しかし、交通系ICカードの場合、利用可能エリアがあらかじめ決められている。その範囲は年々拡大しているが、地方のローカル線などでは今も非対応のところも。ただし、自身の生活圏が交通系ICカードの対応エリアの場合、使えないエリアがあることを知らない人もいるようだ。
交通系ICカード非対応の駅で目撃したトラブル
「地方だと対応エリアの範囲が狭いですよね。今年、家族旅行で四国を訪れた際、香川以外の3県はJRの交通系ICカードが非対応と知ってビックリしました」そう語るのは、福祉用品メーカーに勤める山田修斗さん(仮名・44歳)。自宅と職場は首都圏なので、モバイルSuica定期券を日常的に利用しているが、某地方にある実家の最寄り駅は交通系ICに今も対応していない。だが、それを知らずに下車しようとする乗客もいるらしく、改札で駅員に文句を言っている場面に遭遇したことがあるそうだ。
「その年は妻も子供も予定があり、私だけで帰省したのですが、せっかくの1人帰省だったということもあり、青春18きっぷを使って戻ってきたんです。ただ、当時このきっぷでは自動改札を通ることができず、駅員に提示する必要があり、その男性の後ろに並んで待っていました(※現在、青春18きっぷは自動改札での通過が可能)」
山田さんの故郷は観光地としてもそれなりに有名で、沿線では利用客も比較的多い。彼よりも年上と思われるその男性も1人だったが、服装や荷物などから旅行者のように見えたという。
「駅員さんから交通系ICカード非対応の旨を告げられると、持っているICカードを駅員に近付け、『じゃあ、これで清算してくれ』とぶっきらぼうな口調で言ってました。けど、そもそも非対応なんだからカードは使えませんよね。
交通系ICカードで清算してもらおうと粘る客…
ところが、清算は現金のみという点が気に食わなかったのか、男性は「この駅が非対応エリアだったとか知らない。Suicaで処理してくれ!」と食い下がってきたのだ。「システム上、交通系ICでの処理が無理だから現金での清算を求めているわけじゃないですか。粘ったところでどうこうできる問題じゃないのに、そこのところが理解できていないんでしょうね。あからさまに不機嫌そうな態度を取っていましたから(苦笑)」
当然ながら「じゃあ、今回は特別ですよ」なんて展開にはなるわけもなく、説明する駅員さんとなんとかして交通系ICカードで処理してもらおうとする男性客との攻防はその後も続く。
「先に通してもらえますか?」と聞いてみると…
この不毛すぎるやりとりを目撃した山田さんは、かなりイラついてしまったという。「実際にはそこまで時間は経っていないのでしょうけど、後ろで待たされる側にとってはやたらと長く感じるものじゃないですか。だから、ずっと我慢していましたが、男性に『さっさと金払えよ』と言いたくて仕方なかったです(笑)」
そして、待つことにしびれを切らした山田さんは、駅員と男性に向かって「すみません、先に通してもらえますか?」と声をかける。すると、駅員はすぐに「どうぞ!」と言ってくれたが、こちらを振り向いた男性は不服そうな表情で睨んできたとか。
現金の持ち合わせがなかった?
もちろん、それに怯むことはなく、それどころか男性に向かって「何か?」と声をかける。男性は何も言ってこなかったため、山田さんは持っていた青春18きっぷを提示し、そのまま改札を抜けたそうだ。「これは勝手な推測ですけど、ひょっとして現金の持ち合わせがなかったのかなって。途中、駅員さんに即答で『使えません』と返されていましたが、クレジットカードでの清算が可能か尋ねていたので。
交通系ICカードの対応エリア・非対応エリアについては、駅構内の貼り紙や車内のアナウンスなどで告知している。そのため、知らなかったでは通用しない。駅員に文句を言ったところで何も変わらないため、目的地が郊外の場合は対応エリアか否か事前に確認しておくことをオススメしたい。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。