都市部など人口密集地域に限らず、全国かつ小資本からできる副業として注目を集めている民泊旅館投資(以下、民泊投資)。そんな民泊の先駆者である著名人、インフルエンサーらが、民泊投資の魅力と手法を伝えるイベント「民泊旅館フェス2025」が、9月23日に東京・浜松町で開催された。

本イベントの主催者であるサバイバル投資家こと生稲崇氏は、高卒、年収500万円未満、貯金300万円という不利な状況から不動産投資を始め、わずか3年でFIREを達成した人物だ。中古・新築双方の不動産投資で培ったスキルを活かし、現在は民泊旅館投資へと事業を拡大。2025年10月1日には新刊『民泊旅館投資サバイバル大全』(扶桑社)を上梓する。

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民泊旅館投資で収益を最大化し、人生の知恵を覚醒させる

「私は中古から新築不動産投資での賃貸業、そして民泊旅館投資の宿泊業へとシフトしてきました。両方のスキルをどう使って収益を最大化させるか、そして投資を通じて人生を豊かにする鍵をお伝えしたい。投資をちゃんと学べば、誰でもFIREして自分の人生を謳歌できるということを、今日お伝えしたいです」

セミナーの冒頭で生稲氏は自身の経験を交えながら、民泊旅館投資で収益を最大化する手法と、投資を通じて人生の自由を「覚醒」させるための世界観について語り始めた。

31歳頃まで「投資はお金持ちだけがやるもの」、「副収入を生み出すのは難しい」という「2つのお金の呪いに縛られていた」という生稲氏は、FIREを達成した時、「こんな素敵な人生が本当にあるんだ」と心の底から感じ、お金の呪いから解放されたという。サラリーマン時代に抱いていた思い込みを乗り越えた経験が、今の自分を支えていると分析する。

規模拡大の基本方針と投資の楽しさ

具体的な実績として、生稲氏は不動産投資で売却益約3.5億円、11年間のインカムゲイン約1.5億円以上、合計で約5億円以上の資産を築いたことを明かした。

現在の民泊旅館事業は、都内7カ所、現在開発中の河口湖2カ所の合計9軒を手掛がけ、全稼働すると年間売上は約1億円を見込む。その内訳は特区民泊2軒、旅館業6軒、住宅宿泊事業法1軒だという。

賃貸業との違いについて、「家賃のように毎月送金ではなく、日々チャリンチャリンと入金されていく動きが楽しく、宿泊者の喜びの声がダイレクトに届くのが嬉しい」と、事業の魅力を語る。

「規模拡大の基本方針は、まず棟数を拡大し、その後に清掃の内製化などを進めて利益率を高めていくというものです。最初は代行を使い、後からスタッフを直接雇ったり、自分で手配した外注の清掃を入れたりすることで利益を高めていきます。
こうした工夫の余地が広いのも、民泊旅館投資のいいところです」。ただ、「お金を稼ぐことだけが目的だと途中で挫折しやすい」と生稲氏は指摘する。重要なのは「自分の情熱というエンジンを回すために、『人生を豊かにする』とはどういうことなのかを自分でちゃんと定義できていること」だという。自身の投資哲学の根底に、名著『7つの習慣』の考え方があると語り、時代や国境を越えて価値を発揮する「原則」に基づいているからこそ、小手先のテクニックではなく、本質を重視すべきだと考えている。その本質とは「自分が大切に思う人たちとの『思い出』という資産を作り、その思い出という資産によって“幸せ”の複利を受け続けることができる。これが本当に素晴らしい。昨年は、貯まったマイルやポイントを活用し、通常540万円ほどかかるヨーロッパ旅行に両親を90万円で連れて行くという親孝行も実現しました」

「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」高卒から資産5億円、“弱者が強者に勝つ”民泊旅館投資の極意
『民泊旅館投資サバイバル大全』(扶桑社)


投資家として成功するための5つのステップ

宿泊業は古くからあるビジネスであり、そこで生じる問題もある程度は集約されていると生稲氏は分析。その上で、投資家として規模を拡大していくための5つのステップを提示した。

1. リスクを取る練習をする:致命傷を避けつつ、成長できるリスクには積極的に飛び込み、経験値を貯める。
2. 行動を起こす:知識を行動に移す。
3. 守破離を徹底する:先人の道を正しく学び、実践する。
4. コミュニケーション能力を高める:AI・テクノロジーが台頭しても人が介在する普遍的ビジネスであるため、コミュニケーション能力が影響の輪を広げる。
5. 市場の問題を解決する:市場の問題を解決した対価としてリターンを得るのが本質である。


収益を爆発させる「レバレッジ投資」の本質

「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」高卒から資産5億円、“弱者が強者に勝つ”民泊旅館投資の極意
「レバレッジ投資」の威力を、生稲氏は具体的な数字で示した。自己資金1000万円を現金で投じた場合の実質年収が500万円であるのに対し、「融資を活用して同じ自己資金1000万円で5000万円の物件を購入すれば、利払いを引いても実質年間収入は2380万円」となり、その差は1880万円にもなると解説。インフレ下では借り入れが有利に働くため、積極的な活用を促した。

