回転寿司の4大チェーンといえばスシロー、はま寿司、くら寿司、かっぱ寿司の4社です。かっぱ寿司は業界最大手でしたが、原価率を下げたことが「安かろう悪かろう」のイメージにつながり、2000年代に台頭した3社に追い抜かれてしまいました。
ただ、現在はそのイメージを払拭しつつあります。
 4大チェーンは、似ているようで実は価格設定や“リアル回転寿司”の有無などに差異があります。直近の国内店舗数ランキングは下記の通りです。それぞれどのような戦略を採っているのか調べてみました。

1位・スシロー:660
2位・はま寿司:654
3位・くら寿司:549
4位・かっぱ寿司:298

かつて「安かろう悪かろう」で凋落した“かっぱ寿司”も復活傾向...の画像はこちら >>

かつての王者「かっぱ寿司」

 かっぱ寿司はかつて回転寿司業界でダントツの規模を誇っていました。79年に長野市で1号店を構えた後、80年代に関東へ進出しました。回転寿司は58年に大阪で生まれたと言われていますが、当時は大々的に展開するチェーンは存在せず、かっぱ寿司は新規市場を開拓して勢力を拡大しました。2000年ごろまでは業界トップの座を維持していたものの、2005年ごろから綻びが出始めます。

 かっぱ寿司は競合よりも店舗運営コストを下げることができず、その分、食材の原価を下げたため、消費者からは「安いが味は美味しくない」という評価を得るようになってしまいました。2005年ごろの原価率はスシローなどの競合が50%前後であるのに対し、かっぱ寿司は40%程度でした。回転寿司はもともと原価率の高い業態です。原価を少しでも下げると味に影響してしまいます。

 2000年代からスシローなどの他社に抜かれ、冒頭の通り現在では業界4位の地位です。
14年に外食大手コロワイドの傘下に入り再建。現在では原価率も48%まで上昇しています。4社の中では特徴が見えにくいですが、後述するはま寿司と同様、税抜100円のメニューを残しており、4社の中では安い部類に入ります。

スケールメリットで低価格を維持する「はま寿司」

 はま寿司は「すき家」を展開するゼンショーが2002年に出店した回転寿司チェーンです。他社と同じく100円寿司として台頭しましたが、22年6月までは平日限定で1皿90円のキャンペーンを実施しており、安さが消費者に支持されました。インフレで22年にはスシローとくら寿司が税抜100円での提供を終了した一方、はま寿司は「まぐろ」や「サーモン」などの定番メニューを100円で提供しており、かっぱ寿司と同様にチェーンの中では低価格帯です。

 ゼンショーは全国に展開するすき家の物流網と仕入力を活用することで、低価格での提供を実現しています。かっぱ寿司も同様、コロワイド傘下でなければ安売りできていなかったかもしれません。なお、回転レーンに関してはスシローやかっぱ寿司と同様、レーンで寿司を陳列するのを終了しています。他社と比較してこれといった特徴はありませんが、近年では割安感が注目されており、スシローの店舗数拡大が停滞した一方で、はま寿司は店舗数を伸ばしています。いずれはスシローを抜いて業界トップになるかもしれません。

エンターテイメント性を重視する「くら寿司」

 くら寿司は1977年に個人経営の寿司店として堺市で創業しました。84年に回転寿司事業に参入し、ボックス席を導入して家族連れを取り込みました。2000年に「ビッくらポン!」を導入し、子供連れを中心に支持を獲得していきます。
22年10月にはスシローと同様、最低価格100円での提供を終了しました。

 くら寿司の特徴はエンターテイメント性を重視している点です。コロナ期間中では鬼滅の刃とのコラボで業績が急成長しました。もともと郊外型ということもあり、コロナ期間中では回転寿司が外食の中でも好調でしたが、コラボ企画はくら寿司の売上を押し上げました。また、4大チェーンの中で唯一、レーンで注文品以外の寿司を流す「リアル回転寿司」を継続しています。くら寿司によると、リアル回転寿司は「楽しい」「子供が喜ぶ」などの評価を得ているようで、エンターテイメント性重視の姿勢が窺えます。

 また、近年では浅草や押上などに「グローバル旗艦店」を開店。同店舗は和を意識した内装で、店内には様々なレジャー要素があり、インバウンド客で賑わっています。

人気の根幹はやはり高品質「スシロー」

 スシローは84年に大阪で創業し、96年から100円均一の店舗を出店しました。関東に進出したのは2001年です。4大チェーンの中では寿司の品質に注力している印象があります。22年まで最安メニューを100円で提供していましたが、黄・赤・黒と価格ごとに色を分けており、客単価が比較的高いのが特徴です。2018年時点で黄・赤・黒の皿をそれぞれ税抜100円・150円・300円で提供していました。
23年には黒皿を260円に下げつつ、「時価」で価格が変わる白皿を追加しています。

 以前より高単価メニューを投入していたため、やはりスシローは4大チェーンの中でも品質が評価されています。最近ではネタの縮小が目立ちますが、以前は他社よりも比較的大きめでした。他社が安売りで競争する一方、スシローは高単価メニューを充実することで品質を訴求したのです。

 23年1月、スシローを迷惑動画事件が襲います。客が寿司に唾液を付着させるなどの行為を撮った動画が拡散され、イメージダウンにつながりました。同事件以降、回転レーンでの寿司の陳列を停止し、現在に至るまでレーンで流すのを注文品に限っています。コロナ禍以降、回転レーンでの陳列を終了・自粛する流れがありましたが、同事件は注文品以外の終了を加速させました。スシローは一部店舗で大型パネルによる「デジロー」を導入し、画面上で回転寿司を再現しています。

今後のカギを握るのは、停滞する国内市場ではなく…

 以上、4社の違いをまとめました。スシローは高単価商品を充実させるなど寿司ネタに力を入れている傾向がみられます。はま寿司とかっぱ寿司はそれぞれゼンショー、コロワイドの力を借りて、現在でも最低価格100円での提供を継続しています。
くら寿司はエンターテイメント性を重視し、子供連れなどのファミリー層を中心に支持を得ています。

 業界全体で店舗数の拡大は停滞しており、国内はこれ以上の拡大が期待できません。かっぱ寿司は数店舗に留まりますが、各社とも海外に進出しています。直近ではスシローとはま寿司が中国本土で展開する一方、くら寿司は撤退を決めました。海外市場は有望とはいえ、現地企業による地場のチェーンもあり、日本企業の寿司チェーンだからと言って簡単に拡大できる訳ではありません。海外で日本と同じ地位を確立できるのか、各社の動向に注目です。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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