子連れならば何でも許されると思い込む“ママ”の傲慢
秋の週末、東京へ戻る東海道新幹線の車内で、佐藤恵美さん(仮名)は思いがけない光景に遭遇した。「普通車指定席の車両に入ると、30代くらいの夫婦と、小さな男の子が2人座っていました。問題は、そのファミリーの荷物です」
大型のベビーカーに巨大なスーツケース。さらに紙袋や土産物の袋が数点、通路を完全に塞いでいたのだ。
佐藤さんはトイレに行きたかったが、荷物の壁のせいで通ることができない。通路を挟んだ向かい側にいた男性客も、困った顔をしていた。
意を決した佐藤さんは、夫婦に声をかけた。
「すみません、荷物が通路を塞いでしまっていて、通れないのですが……少し寄せていただけますか?」
すると、通路側の席に座っていた母親が顔を上げ、佐藤さんを睨みつけた。少し派手な化粧をした母親は、見るからに機嫌が悪そうな様子だった。
「は? 何でアンタがそこ通るのよ! 通路なんだから、こっちだって通るのに邪魔なんだよ!」
まさかの逆ギレに、佐藤さんは一瞬言葉を失った。
意味不明。
向かい側にいた男性客も「いや、塞いでるのはそっちでしょ」と苦笑いでつぶやいていた。
「あの、通路はみんなが使うものです。ベビーカーもスーツケースも、完全に通り道を遮断していますよ」と、佐藤さんは冷静に、しかし語気を強めて言い返した。
母親は顔を真っ赤にして立ち上がり、さらに声を荒げた。
「ベビーカーは仕方ないでしょ! 子どもが寝てるんだから! 座席の下にも入らないんだから、そこに置くしかないの!」
彼女の甲高い声が静かな車内に響き渡り、周囲の乗客が一斉に注目する事態となった。母親は自分が「子連れ」という立場を盾に、何をしても許されると思っているようだった。
周囲の視線に耐えかねた夫が「やめろ!」
その時、窓側の席に座っていた夫が、耐えかねたように口を開いた。「やめろ! 俺たちが通路を塞いでるのが悪いだろ!」
夫は明らかに周囲の視線に耐えかねた様子で、妻の肩を掴んだ。疲れ切った表情からは、妻の言動に普段から悩まされている様子がうかがえた。
「すみません、本当にすみません!」
夫は佐藤さんと立ち往生していた向かいの男性客に深々と頭を下げると、急いでベビーカーを畳み始め、スーツケースをデッキ側の空いたスペースへと運び出した。妻は口を尖らせたまま、悔しそうな顔で夫の行動を見つめていたが、それ以上は何も言うことはなかった。
佐藤さんは「ありがとうございます」とだけ告げて、急いでその場を通り過ぎた。
「自分の非を認めず、公共の場でのルールを守れない人が、周囲の乗客だけでなく、身内からも咎められ、恥をかかされるという結末。ある種の自業自得を目の当たりにした出来事でした」
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo
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