汗臭、生乾き臭、ワキガ臭……。
広告代理店で営業職をしている河原睦美さん(仮名・28歳)は、先輩社員とデートしている際、まさにそんなシチュエーションを体験したという。
会社の先輩とサッカー観戦に
「5年ほど前の話になりますが、同じ部署の先輩と良い感じになったことがありました。会社の飲み会で意気投合して、休日に共通の趣味であるサッカーを観に行くことになったんです」観戦中も先輩との話題は尽きず、盛り上がったという。
「先輩はあれこれと気を回してくれました。集中して試合を観たいはずなのに、私のために途中で飲み物や食べ物を買ってきてくれたりして。前から先輩のことが気になっていましたが、改めて良いなと思いました」
良い雰囲気だったのに「強烈なニオイ」が…
その後、打ち上げと称して個室居酒屋に行くことに。「そこでは恋愛トークで盛り上がって、かなり良い雰囲気だったと思います。でも、気になることがひとつ。なぜか、ひどい悪臭がするんです。嘔吐物や排泄物を思わせる強烈なニオイでした。完全な個室というわけではなかったので、隣の席でくさやでも食べているのではないかと思いました。
時刻は22時に迫ろうとするころ。部屋に行ったら恐らく終電を逃すことになる時間帯だ。河原さんはドキドキしながら先輩の誘いを承諾した。二人で店を出たが、すぐに違和感を覚えたという。
「外に出てもあのニオイがするんです。彼の家に行くため、駅に向かって歩いていても、とにかく悪臭が気になってしまい……口数も少なくなっていました」
突然態度が急変して「実家に帰る」と…
口数が少なくなったのは、ある疑いがあったからだった。「もしかしたら……彼は大きいほうを漏らしたんじゃないかと思いました。飲んでいる時にも頻繁にトイレに行っていたので、下痢なんじゃないかって思ったんです。彼は黒っぽいズボンを履いていたので、見た目ではわかりませんでしたが、そうでないとおかしいと思うぐらいのニオイでした」
そんなことを考えていると、先輩がある行動に出る。
「隣を歩いていた先輩が、こちらにグッと近づいてきたんです。私が黙っていたので、気になったんだ思います。先輩は私に顔を近づけて何か話したんですが、その言葉の途中で黙り込んでしまいました」
その後、先輩の態度が急変したという。
「距離を取って歩くようになって、言葉数が少なくなりました。
悪臭の正体はまさかの…
先輩の態度にショックを受けながら、駅で別れたが、あることに気づいてさらなるショックを受けることになった。「先輩の態度から、もしかしたら、ニオイの原因は私なのではないかと思うようになりました。でも、何も思い当たることがないんです。でも、帰宅途中でわかりました。その日、首の後ろにデキモノができていたんですが、それに触れた手を嗅いでみたら、強烈な悪臭がしたんです」
後日、病院に行ってみると、「粉瘤」だと言われた。皮下に袋状のデキモノができ、そこに皮脂の老廃物が溜まり、細菌なども繁殖するため、ひどい悪臭を放つことがあるのだという。
「先輩との関係は、その後、進展することはありませんでした。自分が悪臭を放っていて、そのせいで嫌われたのだと思うと本当にショックで……。それに、きっと周りに話したりするんだろうと思うと、心底落ち込みましたね。
その後、ショックを忘れようと仕事に邁進したところ、営業成績は大きく伸びて、昇進するきっかけになったという。怪我の功名とはまさにこのことだが、いまだにこの出来事を思い出すたび気持ちが重くなるそうだ。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め