『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは『実にハムカツサンドらしいハムかつサンド弁当』。
孤独のファイナル弁当 vol.10 「実にハムカツサンドらしいハムかつサンド弁当」
まい泉オリジナルのブランド豚「甘い誘惑」が使用された「甘い誘惑ハムかつサンド(3切)」。まい泉のロゴの下に描かれたイラストがなんとも食欲をそそる。
まい泉の小さい箱のヒレかつサンド(3切)が好きだ。小腹が減った時、量、大きさ、軽さが実にちょうどよい。たとえば音楽の録音でスタジオに6時間入るような時、途中の休憩、あるいは録音した音をミキシングルームで聞き返しながら、ちょいとつまんで食べるのにぴったり。
バンドでスタジオ入りしていたら、これが3~4箱あれば、メンバー各々が食べたい時に食べたいだけ食べればよい。食べ終わったら空箱をゴミ箱に捨てるだけ。生ごみが出ない。手も汚れない。食べ残ったら箱のまま持って帰れる。潰れず袋いらず。
もちろん仕事場にこもって仕事する時の軽食にもいい。
おいしさが大袈裟でなく、軽い感じがいい。「トンカツを食べている」という重さがない。片手でつまんで二口で食べられる。だけどやはり肉だから、
それなりの小さな満足感もある。差し入れにいただいても、心の負担がない値段(486円)。同じ箱で「エビかつサンド」もあって、こちらはあっさりしたおいしさ。ヒレかつサンドとソースも違うので、この2種類があると完璧。というわけで長年、重宝してきたのだが、最近「ハムかつサンド」があるのを発見した。しかもタイムサービスで10%オフの396円だった。買うしかない。
さっそく仕事場で食べた。
結果。一口食べて、ちょっと笑った。
ハムカツなんだから当たり前なんだけど、実にハムカツ。なんか拍子抜けするほどハムカツ。居酒屋にあったらちょいとB級、ちょいと駄菓子的な、あのハムカツなのだ。「まい泉オリジナルブランド豚『甘い誘惑』」と書いてあるが、ブランド感・誘惑感、ない。ハムは厚めなんだが何しろハムカツ、歯応えヤワヤワ。
ボクは居酒屋でハムカツをつまみにビールを飲むのが大好きだ。だから「拍子抜け」なんて悪口めいた書き方をしてるけど、おいしいんです。
―[連載『孤独のファイナル弁当』]―
【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi
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