8月と9月は特殊清掃業界としては繁忙期だった。特殊清掃の見積もり依頼の電話が毎日ひっきりなしにかかってくる。
なるべく、すぐに現場へ向かえるようにスケジュールを調整しているというが……。
「分刻みで動いて、結局は日をまたいでしまうこともあります」

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都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、繁忙期の特殊清掃業者の1日について話を聞いた。

繁忙期の特殊清掃業者の1日が壮絶すぎる!

「1分の遅れが命取りに」特殊清掃業者の壮絶すぎる繁忙期に密着。22時まで続く見積もりと清掃の日々
繁忙期
1年間で一番忙しい時期が8月と9月だという。

「この時期は気温が高くて遺体の腐敗スピードが早く、部屋の外まで臭いが漏れ出すことが多いのです。そうなると、発見される確率が高まり、問い合わせの件数が増えるというのは経験上感じております。アパートの隣の部屋や、近所からの虫や臭いなどの苦情で孤独死が発見されることが多く、『早めに対応できますか?』という案件が増えていくんです。その要望に答えていくと、スケジュールが過密になってきます」

「1分の遅れが命取りに」特殊清掃業者の壮絶すぎる繁忙期に密着。22時まで続く見積もりと清掃の日々
現場
依頼があった順番に見積もりと作業をこなしていく。

「まず午前の9時から10時の間に一件、孤独死の現地調査にはいります。中の調査をして、見積もりをだして、契約できたらどういう流れで清掃していくか、現場を担当するスタッフに連絡して段取りを組んでいきます。『今すぐ掃除をしてほしい』という案件では、契約と同時に、いったんその場でできる体液の除去や、臭いを発してる原因を取り除くなどの応急処置の作業に入ります。次の見積もりの時間に間に合わなそうでしたら、別のスタッフに作業を引き継いで、次の見積もりに進みます」

ご飯を食べる時間もない

「1分の遅れが命取りに」特殊清掃業者の壮絶すぎる繁忙期に密着。22時まで続く見積もりと清掃の日々
鈴木亮太さん
繁忙期は朝9時から夜の22時あたりまで見積もりのスケジュールで埋まっていることも。

「ご飯を食べる時間もないですからね。現場の途中ドライブスルーでマックに寄って、運転しながら少しずつ食べて。車を運転中にもハンズフリーの電話で現場スタッフに見積もり内容の引き継ぎ作業をしています。
基本的には見積もりなど顧客対応をするスタッフと現場対応するスタッフに分かれているのですが、顧客対応スタッフも人手が足りない現場のヘルプに行ったりしますし、逆もあります。突然の見積もりと清掃依頼がとても多いので、8月と9月は毎日予定がどんどん埋まっていきます。一人あたり平均6件くらいは1日に見積もり対応をしてもらってます。全てこなすと、だいたい夜21時か22時くらいまでかかります。見積もり依頼をいただいた時点でかなり急ぎの案件なことが多いので、なるべくお客様を待たせないようスケジュールは組んでいってるつもりではあります」

そんなスケジュールの合間を縫って、着手できそうな範囲でスケジュールを組んでいく。

「スケジュールに空きがなく、通常のスケジュールに照らし合わせると作業が1週間後や2週間後になってしまう場合があるんです。すると、『そんなに待てないから別の業者に頼みます』と言われてしまうことがあります。そうならないために、いち早く誰かしら見積もりに行けるように社内の体制を整え直したり、既存のスケジュールをお客様の迷惑にならない範囲でズラしたりして、なんとかお客様の要望に答えられるように調整しています」

毎日毎日ひっきりなしに見積もり依頼の電話がきて、その都度、対応できるスタッフがなんとか対応をしている。

「清掃作業中に見積もり依頼が入ったのに見積もりスタッフが足りない時は、現場作業中のスタッフに抜けてもらって見積もりに向かってもらってます。その間は一人抜けるため、現場は人手不足に陥ります。また、見積もり依頼が多すぎてスケジュール的にどうしても夜19時、20時からの見積もりになってしまうことがあります。でも社員は基本8時半スタートの17時半退社の契約なので、そういった作業に従事させるわけにはいきません。
残業代も出るんですけど、従業員にはなるべくやらせないようにしてます。その労働時間外の見積もり依頼とかは僕のような役員の仕事です(苦笑)」

分刻みのスケジュールで日付が変わることも…

「1分の遅れが命取りに」特殊清掃業者の壮絶すぎる繁忙期に密着。22時まで続く見積もりと清掃の日々
作業
今までで一番ハードだった1日は、どういう仕事内容だったのだろうか。

「通常の清掃業務に加えて、自分が1日に担当する顧客対応や見積もりが10件を超えていた時です。真夏の暑い中、清掃の作業現場に入りつつ、顧客対応の連絡があったら現地に出向いて見積もりをしていきます。

体が汗でベトベトなので、汗拭きシートで全身をきちんと拭いて、清潔な状態で顧客対応をしていきます。また、清掃した現場の経過観察を間に入れつつ、お客様を交えて清掃完了の立ち会いも組んでいきます。1分単位で遅れてしまうとその後のスケジュールに支障がでてくるギチギチのタイムスケジュールで動く日が夏場は多くあります」

道路の混雑状況などによってスケジュールに狂いが出ることも多い。

「渋滞などの影響により目的地到着が遅くなりそうな場合は、地元民しか知らない空いている路地などを使用して、少しでも早く目的地に辿り着けるように動いています。ですが、どうしてもスケジュールに遅れが出てしまう時もあります。

業務推進課というスケジュールを調整する部署を作って各々スタッフのスケジュールを管理してもらってるのですが、突発的に来た仕事をスケジュールに組み込んでいくと、数分刻みの無茶振りな仕事内容になってしまいます」

担当した全ての案件を終える頃には日付が変わっていることもあるという。

「8月や9月は本当に問い合わせと依頼と案件が殺到します。でも自分たちで抱えられる分の案件しかやっていないので、回らない時があったとしたら僕たちの不備なんです。
順番に一個一個コツコツと終わらせていくだけなのですが、キャパ以上の案件を抱え込みがちで……というわけで、一緒に働いてくれる従業員を募集中です(笑)」

「1分の遅れが命取りに」特殊清掃業者の壮絶すぎる繁忙期に密着。22時まで続く見積もりと清掃の日々
従業員たち
<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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