該当するのは、トップモデルが多数所属している、界隈でも3本の指に入るほどの大手プロダクション。
記事を執筆している10月7日時点では、女優アカウントの更新が途絶えており、決着がついたかはわからない。ただ真偽はどうであれ、ギャラの未払いや誤魔化しは、女優にとって死活問題である。
AV新法導入前の“取り分ブラックボックス問題”
公になっておらずとも、金銭トラブルで悩むモデルは意外と多い。AV新法導入前は契約書に演者の取り分のみを記載し、総ギャラがいくらかを教えることはなかった。だから、自分の所属する事務所の手取りが全体の何%かを知らないケースも実際にあったという。総ギャラを伝えない理由は様々だが、「所属女優が取り分の高いプロダクションに流れるのを防ぐため」というのも関係する。A社が50%、B社が30%なら給料重視のタイプは確実にA社へ行くだろう。
基本的に女優間でギャラの話題を出すのはNGとされているけど、仲良くなればおカネのタブーに触れてしまいがち。話を聞いた側が「じゃあ私もそっちへ行こうかしら」と移籍を検討し、他で仲良くなった子にも「ウチは50%らしいよ」と勧誘すれば、A社は潤ってもB社は困り果てる。よって当時は総ギャラを伝えず、女優同士で深い仲になるのをあまり推奨していなかったのだ。
現在はAV新法が導入され、契約書に総ギャラと取り分(%)の記載が絶対となった。入念な確認を行えばトラブル防止につながる——。
契約書すら存在しなかった“口約束ビジネス”の実態
正直なところ、人気商売のほとんどがギャラや契約書、経費の計算はちょっぴり“ザル”な点は否めない。ちなみに、あくまで個人的な話になるが、私はプロダクションと契約書を交わした記憶がない。多分いつやめても良い存在だったからだろうけど、一筆書くことなく年単位で活動したのである。もちろん撮影に関する誓約書にはいくつもサインをしたけれど、仕事を共にするパートナーとは完全なる口約束だったのだ。
今となっては有り得ない話だけれど、ギャラの未払いやプロダクションへの不満もなかったため、そのまま進んだ。私自身もまぁ適当だが、このようにビデオ業界はAV新法が導入される前は“ザル”な事案が発生していたのである。
もちろんこれらが当たり前とは言わないけれど、当時は小さな事務所でのギャラ未払い→踏み倒しや、病気の検査代が全額女優負担などの話も時折耳にした(※現在は検査代はプロダクションかメーカー支払いが絶対となっている)。
新法でも“ルーズな体質”が残る現場

その結果、どこまでいっても“ルーズさ”が残ってしまいがちなのだ。かといってギャラの誤魔化しや未払いを絶対許してはならないのだが……。
まだ新法が始まって数年しか経っておらず、内容もチマチマと変わっている。ルール自体が安定しないとなると、トラブルが起きるのも決しておかしくはないのだろう。
“クリーン化”を掲げる業界の現在地
「ビデオは業界クリーンだ」と何年も前から主張されてはいるものの、完全なクリーン化はまだ時間がかかるようだ。今回のギャラ未払いが本当だとすれば、大手プロダクションとしては大きな過失である。モデルの信頼を失えば会社は“商売あがったり”のため、今回の問題が早急に解決することを勝手ながら願ってしまう。そもそも成人向けかつ、形のない商売の世界で「クリーン」とは何なのだろうか……。現時点では新法という存在も不安定だからこそ、プロダクションとモデルはしっかりとコミュニケーションを取り、相違がないように気を払わねばならないのだ。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。