株式投資を始めてみたものの、こんな経験はないだろうか。「買った直後に株価が下がってしまった」「利益確定のタイミングがわからず、結局ズルズルと含み損に」「なんとなくの勘で売買して、あとで後悔した」…。
投資を始める人が増えているが、多くの初心者が同じような悩みに直面している。では、どうすれば“勘や雰囲気”に頼らず、落ち着いて投資判断ができるようになるのか。
その答えの一つが「チャート分析」だ。株価の動きや投資家心理が映し出されたチャートを読み解けば、売買の判断基準が明確になる。

今回は『「1問1答」で身につく!株チャートドリル』などの著書を持ち、マネックス証券、マネックス・ユニバーシティ室長で投資教育を行う福島理さんに、投資初心者がまず身につけるべきチャートの基礎を教えてもらった。

「この株チャート、上がる?下がる?」プロが教える“買い時・売...の画像はこちら >>

トレンドの上昇・下降はどうやって見分ける?

 まず、典型的なチャートのパターンをご紹介します。このチャートがこの後上昇するか 下落するか(「売り」か「買い」か)、考えてみてください。

 この問題の答えは、「売り」です。

 天井が2つあるこのチャートの形は「ダブルトップ」といって、相場の天井を示す典型的なチャートパターンで、下降トレンドへの転換を示唆します。

「この株チャート、上がる?下がる?」プロが教える“買い時・売り時”の判断ポイント。勘や雰囲気に頼らない
 株価が大きく上昇した後にいったん下落し、再び前回上昇した株価近くまで上昇し、下落に転じたときのチャートの形で、アルファベットの「M」のような形をしているのが特徴です。

 前回の高値付近まで上昇するものの、そこを突破できず、「2番天井」をつけていますよね。このチャートの形が出現すると、天井を打って下降トレンドに入る可能性が高いと考えられます。

 ただし、ネックライン(1番天井を形成した後の安値)を下回って初めて下降トレンドへ転換したと判断することができ、ダブルトップが完成されます。


「どこまで下落していくか」の判断基準

 ネックラインを超えたところで「売りサイン」となるのですが、その先どこまで下落していくのでしょうか?

 その目安の一つとして、2番天井からネックラインまでの長さと同じ長さの位置を目標値と置くことができます。

「この株チャート、上がる?下がる?」プロが教える“買い時・売り時”の判断ポイント。勘や雰囲気に頼らない


チャート分析は「将来の株価の動き」を予測する

 ここでは基本的なチャートについてご紹介しましたが、そもそも株価の将来の動きを予測する分析手法には、大きく分けて「テクニカル分析(チャート分析)」と「ファンダメンタルズ分析」があります。

 テクニカル分析は、過去の値動きをチャートで表して、そこからトレンドやパターンなどを把握し、今後の株価、為替動向を予想するものです。主なテクニカル分析として、

①「移動平均線」「一目均衡表」などを使った「トレンド分析」
②「RSI」「ストキャスティクス」などを使った「オシレーター分析」
③特徴的なチャートパターンから予想する「フォーメーション分析」
④ローソク足を使った「ローソク足分析」
 
 などがあります。

 そのなかでも、過去の相場やチャートパターンを分析することで将来の相場動向を予測する「チャート分析」は、誰でも視覚的・直感的に売買のタイミングやトレンドを判断しやすく、多くの投資家が意識しています。
 
 チャートは投資家の投資行動の結果から形成されたもの。過去にも似たようなパターンがあれば、将来も同じようなパターンになる可能性が高いと予測できるため、個人投資家だけでなく、プロの投資家も売買の判断として活用しています。

 特に、デイトレーダーなど短期的に売買する個人投資家に多いのが、企業業績などを分析する「ファンダメンタルズ分析」は行わず、チャート分析だけで判断するスタイルです。

分析力を上げれば“ダマシ”も回避できる

 
 チャート分析は“個人”も“プロ”も同じ条件で分析ができ、チャート分析だけで売買を判断する投資家がいるほど。分析力次第で予測の精度を上げることも可能です。

 もちろん過去のパターンと必ずしも合致しないこともありますし、売買シグナルには“ダマシ”もあります。ただ、分析力を上げればこの“ダマシ”を回避して、売買のレベルを上げることもできます。

<ダマシ(騙し)とは?>
売買エントリーのシグナルとして認識されるチャートパターンやさまざまなテクニカル指標が機能しないこと。例えば、買いシグナルが発生したのに、その後すぐに下落してしまう現象

 また、チャートは投資家心理(買いたいや売りたい)を反映しているものなので、日本株だけでなく、投資家が売買する米国株、FX、暗号資産、商品先物などすべての投資商品で同じように使うことができるのもメリットです。
チャート分析を知っているのと知らないのとでは、大きな差が生まれます。

「この株チャート、上がる?下がる?」プロが教える“買い時・売り時”の判断ポイント。勘や雰囲気に頼らない
『「1問1答」で身につく!株チャートドリル』(扶桑社)
『「1問1答」で身につく!株チャートドリル』では、株チャートの基礎から応用までを実際のチャートを使ったドリル形式で学べます。ローソク足や移動平均線などの基本的な見方に加え、MACDやRSIといった主要なテクニカル指標の活用法、複数指標の組み合わせ方まで網羅。問題を解きながら理解が定着し、売買の判断力を高めることができます。

【福島 理】
(ふくしま・ただし)マネックス証券、マネックス・ユニバーシティ室長。日本テクニカルアナリスト協会国際認定テクニカルアナリスト。金融リテラシー向上のための教育活動に従事。テレビ、ラジオのほか、雑誌やWebでコラムを執筆。著書に『1時間でマスター!マンガと図解でわかる 新NISAの教科書』(扶桑社)、『勝ってる投資家はみんな知っている チャート分析』シリーズ(扶桑社)がある。
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