人里離れた場所にポツンと佇む秘境駅は、基本的に無人駅ばかり。国土交通省によると、無人駅は22年3月末時点で4776駅と、国内の鉄道駅の半数を占めている。
しかも駅員がいないため、そのほとんどは駅舎や待合室があっても終電後の施錠は行われない。
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 つまり、鉄道会社側が禁止していても、その気になれば夜を明かすことも可能。それゆえに鉄道ファンをはじめ、バイクや自転車で旅をする者の中には、ホテル代を浮かすために無人駅を宿代わりにする者もいるようだ。

秘境駅でキャンプ用バーナーを使用する非常識な若者

 昨年、夏休みを利用し、レンタカーで北海道の秘境駅や廃線跡を巡る旅をしていた西島史博さん(仮名・52歳)は、早朝にとある秘境駅を訪れたところ、20歳前後の若い男性に遭遇。駅舎の横でキャンプ用のシングルバーナーで小さな鍋に火をかけていたという。

「遠目で見ただけなので何かを調理していたのか、それともコーヒーやカップ麺用にお湯を沸かしていたのかはわかりません。でも、駅の敷地内って駅舎以外も火気の使用は禁止ですよね。無人駅で野宿する人は過去に何度か見たことがありますが、キャンプ用のシングルバーナーを使っている人を目撃したのはこの時が初めて。キャンプ場ならいざ知らず、こんなに堂々とルールを破っている人がいたことに驚いたと同時に呆れました」

 しかし、若者には禁止行為をしているとの自覚はなかった模様。それどころか西島さんのことを睨んできたとか。

待合スペースが“野宿の拠点”に?

 そのため、慌てて駅舎に入ったが、待合スペースには若者のものと思われる寝袋が敷いてあり、ベンチの上にもリュックやその中身、さらにペットボトルに食べかけのスナック菓子の袋などが散乱。落ち着いて駅舎内を撮影できる状態ではなく、すぐ外に出てホームなどを撮っていたという。

「火気厳禁なのに」無人の秘境駅で“バーナー調理”も…鉄道ファンが呆れた「非常識な迷惑行為」の実態
秘境駅の場合、夏は虫だらけで冬は寒く、そもそも野宿に不向きとも ※画像はイメージ
「因縁をつけられても困りますからね。鉄道ファンって大人しいタイプが多いんですけど、駅前にロードバイクが置いてあったところを見ると、おそらく自転車旅をしていた方なのでしょう。
本当なら火気厳禁だと注意すべきだったのかもしれませんが、逆ギレされても嫌ですし、万が一手を出されたら体力的に敵わないので……。だから、距離を置いて視線も彼のほうに向けないようにしていました」

 結局、足早に次の駅に移動し、この駅に滞在したのは5分ほど。若者がどうしても写り込んでしまうため、駅舎の外観などはほとんど撮ることができなかった。

「撮影して後ほど画像処理で彼の姿を消す方法もありましたが、カメラを向けただけで文句を言われそうな雰囲気でそれもできませんでした。再び訪れる機会があるかわからなかったため、もう少し見て回りたかったのですが……」

秘境駅でインスタントラーメンを作る女性も…

 実は、筆者も西島さんのように秘境駅でのアウトドアクッキングの現場を一度だけ目撃したことがある。数年前、その年の3月で廃止される北海道の某秘境駅を訪れた際、貨車を転用した待合室の近くにカセットコンロに接続するタイプのキャンプ用シングルバーナーが置いてあったのだ。

「火気厳禁なのに」無人の秘境駅で“バーナー調理”も…鉄道ファンが呆れた「非常識な迷惑行為」の実態
筆者が北海道の某秘境駅で目撃したキャンプ用シングルバーナー
 すでに食事を終えた後らしく、持ち主の女性が鍋に雪を入れて洗っていたが、待合室には微かなラーメンの匂い。どうやらインスタントラーメンを作って食べていたようだ。

 なお、これは日中の出来事で、駅には筆者や彼女以外にも数人の鉄道ファンがいた。地元利用客が皆無の駅とはいえ、数人の乗客がいる中でよくこんな事をするものだと皮肉を込めて感心してしまったことを覚えている。

秘境駅での野宿は鉄道営業法違反

 鉄道に関するさまざまな禁止事項を定めた『鉄道営業法』では、営業時間外の駅の立ち入りが禁止されており、事実上出入り可能な無人駅であっても法的にはアウト。駅員が常駐する有人駅と違って無人駅の営業時間は明記されていないところが多いが、一般的な解釈としては最終列車から翌朝の始発までが営業時間外となる。

 ネット上では駅での野宿に関する体験談などが多く紹介されているが、厳密には認められていない。
また、警察が巡回に訪れることもあり、宿泊費の節約などを理由にホテル代わりに使うのはやめておいたほうがよさそうだ。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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