「不動産投資の本質は「『他人資本で買って、他人の収益で返済する』という考え方です。保有物件であれば、営業権しか売れない転貸と違い不動産の所有権として売却でき、市場との利回りのギャップで大きな利益を得られます。利回り50%の物件を市場利回り10%で売却できれば、理論上5倍の価格で売れることになり、インカムの10~20年分が一気に入ってきます」

融資の鍵は「金融機関が中心」という考え方

生稲氏の投資スタイルの最大の特徴は「融資を積極的に活用する」点にあるが、融資戦略において、「中心は投資家ではない」という逆転の発想を提唱する。

「良い物件を投資家が探すのではなく『実は金融機関が中心』であり、貸し手である金融機関が借り手と物件を評価して初めて融資のチャンスが生まれます。この視点を持つことで、決算書の内容など『銀行からどう見えるか』を意識できるようになります。一般的な物件探しのスタイルとは異なり、『事前に自分が銀行からどう評価されているのかを把握し、その評価に合った物件が出てきた時に当てにいく』流れが重要です」

レバレッジ投資の最終目標は、銀行から「事業家」として評価されることだ。そのために不可欠なのが「市場調査と事業計画書」であると生稲氏は強調する。収益が不安定と見られがちな宿泊業において、銀行の不安を払拭するには、数字の「なんとなく」を排除する必要がある。

「根拠を持った市場調査・競合調査をした上で、それに基づいた事業計画書を立てることで、銀行は安心します。この事業計画書を徹底的に作り込むことで、経験の有無にかかわらず、他の事業者との差別化を図れるのです」

民泊旅館投資を取り巻く市場環境と今後の展望

「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」高卒から資産5億円、“弱者が強者に勝つ”民泊旅館投資の極意
市場環境について、生稲氏は好調なインバウンドに加え、層の厚い国内旅行者の重要性も指摘。エリアごとの特性を見極める市場調査が不可欠だとした。

民泊が世界で最も拡大している宿泊カテゴリーである理由を、「ホテルが解決できない『地域の観光需要に対してスピーディーに展開できない』という問題を解決しているから」と分析。
今後、競争が激化する中で、リスクを管理し、「他の人から見えているリスクが自分にとっては『解決できるリスク=ノーリスク』という状態を作っていく」ことが求められると展望を語った。

新築・中古スキルを民泊旅館投資に活かす

「投資をちゃんと学べば誰でもFIREできる」高卒から資産5億円、“弱者が強者に勝つ”民泊旅館投資の極意
不動産投資のサイクル(新築→中古→リノベーション→建て壊し)を理解し、「両方できることで引き出しの厚さが変わってきます」と、新築と中古双方のスキルの重要性を説いた。

【新築スキル】
土地から新築するスキルがあれば、地方の安価な土地で理想の空間を創造でき、大きな利益を生み出せる。河口湖で進めている案件では、投資額約3500万円に対し、月商見込み約200万円、返済比率11%という高い収益性を示した。

【中古スキル】
リフォームや修繕のスキルがあれば、コストを大幅に削減できる。業者から提示された860万円の見積もりを、自身の知識で300万円以上削減できた事例を紹介した。

空間の「体験価値」を高め、世界と競争する

日本の宿泊施設は、OTA(宿泊予約サイト)上で世界中の施設と競争している。そこで生稲氏は「滞在魅力価値」の重要性を提唱、その業界指標を作り出すために民泊旅館フェスでは民泊旅館アワード「ステイシュラン」を開催し、1つ星~3つ星で優れた施設を表彰した。生稲氏は自身の事例では普通の部屋を「歌舞伎」や「禅」をテーマにした特別な空間に変えることで、予約を増やし、海外からの宿泊客に喜ばれた成功例を挙げた。

「一人でやり切るのは難しい」と述べ、仲間や専門家との連携の必要性を訴えた。何十億、何百億と持つ“強者”との競争を勝ち抜くために、「私は自分を弱者と認識しています。だからこそ、弱者が強者に勝つための戦略を考えていく必要があります」と締めくくった。

イベントでは、生稲氏以外にも様々なタイプの民泊投資家、そしてOTA(Online Travel Agent)の担当者が登壇し、民泊投資の実績とメリット、独自の投資術を解説していた。


新旧、様々なプレイヤーが600人超集った当日のイベント。違法民泊や騒ぐゲストと地元住民の軋轢など、ネガティブなニュースも散見される民泊旅館投資。副収入を得て自由な人生を謳歌したい人にとって、連帯できる仲間を見つけることの意義は大きいだろう。

<取材・文/日刊SPA!取材班>
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