことがIQテスト受験のきっかけでしたが、偶然のチャンスとはいえ入れるものなら入ってみようと思い立ちました。
そこで、今回は謎に包まれた「MENSAの実態」についてお伝えします。
中身は“緩いサークル”のよう
テレビのクイズ番組などで大げさに強調される「MENSA」ですが、入ったから何かができるようになるとか、特別な誘いが来るなんてことはありません。私もMENSA会員になってから1か月が経ちますが、入会前後で何も生活は変わっていない。これは当たり前で、MENSAが主催して何かイベントを行うこと自体が、ほとんどないのです。
MENSA会員ページにログインすると、様々なイベントの誘いが並んでいます。
内容は「オンライン読書会」「初心者歓迎のボードゲーム大会」「勉強会」のようなインドア系の集いもあれば、「みんなで○○を訪れる」のようなアウトドア企画、ただご飯を食べに行くだけの会に、果ては「みんなでレンタルスペースを借りてだらだらするだけ」のような自由すぎるイベントもありました。
なんだか楽しげですが、これらはみんな公式開催ではなく、98%が「有志会員による自主企画」。誰かの善意と熱意によって成り立っているのであり、したがって参加義務は一切ありません。
MENSA会員同士で強いつながりがあるわけでもないので、自分からアクションを起こしてコミュニティに飛び込まないと、「一緒にこのイベント行こうよ!」と誘ってくれる人すらもできない。
入っただけでは本当に何の得もありません。大学の文化祭をイメージしてもらえると近いかもしれない。中に入るだけでは何もできず、何かイベントを探して、自分から参加表明をしないと、楽しい体験にはありつきにくい。
「ただいるだけの人」には、全く恩恵がないのがMENSAです。
取り立てて個性的な人が集まっているわけではない

MENSA会員証
ボードゲームやカードゲームのような頭を使うゲーム、俳句や詩など創作・表現活動が好きな人が割合多いようにも感じましたが、別に全員に共通する特徴があるわけでもありません。
そもそも、特別な人が集まっているなんてこともありません。
筆者もオンラインのオフ会イベントに一度参加してみましたが、「驚くほど頭がいい人たちがひっくり返るくらい知的な会話をしている」なんてこともなく、ただ普通の会話をだらだらとしているだけ。
ゲームで遊ぶときも、別にとびぬけて飲み込みが早い人ばかりではなく、私のようにいつまで経ってもへたくそな人だっています。
「IQが20違うと、話が通じなくなる」は本当か
以前「IQが20違うと、話が通じなくなる」なんて話を聞いたことがあります。どこから出てきたかわからない出典不明の俗説。
おそらくこれを持ち出す人は、「あなたとは話が通じない(くらい、あなたはIQが低い)」と言いたいのでしょう。
ですが、少なくとも私の主観では「話が通じない」と感じたことは、一度もありません。私が計測に用いたIQテスト(WAIS-Ⅳ)では、言語理解やワーキングメモリーなど、細部化された項目に分けられたIQが個別に出されます。
冒頭の130はあくまで総合評価の話であり、私の言語理解とワーキングメモリーの値は両方とも140を上回りました。どちらも言葉の処理や聞こえてきた情報解析の能力や速さ、深さを測定する項目です。
IQ120以上の人が大体人口の上位10%ぐらいだといいますから、もしも本当に「IQが20以上離れると会話が成り立たなくなる」ならば、私はこの世の90%以上の人間と会話できなくなってしまいます。
もちろん、実際にそんなことはありません。少なくとも「10人中9人と会話がかみ合わない」なんて感じるわけもない。
別に、IQが高いとか低いとか、それだけで人生は変わりません。そもそもIQテスト自体「自己理解を助ける指標にするため」の受験が推奨されています。
私も中に入るまでどんな世界が広がっているかとワクワクしていましたが、正直今では「こんなものか」と拍子抜けするほど。
ショーウィンドー越しに憧れを眺める時間こそが至福の時であり、それそのものには、大して意味がないのかもしれません。
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
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