先月行われた試合では、メキシコ代表にスコアレスの引き分け、アメリカ代表に2失点で敗戦。不甲斐ない姿を見せた日本代表は、同じく本大会出場を決めている強豪相手にどのような戦いを見せてくれるのか。奮起が期待される。
両国ともに“低調な状態”だが…
4大会ぶり9回目の出場を決めたパラグアイ代表だが、南米予選の成績は6位。出場枠が増えていなければ、予選落ちしており、同国民は胸をなでおろしているところだろう。一方のブラジル代表は次大会で23大会連続での出場を決めたとはいえ、南米予選の結果は8勝6敗4分で5位となっており、これまでどおりであればプレーオフに回っていた順位。薄氷を踏むような突破となった。世界最速でワールドカップ出場を決めた日本代表と比較すると、両チームとも明らかに低調な状態といえる。その状態でも最悪の結果を免れるのが強豪たる所以で、日本代表も今回の対戦でそういった部分も学び取りたいところだろう。
両者との対戦成績だがパラグアイ代表とは通算5勝2敗4分、ブラジル代表とは0勝11敗2分となっている。パラグアイ代表とは分がいいが、11試合中9試合が日本のホームで行われており、2敗はコパアメリカとワールドカップという主要大会で喫している。ブラジル代表とは数字からもひと目でわかるように圧倒的に分が悪い。いずれの相手も本大会への試金石とするには、この上ない相手といえる。
不安要素は「増え続ける負傷者」
日本代表の強化試合としては素晴らしい機会に恵まれた。だが、残念ながら日本代表もチーム状況がよろしくない。先述のとおり、先月は1分1敗という結果で、コアなメンバーと当落線上にいるメンバーの実力格差をあらわにした。本大会までに成長を促せることと考えれば、結果的によかったといえることになるかもしれない。ぜひとも、そうなってほしいし、今回の2試合で少しでも成長している姿を見せてほしいところだ。このように今後への期待の裏返しといえる不安要素はあるが、ただただ不安なだけな要素もある。それは負傷者が増えている点だ。先月に続き町田浩樹(ホッフェンハイム)、冨安健洋(無所属)、伊藤洋輝(バイエルン)、高井幸大(トッテナム)、守田英正(スポルティング)が負傷によって招集を見送られた。谷口彰悟(シント=トロイデン)と田中碧(リーズ)は復帰したが、新たに三笘薫(ブライトン)、板倉滉(アヤックス)、遠藤航(リバプール)が負傷者リスト入りした。
「前回大会の冨安」のような状況は避けたい
本大会まであと9カ月ほど。先に挙げた当落線上にいる選手にとっては、表向きに諸手を挙げて喜べはしないものの、手放しで成長の機会を得られることになる。ただ、それはあくまでもそうなったらいいなという希望的観測で、本来であれば実力のあるメンバーが調子を整えて本大会に臨みたいというのが本音だろう。9カ月あればケガからの回復は見込めるだろうから、絶望的というほどの状況ではない。ただ、回復したとしてもそこまでに試合勘を取り戻した選手としての全快を望むには、時間が足りないという懸念が拭い去れない時期になってきた。
早く治せと言っても、早くなるわけではないし、無理をしてさらに悪化させる可能性もある。選手もケガをしようと思ってしているわけでないし、誰よりも早く治ることを願っているはずだ。
根本的な解決策を見出す必要が
余談にはなるが、選手らは負傷してしまうほど厳しい環境で常に戦っているといえる。過去に例を見ないほど負傷者が続出しているこの状況は、それだけ多くの選手が厳しい環境で戦い続けているという証でもある。とはいえ、日本代表というチームにとっては、喜ばしい状況ではない。チームとして根本的な解決策を見出さなければならない。
ひとつは負傷者のサポートだ。多くの選手がヨーロッパを主戦場としていることから、日本サッカー協会は2020年にドイツのデュッセルドルフにヨーロッパオフィスを開設した。いろいろな役割はあるが、本大会に向けて負傷している選手らを可能な限りサポートすべきだ。主軸は所属クラブにあり、どこまでできるかは調整が難しいが、可能なかぎり積極的にサポートして早期回復につなげてほしい。
“格差のないメンバー”をそろえるには…
もうひとつは、やはり他の選手の成長を促すことになる。先に希望的観測とは言ったが、負傷で離脱する選手の穴埋めは他の選手にしかできない。選手を大きく成長させるには、レベルの高い試合を経験させて気づきを得る必要がある。今回のパラグアイ代表も、ブラジル代表も多くの気づきを与えてくれる相手であることは間違いない。
観戦する際にも、その瞬間を見逃さないよう心掛けてほしい。
<TEXT/川原宏樹 撮影/松岡健三郎>
【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる