日本時間10月1日、ア・ナ両リーグのワイルドカードシリーズ(以下、WCS)4カードが一斉に開幕。
ホームで圧倒的に強いドジャースが優位?
3戦2勝制のWCSは、シード順の高いチームにホームアドバンテージが与えられる。つまり、シード順の高いドジャースは、最大3試合すべてを本拠地ドジャースタジアムで戦うことができるということだ。今季のドジャースは敵地で41勝40敗とほぼ五分だったのに対し、ホームでは52勝29敗と大きく勝ち越している。ファンの大きな声援もドジャースナインの背中を押してくれるだろう。逆に対戦相手のレッズは敵地で38勝43敗と負け越しており、両チームの戦力差も鑑みれば、ドジャースが圧倒的に有利なのは明白。安定感を欠く救援陣など、ドジャースには少なくない不安要素もあるにはあるが、かなり高い確率でドジャースが地区シリーズに駒を進めることになるだろう。
シーズン終盤に活躍したスネルが第一戦のマウンドへ
そんなレッズとのWCS第1戦のマウンドに上がるのは、32歳のブレーク・スネル。レイズ時代の2018年とパドレス時代の2023年にサイヤング賞に輝いた実績のある左腕は、ポストシーズンの経験も豊富。過去3度のポストシーズンで、合計12試合に投げて4勝3敗、防御率3.33という成績が残っている。コロナ禍で60試合の短縮シーズンだった2020年には、レイズの一員としてワールドシリーズでドジャースと対戦。同シリーズで2試合に登板し、勝ち負けは付かなかったが、10回を投げ、18奪三振、防御率2.70の奮投を見せた。
ドジャースに加入して1年目の今季はケガの影響もあり、11試合の登板に終わったが、5勝4敗、防御率は2.35をマーク。イニング数は61回1/3と少ないものの、山本由伸の2.49を上回る防御率を叩き出し、存在感を示している。
特に、古巣パドレスと一騎打ちの様相を呈したシーズン終盤の活躍はすさまじかった。9月10日以降に登板した直近3試合は、合計19回を投げてわずか1失点。そのうち2試合で2桁奪三振をマークするなど好調を維持している。
レッズ先発予定のグリーンが抱える“2つの課題”
一方、対戦相手のレッズは26歳の右腕ハンター・グリーンが第1戦に先発するとみられている。グリーンといえば、2017年のドラフトで全体2位指名された逸材だ。160キロ超えの剛速球を誇るメジャー屈指のパワーピッチャーだが、これまで2つの課題を抱えていた。1つ目は制球力だ。自身初のオールスターに選ばれた昨季は、150回1/3を投げて57四球。与四球率は3.4と比較的安定していたが、両リーグ最多の19死球を記録するなど、荒れ球のイメージが強い投手だった。
ところが、メジャー4年目を迎えた今季は、年齢的にも充実期に差し掛かったのか、107回2/3を投げて22四球。与四球率を前年の3.4から2.2へと大幅に改善してみせた。さらに死球数も2個にとどめ、もはや制球難のイメージはない。
そして2つ目の課題が一発病だ。
3年目の昨季は0.72へ大きく改善させたが、今季は1.25とやや悪化している。それでも1~2年目に比べると、一発病は影を潜めているといえるだろう。
ドジャースは山本・大谷が控える盤石ローテ
2桁勝利を挙げた投手が3人を数えるレッズにおいて、グリーンは若きエースと呼べる存在。ポストシーズンは未経験だが、好調時は手が付けられないタイプだけに、強力なドジャース打線をあっさりと抑え込んでも全く不思議ではない。ただ、仮にドジャースがスネルで初戦を落としたとしても、第2戦以降には山本由伸と大谷翔平の日本人投手2人が控えている。それに加えて、タイラー・グラスナウとエメ・シーハンがブルペン待機する見込みで、やはりドジャースの優位は変わらないだろう。
初戦勝利で突破率は90%に?
それでもやってみないとわからないのが勝負事。2022年に始まった3戦2勝制のWCSはとにかく初戦が重要だ。2022年以降の過去3年と、コロナ禍で特別にワイルドカードシリーズが行われた2020年を含めて、過去に20シリーズが開催されている。そしてこのWCSにおいて、初戦を制したチームが高い確率で地区シリーズに勝ち上がっているのだ。初戦を制した20チームのうち、第2戦も制して2連勝で勝ち上がったのは16チーム。
チーム史上初のワールドシリーズ連覇に向けて、ドジャースの命運を握るのは、山本でも大谷でもなく、スネルということになるかもしれない。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。