元ANZEN漫才のあらぽんが、ひょうたんアーティストとして活動を始めて約2年。
2024年9月と2025年4月に日本で開催した個展が好評で、順調に新たな道を歩み始めたあらぽんは、9月にカナダ・バンクーバーで初の海外個展を企画。


しかし、2025年5月に資金集めのために挑戦したクラウドファンディングで「目標金額を達成できない」という結果に終わっていた。

「完全に自分の準備不足でした」と語るあらぽんだが、“失敗したその後”に彼はどんな行動をとっていたのだろうか。本人を直撃してみた(前後編の前編)。

「クラウドファンディングに失敗した」あらぽんを直撃。目標金額...の画像はこちら >>

「自分、しゃべれるな」個展での実感

——これまでに2回、日本で個展を開催されたと聞きました。どちらも好評だったそうですね。

あらぽん:1回目は2024年の9月に代官山で2日間、160作品展示しました。

ビビる大木さんとか仲のいい芸人もたくさん来てくれましたし、お客さん一人ひとりに作品の説明をして、本当にやってよかったと思いました。

——1回目の個展で印象的だったことは?

あらぽん:意外と自分、しゃべれるなって気づいたことです。

実は解散直前にトークライブをやったら10人しか来なくてニュースになっちゃったんです(苦笑)。でも、個展ではお客さん一人ひとりに作品を説明してたら、気づいたら1時間以上経ってたんです。

しかも、お客さんはひょうたんのことをあまり知らないから、ちょっとした豆知識を話すだけで笑ってくれるんですよ。

『ひょうたんって作る時に水で腐らせるから臭いんです』『どんな匂いですか?』『フルーティーなドブです』って答えると、みんな『何それ⁉』ってなる(笑)。こういう知識はコンビ時代から培ってきたものなので、ナチュラルに出てくるんです。


「クラウドファンディングに失敗した」あらぽんを直撃。目標金額の1/3しか集まらず…思い切った決断をしていた
初期作品「晴天白日 蒼」
——1回目の個展で新しいお笑いの形を見つけたんですね。

あらぽん:はい。個展は自分に合ったスタイルなんだって気づけました。

2度の個展でつかんだチャンス

「クラウドファンディングに失敗した」あらぽんを直撃。目標金額の1/3しか集まらず…思い切った決断をしていた
小さくてかわいい「ひょうたんオーナメント」
——そして2回目の個展は?

あらぽん:2025年4月に渋谷で11日間行いました。「sweets」をテーマに100点くらい展示したんですが、カラフルな作品が多かったのと、1回目の経験を生かして小さな作品を多めに用意したこともあって、売れ行きも好調でした。

——2回目で印象的だったことはありますか?

あらぽん:外国人のお客さんが増えたことです。シカゴから来たカップルやアジアからの観光旅行者が買ってくれました。

——それが今年のカナダ個展につながったんですか?

あらぽん:実は、1回目の個展の後に偶然の出会いがあって、2024年11月にカナダでワークショップをやらせてもらいました。

60人くらい集まってくれて、その時に現地の人たちから「次は個展をやりましょう」って言ってもらえたんです。

そして、2回目の個展を見に来てくれたカナダチームと具体的な話が進んで、資金集めのためにクラウドファンディングに挑戦することになりました。

準備不足で目標の1/3に終わったクラファン

「クラウドファンディングに失敗した」あらぽんを直撃。目標金額の1/3しか集まらず…思い切った決断をしていた
クラファン
——クラウドファンディングの結果はいかがでしたか?

あらぽん:目標金額150万円に対して、集まったのは50万円ほどでした。原因は完全に僕の準備不足です。

実は、クラファンページの管理、返礼品決め、作品作り、発送とかも全部一人でやったんです。それに、サイトに載せれば勝手に支援者が集まるものだと思ってました。


でも実際は全然違っていて、プロジェクトオーナーはみんな告知とか色々と動いてるんですよね。

ちょうどその頃、ひょうたんの結構大きな畑仕事をやっていて、全然動けなかったんです。気づいたらクラファン終了まで1ヶ月を切っていて、めちゃくちゃ焦りました。

——そこから巻き返しは?

あらぽん:見かねた元放送作家の鈴木おさむさんが助けてくれました。

「クラファンは熱量を伝えなきゃいけないんだ」と教えてくれて、最後の最後で10万円のリターンも購入してくれました。しかも、「あらぽん、告知下手すぎ」ってXでポストしてくれたんですけど、それがクラファン終了の2日前とかでした(苦笑)。

そんなこともあったので、目標に届かなかったとはいえ「こんなに集まったんだ」とうれしい気持ちになりました。

舞台と並行の鬼スケジュール


——クラファンは目標に届きませんでしたが、カナダ個展は予定通り実行されましたね。

あらぽん:はい、カナダの人たちが金額別に3パターンのカナダ行きプランを考えてくれてたんです。全然集まらないパターンと、まぁまぁ集まったパターンと、目標金額達成したパターンと。50万円は一番下のプランだったんですが、100万円自腹を切って、マックスプランでやることにしました。

——思い切りましたね!クラファンは5月に終わって、当初は7月末にカナダ個展を開催する予定でしたよね。

あらぽん:はい。
でも、7月末の飛行機のチケットが取れなくて、最短が8月26日出発のチケットだったので、個展は9月1日開催になりました。

——では、余裕をもってカナダ個展の準備ができたのでは?

あらぽん:それが全然で、もう鬼スケジュールでした!

というのも、7月末に舞台『浦安鉄筋家族~子ども大戦争~』(8月20日~24日)出演の声がかかったんです。カナダ出発の2日前まで舞台となると、本当に大変になることは分かってたんですが、引き受けちゃいました(笑)。

でも、舞台稽古の前までにカナダ個展で展示する作品を作り終えて、配送まですませたので、集中して舞台に挑めました。めちゃくちゃ楽しかったですし、やってよかったと思います。

ひょうたんを手荷物で100個くらい持っていったんですけど、そのせいでカナダの空港で怪しまれて少し止められるっていうハプニングもありながら、無事バンクーバーにたどり着きました(笑)。

100万円自腹でも「マックスでやる」決断

「クラウドファンディングに失敗した」あらぽんを直撃。目標金額の1/3しか集まらず…思い切った決断をしていた
100万円自腹でも「マックスでやる」決断
——100万円の自己負担、不安はなかったですか?

あらぽん:もちろん不安はありましたけど、せっかく応援してくれた50万円をムダにしたくなかったし、中途半端にカナダでやったところで、何も残らないんじゃないかと思ったんです。

だったらマックスプランで個展を開いて、カナダでの感触をしっかり掴まないと意味がないなって。

——すごい決断ですね!ちなみに、カナダの方々は反対されなかったんですか?

あらぽん:反対されました(笑)。「そんなにお金かけなくてもいいんじゃない?」って言われましたが、もう僕も腹を決めてたんで「いや、マックスやりましょう!」って押し切りました(苦笑)。そこから削れるものをどんどん削っていったって感じです。

後悔しないように、全力でやりたかったんです。


<取材・文・写真/安倍川モチ子>

【安倍川モチ子】
東京在住のフリーライター。 お笑い、歴史、グルメ、美容・健康など、専門を作らずに興味の惹かれるまま幅広いジャンルで活動中。X(旧Twitter):@mochico_abekawa
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