ミス&ミスター東大コンテスト2025に「エントリーNo.4」として出場する、東京大学法学政治学研究科1年生の須賀ありささん(@misstodai4)が話題だ。彼女は慶應義塾女子高等学校を経て、東大大学院へ入学した。
「学歴ロンダリング」に違和感
――燃えておられますね。須賀さんが「学歴ロンダリング」との批判に対して反論した真意を教えてください。須賀ありさ:ご心配をおかけして恐れ入ります。「学歴ロンダリング」という言葉に対して、違和感がありました。もともとロンダリングとは、マネーロンダリング(資金洗浄)などで使用されるように、「洗濯する」という意味です。洗濯は一般的に汚れているものに対して行いますよね。
私が高校時代も含めて7年間学んだ慶應義塾は汚れていません。さまざまなことを学べた、非常に素晴らしい学塾です。私は今回ミスコンテストに出場することを自分で決めましたから、私個人についての批判は真摯に受け止めたいと考えています。しかし一方で、慶應義塾を貶める言葉はスルーできませんでした。
東大大学院を選んだ理由は?

須賀ありさ:大学院から私を受け入れてくれた東大に対する愛着ももちろんあります。
一方で、慶應義塾は私を育ててくれた大切な場所です。在校生・卒業生(塾員)同士の結束や連帯感が強く、今でも大きな絆があります。高校時代、コロナ禍で修学旅行へ行くことが叶わなかったため、当時の担任の先生の呼びかけで、大学卒業直前に「リベンジ修学旅行」を開催するほど仲良くしています。当時のクラスメイト25名ほどが京都に集まり、先生を囲んで和気あいあいと時間を過ごし、就職・進学・留学と様々な進路を祝福し合いました。多様な個性を認め合い、自主性を大切にする自由な校風で体得したことは私の原点です。
――なぜこれまで7年間を慶應で過ごしてきたのに、大学院から東大へ行ったのでしょうか。
須賀ありさ:ゼミの指導教授の勧めが大きいです。尊敬するその教授は慶應義塾を卒業後、国立の大学院に進まれて現在慶應義塾で教鞭を執っておられます。「私学の良さもあるけれど、国立には国立の良さがあるから、新しい環境を知ることもいいと思うよ」と背中を押してくださって、大学院入試を受験しました。
「慶應時代よりも東大時代のほうがモテる」の意図は…

須賀ありさ:運営にご迷惑をかけてしまうので、削除対応いたしました。私が申し上げたかったのは、東大における女性比率が少ないこともあり、大学時代よりもモテるという意味だったのですが、文脈のさらに奥に手を突っ込んで深読みする人も多く、「東大女子はブスだというのか」という書き込みがあって驚きました。
――実際には、須賀さんの目からみて東大女子はどうでしょう。
須賀ありさ:知的で理性的で、おしゃれでかわいい人も多くいます。女子の雰囲気は、慶應時代と違うことはありません。あのポストの反応をみて、「東大女子=可愛くない」と考えている人が多いことに、こちらがびっくりしてしまいました。そのように思ったことは一度もなかったので。 私には生きていくうえでのポリシーがあって、それは「誰かを傷つけて盛り上がることはしない」というものです。人を貶めてまで有名になりたいという考えが根本的にわかりません。
「大学附属が楽」という認識に思うこと

須賀ありさ:もちろん、学部から東大に入る人たちの努力は純粋にすごいと思いますし、尊敬しています。ただ、大学附属が楽であるという認識は早計かなと感じています。
たとえば慶應女子には、ユニークな“名物課題”がたくさんありました。白居易の漢詩『長恨歌』を暗唱して先生の前で披露する課題は、どんなに早口で言えても5分以上はかかるほどたいへんなものです。想像を絶する長さの漢詩なので、みんな家でドライヤーをかけながらブツブツ暗唱に費やしていて、傍目にイメージされるきらびやかな青春とは程遠いような(笑)。
大学受験は大きな山だと思いますが、大学附属で出される課題のどれも平坦ではないと今でも思います。
ミスコンは“他薦”がきっかけだった

須賀ありさ:大学時代、バレーボール部のマネージャーをしていました。そこで知り合った信頼できる東京大学の先輩が推薦してくれたらしいのです。
――らしい?
須賀ありさ:東大大学院の入学式の翌日に、インスタグラムのDMが届いて、「他薦があったけれど、ミスコンに出場する気はありますか」という趣旨でした。私が東大大学院に進学したことを知る人はそこまで多くない時期でしたので、いたずらかなとも思ったのですが、蓋を開けてみたらその方が推薦してくれたということでした。
――即決でしたか。
須賀ありさ:いえ、東大の素晴らしい環境にどっぷり浸かって、勉学一筋で行こうと思っていました。実際、エントリーまでにひと月ほど時間をいただき、参加するとしたらどのようなことが求められるのか面談をしていただきました。
誰かの力になれる弁護士を目指す
――悩んだ末にミスコンに出ようと思ったのは、なぜですか。須賀ありさ:何事も、やらない後悔をしたくなかったんです。正直、毎日重たい教科書を抱えて学校へ行き、長時間勉強をして、帰って疲れてソファーで寝てしまう日もありました。そんな生活に加えてミスコン活動などできるのだろうか――と悩みました。けれども、いろいろな人が私を知ってくれて、思っていることを届けられる機会になるだろうと考えました。
――ミスコンに出場した人たちのその後は、芸能界やアナウンサーなどが浮かびますが、須賀さんはどんな展望があるのでしょう。
須賀ありさ:弁護士になりたいと思っています。私が言われて最も嬉しいのは、「ありさのおかげで〇〇できた」という言葉です。私の存在や助力が、ささやかでも誰かの力になり、ひいては生活の質を上げることに資するとすれば、これに勝る喜びはないんです。弁護士として、誰かに寄り添う働きができればと考えています。
=====
まっすぐ見返してくる目力が印象的な女性だ。冒頭に記した須賀さんのポストは、自らを成り立たせてくれた慶應義塾“愛”ゆえの、魂の咆哮だろう。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki