お笑いコンビ、チョコレートプラネット・松尾駿の「素人はSNSをやるな」発言が先日炎上を招き、数日後に“謝罪”としてコンビが揃って丸刈りにするという動画を公開したが、その内容と表情などによって反省の色なしと受け取られ、火に油を注ぐような形となったままの状況だ。
 そもそもは、彼らのYouTubeのサブチャンネル内において、「芸能人とかアスリート以外SNSをやるなって。
素人が何、発信してんだ」と松尾が発した言葉を受けてのもの。

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業界で避けられていた「素人」という表現

 この炎上については動画全体からの「切り取り」という声もあるが、気になったのは、この「素人」という表現だ。

「『素人参加型番組』というような表現があったように、昔から芸能界やテレビ界などで使われてきた言葉ではありますが、どこか下に見るようにとらえられる可能性もあるため、時代の流れとともに、テレビの世界では『素人』という言葉は、今は極力使わない方向にあります。

『視聴者参加型番組』としたり、あるいは『一般の方』という表現に置き換えられていますね」

 というのは、人気バラエティや情報番組を手がけるある放送作家だ。

 コンプライアンス意識も大きく変化し、人を傷つける笑いや容姿や境遇などを笑いにすることが歓迎されない空気が浸透してひさしい。

 松尾に「素人」と言われたことが、仮に「切り取り」であったとしても、引っかかった人がそれだけ多い表現だったということだ。

 加えて、YouTuberやTikTokerなどを、芸能人やアスリートと区別した「素人」とするようにも解釈でき、それこそYouTuberたちが築き上げてきた文化のなかで自身のチャンネルが評価され大人気を獲得してきたことをないがしろにするようにとらえられたのも仕方ないことかもしれない。

 言ってしまえば、芸能人やアスリートなど特別な(?)存在が提供するものよりも、彼らの言う「素人」の動画や投稿のほうがはるかにバズったり登録者数が多かったり、影響力も大きかったりすることは珍しくない。

「全体の流れからすれば、そういう時代であることを理解したうえで、あえて『素人』という言葉を面白がってぶっこんだ、あくまで笑いの要素として使ったのではないかとも感じられますが、今は切り取られて拡散されることも想定したほうがいい時代なのかもしれません」(同)

火に油を注いだ謝罪動画

「芸人の謝罪」に“笑い”は必要か?チョコプラ謝罪動画の「大不評っぷり」に放送作家の見解は
謝罪動画で坊主にした二人
 早いタイミングでの対応、そして謝罪動画を発表したことそのものはいいが、その内容がどこかコント仕立てのように見えなくもなかったことも、さらなる炎上を招いた要因だ。

「これはチョコプラの芸人としてのプライドがそうさせてしまったのかもしれません」

 と、前出の放送作家は言う。

「笑いを塗り重ねて処理しようとしてしまった。謝罪といえど笑いを入れたい、そのお笑い芸人としての思いがどうしても抑えられなかったのではないでしょうか」

 松尾はもともと坊主頭のようなヘアスタイルであり、少し整えただけじゃねーかと、動画を見た層が笑いながら突っ込んでもらえることも想定していたかもしれない。

 しかし、結果的にこの丸刈り謝罪動画は、余計にチョコプラの評判を下げ、笑いをとるどころか「すべって」しまった感すらある。

 丸刈り謝罪動画といえば、かつての女性アイドルグループメンバーの丸刈り謝罪動画を思い出す人も多いのではないだろうか。


 海外からも多くの非難を浴びたこの顛末により、丸刈りで謝罪すること自体が、とっくに人権的に笑いとして処理できるものでなくなっていることも気がつかなかったのだろうか。

無駄な芸人魂が出てしまった

「もともと日頃からチョコプラの動画を見たりしているような層、ファンにとっては、ここで笑いを足しても足さなくても反応は変わらなかったと思います。

 怒っている人や炎上に乗っかりたい人たちを抑えるためのものなのに、その人たちを挑発するようなものになってしまった。

 無駄な芸人魂が出てしまった部分は感じます。クラスの人気者がチヤホヤされているのにイラッとしちゃうような、そんな感覚もあったのかもしれませんね(笑)」

 芸人の発言が炎上し、そこに次のアクションでさらに炎上をまねいたことといえば、ナインティナイン・岡村隆史の「嫌なら見るな」発言を思い出す。

 これによってさらなる大炎上を招き、一時期好感度が下がってしまったことも記憶している。現時点では今回のチョコプラ失言は、そこまでの大炎上までには至らないかもしれないが、似たような悪い流れを感じる。

「ギリギリのラインを攻めるつもりだったところが攻めすぎちゃったかなといったところです」

 最初に松尾が「素人」と吠えた段階で、コンビの相方である長田が「“素人”は駄目でしょ」「“一般の方”ね」など、一言「素人」サイドからのわかりやすいコンセンサスを挟むだけで、笑うところですよという記号になったかもしれない。

「素人」という言葉を自分たちでどう処理していくか

 そもそも謝罪に笑いを足すことは不要なのではないか。

「これはモノによるでしょうね。内容、空気感、そしてその本人そのもののキャラや世間での評価などそれぞれとしか言いようがありませんが。たとえば狩野英孝さんなど、本人は至って真面目に謝っているのに結果的に面白くなるとこともあります。

 謝罪の場で笑いをとって反撃してやろう、そういった“ねらい”が見えると反発を招くことは多いと思います。


 チョコプラは多くの一般層には、『TT兄弟』などソフトでポップなキャラクターだというイメージが強いかもしれませんが、本来はものすごくクリエイター気質、職人タイプだと思うんです。

 そのコアな部分を出せる自分たちの動画という場所が広く注目されてしまった。かわいい犬だと思ったら、本当は獰猛で、噛まれてしまったみたいなところもあるかもしれません(笑)」

 この先、さらなる「謝罪(コント?)動画」など、同じプラットフォーム上では評価を覆すことは難しいかもしれない。彼らの芸人としての矜持を保ったまま、「一般層(not素人)」に届けるにはどういう手が考えられるだろうか。

「これ以上、新たに謝罪するなどはないかもしれません。それよりも、自分たちで『素人』という言葉をどう処理していくかというところにかかってくると思います」

 いじってくれる先輩芸人の力を貸してもらう手もある。

「たとえばさんまさん、有吉さんといった方に、チョコプラが何か言ったときに『素人は黙ってろ!』みたいに言ってもらえれば、そこはうまく返せるでしょうし、今度こそ笑いに変えることができるのではないでしょうか」

 以上、「素人」による現状考察&まとめでした。

<取材・文/太田サトル>

【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
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