投資家が注目する高配当銘柄
好調な相場を受けて投資熱が高まり続けている。なかでも投資家から熱視線を浴びているのが高配当銘柄だ。賃金が上がらないのに、配当金は右肩上がりなのだから、人気化するのも当然の話か。独立系リサーチ会社「智剣・Oskarグループ」の大川智宏氏が解説する。「12か月先の予想配当利回りが高い上位20%の銘柄とTOPIX(東証株価指数)のパフォーマンスを比較すると、ここ5年間でTOPIXが+60%なのに対して、高配当株上位20%が+80%と上回っている。背景にあるのは、株主還元強化と新NISA。
’23年に東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に是正措置を取るよう号令をかけた影響もあり、自社株買いや増配を行う企業が増加し、買いが集まりやすくなりました。そうした高配当株は『新NISA枠を早く埋めよう』という投資行動から毎年1月に最も買われる傾向にあるのです」
「未来の高配当株」投資を狙え!
一般に高配当と株価の値上がりはトレードオフの関係になりやすい。同じ配当額でも株価が下がれば、配当利回りが上がるためだ。さらに、業績悪化から減配ないし無配転落となれば、たちまち株価が急落するリスクを伴う。だが、着実に配当収入と値上げり益を狙う方法もある。それが「未来の高配当株」投資だ! 配当金が“増え続ける”銘柄を狙い撃ちする手法だ。
「業績が右肩上がりで、自己資本比率が50%前後はある企業なら増配余力があるので、値上がり益と配当の二重取りを狙うことも可能でしょう。
配当利回りが高すぎる銘柄には注意

また、昨今の高配当株人気はしばらく続く可能性が高いことも頭に入れておきたい。
「日銀の利上げが進む局面では、グロース株(成長株)よりも高配当銘柄も含めたバリュー株(割安株)にお金が流れやすい」(大川氏)ためだ。ただし、配当利回りが高すぎる銘柄には注意が必要だ。
「配当はいわば、利益の切り売りなので、高ければいいというものでもない。実際、TOPIX採用銘柄のうち配当利回り6%超の銘柄の過去5年間のリターンは、『6%未満』よりも大きく劣る。株価が下がり続けているのに配当を維持して高利回りになってしまう銘柄もあるんです。だから、6%以上の銘柄は避けるべき」
今ではなく未来の利回りを見据えて投資せよ!
大川氏注目の「未来の高配当株」
①矢作建設工業(東P・1870)予想配当利回り:3.9%
株価:2289円
PER:14.9倍
PBR:1.42倍
予想増益率:65%
6か月騰落率:65%
名古屋地盤のゼネコン。今期最高益の見込み。DOE5%以上の配当方針の導入を表明。
②伊藤ハム米久HD(東P・2296)
予想配当利回り:5.5%
株価:5760円
PER:18.6倍
PBR:1.14倍
予想増益率:21%
6か月騰落率:50%
食肉加工大手。海外事業の好調に加え、経営統合10周年の記念配もあり、今期年間配当は2.2倍に。
③丹青社(東P・9743)
予想配当利回り:4.9%
株価:1412円
PER:12.8倍
PBR:1.85倍
予想増益率:10%
6か月騰落率:35%
乃村工藝社と並ぶ空間ディプレイの企画、設計大手。万博効果で今期過去最高益見通しで増配も。
④ワールドHD(東P・2429)
予想配当利回り:4.1%
株価:2616円
PER: 8.7倍
PBR:1.02倍
予想増益率:12%
6か月騰落率:25%
製造業派遣・請負主力。技術者・研究者派遣も。今期から配当性向を30%から35%に引き上げ。
⑤丸井グループ(東P・8252)
予想配当利回り:4%
株価:3251円
PER:20.8倍
PBR:2.41倍
予想増益率:11%
6か月騰落率:22%
小売りと金融が柱。エポスカード取引高増加などで今期も連続増収増益へ。DOE8%程度を目標に。
残りの大川氏が注目する「未来の高配当株」は…

予想配当利回り:4.1%
株価 :483円
PER:10.5倍
PBR:1.13倍
予想増益率:42%
6か月騰落率:21%
三菱UFJグループ。消費者ローン最大手。貸倒関連費用の減少などで今期大幅増益予想。
⑦フォーラムエンジニアリング(東P・7088)
予想配当利回り:4.9%
株価:1286円
PER:19.9倍
PBR:5.63倍
予想増益率:18%
6か月騰落率:21%
機電系エンジニアに特化した人材派遣。業績好調。
⑧パーソルHD(東P・2181)
予想配当利回り:4%
株価:275円
PER:14.7倍
PBR:3.2倍
予想増益率:14%
6か月騰落率:8%
「テンプスタッフ」「doda」を有する人材大手。業績好調持続。配当性向50%目標を掲げる。
⑨ワールド(東P・3612)
予想配当利回り:3.7%
株価:2884円
PER:8.77倍
PBR:1.17倍
予想増益率:14%
6か月騰落率:8%
「アンタイトル」などを有する総合アパレル大手。利益成長続き、配当性向30%を基準に増配基調。
⑩タマホーム(東P・1419)
予想配当利回り:5.3%
株価:3690円
PER:17.8倍
PBR:3.12倍
予想増益率:123%
6か月騰落率:5%
首都圏郊外や地方を中心に展開する住宅メーカー。工期遅延などで前期大幅減益だったが今期増益へ。
※予想配当利回り4%以上、予想増益率10%以上、直近6か月騰落率がプラスのものを大川氏が抽出

「未来の高配当投資」重要指標
①DOE(株主資本配当率)=配当総額÷株主資本×%株主から集めた資本金や過去の利益を蓄積した株主資本のなかから、どれだけ配当を支払うかを示した指標。株主資本は年度によって大きく増減しにくいためDOEの目標値を設定している企業の配当金は安定しやすくなる。DOE4%以上が配当投資家に好まれる傾向に。PBR×配当利回りでも算出可能。
②配当性向=1株配当÷1株利益×%
利益に対する配当の割合を示す指標。30%前後を目標値として公表している企業が多いが、中には70~100%に設定している企業も。高いほど支払われる配当は大きくなりそうだが、毎年変動しやすい利益に対する割合のため、赤字の場合は配当金がゼロに。安定配当を示す指標ではない点に注意
③ROE(自己資本利益率)=純利益÷自己資本×%
株主が出したお金(自己資本)をどれだけ効率よく使って利益を生み出しているかを見る指標。一般に8%以上あると、優良企業とみなされる。「稼ぐ力が強い=配当余力が高い」ため、“高ROE”銘柄に注目する投資家が多い。「ROEDOE」で“配当余力”を探る投資家も多く、5%以上は余力大
【智剣・Oskarグループ代表 大川智宏氏】
野村総研、JPモルガン・アセットなどを経て独立。計量分析に基づいた投資戦略立案を行う。日経CNBCなど出演番組多数

―[値上がり益が狙える[未来の高配当株]ベスト50]―