新日本プロレスの人気プロレスラーにして「100年に一人の逸材」と言わしめ、第11代社長(’23年12月就任)も務める棚橋弘至が、日々の激務のなかでひらめいたビジネス哲学を綴っていく。今回は棚橋流マーケティングについて。
プロレスと出会う「たまたま」を、意図的に増やす
動画マーケティングという言葉が一般的になって久しいですが、プロレス業界においても、その波は確実に押し寄せています。今やスマートフォンひとつで世界中のファンとつながれる時代です。新日本プロレスの映像配信の形も、ここ数年で飛躍的に伸びました。
試合のライブ中継や、過去の試合を観られる「NJPW WORLD(ニュージャパンワールド)」。XやInstagramへのダイジェスト動画やYouTubeでの動画配信にも力を入れています。
かつて、新日本プロレスの試合は、毎週金曜20時にテレビ朝日で生中継されていました。テレビをつけたら「プロレスの試合が観られる!」なんて、今思うと夢のような状況です。
現在も『ワールドプロレスリング』の放送は続いていますが、深夜1時からですので、なかなかお子さんたちが観るのには難しい時間帯ですよね。
かつて、たまたまテレビで観たプロレスラーの闘いに衝撃を受けた棚橋弘至少年がいました。
そう、この「たまたま」を意図的に増やす努力をここ数年、自分はできていただろうか──?と。
ただただ待っていても、競技人口が多いスポーツのようにはいきません。
ならば、こちらから「お届け」する。

そのときのプロモーション活動といえば、試合を行う各地方を訪れて、テレビやラジオへの出演、雑誌、新聞の取材を受けるといったことが中心でした。少しずつですが、地上波のバラエティ番組にも出演させていただけたのは嬉しかったですね。
というのも、プロレスを観ない方たちに知られているプロレスラーは、多くないのが現状だからです。
だから、僕は新日本プロレスとのタッチポイントをいかにして増やすか?ということを、ずっと考え続けています。
選手の趣味や好きな音楽、得意分野などを聞く。芸能面をサポートしていただいているアミューズさんと連携して、メディアへの出演を増やす。選手や会社からの発信を増やす、などなど。
ただ、こうした発信を増やしても、大きなうねりは起こらない。地道にやっていくしか……あぁぁぁー!と、正解はありません。
ありません……が、今の若い選手たちのほうがもっと考えているように感じています。
かつての棚橋が「将来有名になって、必ず会場を超満員にする」と燃えていたように、新日本プロレスの未来をつくるのは、きっと、希望に溢れた今の選手たちだからです。
よーし! 発信を増やして、新日本プロレス、発進!
今週のオレ社訓 ~This Week’s LESSON~
タッチポイントを待っていないで「お届けする」姿勢が大事<文/棚橋弘至 写真/©新日本プロレス>
―[新日本プロレス社長・棚橋弘至のビジネス奮闘記~トップロープより愛をこめて]―
【棚橋弘至】
1976年生まれ。新日本プロレスの第11代社長(’23年12月就任)であり現役プロレスラー。キャッチコピーは「100年に一人の逸材」。得意技は「ハイフライフロー」。身長181㎝ 体重101㎏