日本人の多くが罹っている“歯周病”はお口だけではなく全身にも悪影響を及ぼすことがわかっています。
歯周病は“沈黙の病” 気づかないうちに進行していく
初期には自覚症状がほとんどなく、気づいた時には重症化しているケースが多いです。そして歯周病は気が付かないうちに全身にも悪影響を及ぼしていきます。
例えば、歯茎の少しの腫れや出血、口臭、ねばつきや噛んだ時の違和感や痛みなどは歯周病の初期症状です。生活に支障がなくても歯科医院で検査を受けましょう。
脳卒中リスクは約2.8倍に 血管の炎症がトラブルを引き起こす
歯周病菌が血管の中に入ると、血管の内側で炎症を起こし、動脈硬化が進行することがあります。歯周病は、脳梗塞のリスクを歯周病でない人の約2.8倍に高めることが研究で示されています。心筋梗塞の一因に。血管の詰まりが命を脅かす
動脈硬化が心臓の血管でも進行すると、血管が狭くなったり詰まってしまうことで心筋に血液が届かなくなります。これが心筋梗塞の原因です。歯周病による炎症が、この危険な血管トラブルを引き起こす一因になることが分かっています。
歯周病と糖尿病は“悪循環”に陥る最悪の関係性
・糖尿病の人は免疫機能が低下し、歯周病にかかりやすい
・歯周病の炎症がインスリンの働きを邪魔し、糖尿病の症状が悪化する
さらに、歯周病の治療を行うことで、血糖コントロールが改善したという報告もあります。つまり、歯周病を放置することは糖尿病の治療にも悪影響を及ぼすのです。
実はこんな病気にも関係が…
・肥満
・早産(血中を通して炎症性の物質が全身へ運ばれます。その物質が子宮に到達し、子宮収縮を引き起こすきっかけとなり、早産になる)
・誤嚥性肺炎(菌が気管に入ることで発症)
・認知症(最近の研究で関連があるのではないかと言われている)
また、歯周病が進むと「噛むと痛い」「歯が揺れる」などの症状から食事内容が偏り、栄養不足や全身の衰えにつながるケースもあります。
今日からできる! お口の健康を維持するための2つの基本
①毎日の丁寧なセルフケア
歯ブラシだけではお口全体の6割しか磨けないと言われています。歯と歯の間は歯ブラシでは磨くことができないのです。歯間ブラシやデンタルフロスでの歯間清掃は毎日使用し、舌の汚れ除去も忘れずに行いましょう。「その日の汚れはその日のうちに」落として清潔を維持することが大切です。
②定期的な歯科検診
プロによるチェックとクリーニングで、お口の病気の早期発見が可能になります。歯ブラシでは落とすことのできない歯石の除去や、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の中の清掃、セルフケアのチェックを行うことでより清潔で健康なお口の維持ができます。
また、様々な検診でむし歯や歯周病を早期に発見することができます。
早期に予防対策を講じ、必要な治療を行うことで健康を維持しましょう。
お口は“健康の入り口”
お口は、栄養を摂取する入り口であり、酸素を取り込む入り口、コミュニケーションの入り口でもあります。
日々の小さな心掛けの積み重ねが未来の健康を作るのです。今日できることから丁寧なオーラルケア習慣を始めてみてくださいね。
<文/野尻真里>
【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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