なんというか、「育ちがいい」有名人の番組が、ここ1、2年ほどの間、じわじわと勢力を拡大している。
 その中核をなすのは、石原良純、長嶋一茂、高嶋ちさ子がトリオでMCをつとめるテレビ朝日系の番組『ザワつく金曜日』の人気であることは間違いない。


長嶋一茂、高嶋ちさ子、石原良純…「育ちがいい有名人」がTVで...の画像はこちら >>

“育ちがいい3人”が各局で活躍

『ザワつく金曜日』とは、

“それってどーなの?”“ちょいイラ”“なんだか心がザワザワ” そんなビミョーに是非を問われる“話題”に “ザワつくトリオ”が言いたい放題>(番組HPより)

 という番組。その“話題“に対して3人がそれぞれズバッと切り捨て、時にはぶつかりながら意見をたたかわせるさまが、<スカッと爽快>(同HP)で、2018年の放送開始以来人気を集め、昨年大晦日特番にも抜擢されるなど、いまやテレ朝の看板番組といえる存在だ。

 他にも同番組の人気がうかがえるのは、この3人の誰かがメインをつとめる新番組や特番が、『ザワつく』の番組枠以外にもじわじわと増え、その置き所が明らかに『ザワつく』でのキャラクターありきと思われるところだ。

 基本的にキャスティング的にはこの3人の誰かを軸にする印象があるが、最近はここに小泉孝太郎という新たな「育ちがいい」俳優も参戦、世界のセレブを紹介するなど、「育ちがいい人」系番組がさらなる拡大をみせているように感じる。

放送作家の見解は

「当たり前の話ではありますが、前提として『ザワつく』の人気と需要があることが拡大につながっているわけです」

 というのは、さまざまなバラエティ番組などを手掛けるある放送作家だ。

「この『育ちがいい』人たちが何かについてハッキリ意見を言ったり、何かに挑戦したりすることで視聴率に結びつくのであれば、もっと他の人はいないのか、別のことはできないかというのが自然な流れとなります」

 とはいえ、現状としては『ザワつくトリオ』のスピンオフのような番組が増えているのはどういうことだろうか。

「言ってしまえば、3人がそもそも面白い人であるということ。そこに匹敵する人はさすがにいないということです。

 小泉孝太郎さんは、ハッキリ物を言ったり、それでいてどこかズレているようなそういった部分はありませんが、育ちが良いゆえの嫌味のなさに好感をもたれているところが起用につながっている気がします」

 世にはお金をたくさん持っている有名人はたくさん存在する。

 閉塞感が続く世の中で、育ちがいい人たちは嫌われてもいい存在であってもおかしくない気もする。しかし、『ザワつくトリオ』はなぜ嫌われにくいのだろうか。

ほとんどSNSを活用していない強み

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『孝太郎&ちさ子 プラチナファミリー 華麗なる一家をのぞき見』が2025年4月からスタート TVerより
 前出の放送作家は言う。

「単にお金持ちというだけだと、どこか品がなかったり鼻につく部分が見えたりして、そこを嫌う視聴者は多いです。

 似て非なるものというか、育ちがいいゆえにまとう天然な部分、それを“本物”と言っていいかどうかわかりませんが、本人に自覚のない嫌味のないハッキリした物の言い方は、本物の育ちのよさに立脚したものといっていいのではないでしょうか」

 しかしハッキリした物言いは、時には諸刃の剣のように炎上につながることもある。

「たとえば一茂さんなんかは炎上しそうなことを言ったり、必ずしもすべての人への好感度が高いわけではないかもしれません。


 しかし、それ以上に炎上させる側、批判する側が、この人に正論を言っても届かないなという部分があったりします。

 正論なのにどこか悪い気がするというか、言ってもしょうがないなというところでいつの間にか収まっている。SNSを本人たちがほとんど活用しないというところもある種の強みかもしれませんね」

ファンタジーとして楽しめる存在

 前述した“本物”には、ひねた物言いは通用しないということか。

「ちょっとした成金やバブル的な存在、急に売れちゃった人なんかは『リアル』の延長であると思うんです。

 しかしあの人たちは、どちらかというとリアルよりもファンタジー、価値観もすべて違う、別の世界の人が言ってることだなと視聴者が受け止め、ファンタジーサイドからの物言いになっているところはある気がします。

 それでいて時に自分たちの気持ちを代弁してくれるようなこともキッパリと言ってくれることもある。

 本家の『ザワつく』であれば高橋茂雄さん、他にも出川(哲朗)さんやホラン(千秋)さんなど、一般の視聴者目線でツッコめてしゃべれる人を配置してあるのが、ファンタジーと現実とをうまく結びつけてくれている。

 そうしたファンタジーの物言いを、ひとつの『ショー』として楽しんでいる部分があると思います」
 
 これだけ需要があるのであれば、前述の小泉孝太郎以外にも新たな『育ちがいい』タレントの発掘は進んでいくだろうか。

「そこはさすがに育ちが良くて喋れて好感度も期待できるという、条件的に限りがあるでしょうから、次々というのは厳しいかもしれませんね(笑)。

 たとえばかつてのDAIGOさんのような、家柄がよくてどこか天然、しゃべりもできるという人が発掘されたら、さらなる人気を獲得できるかもしれませんが」

「育ちがいい人」系番組の拡大は、ザワつく色がさらに拡大するかたちで進んでいくのかもしれない。

<取材・文/太田サトル>

【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。

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