しかし、警備費や機運醸成費は国が負担をしており、チケットの販売枚数も目標に届いていないという不都合な真実もあるのです。
万博開催は成功だったのか?
大阪府の吉村洋文知事は10月9日の報道各社に対するインタビューで、大阪・関西万博は「合格点だった」と語りました。大きな経済効果が生まれ、最大で280億円の黒字が見込まれていることなどを理由に挙げています。日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長も日本経済新聞のインタビューに対して、「わりあい評価できる万博だったと言っていいのではないか」と答えています(「大阪万博「多くの来場や黒字、成功の条件クリア」 万博協会事務総長」)。
ビデオリサーチは大阪・関西万博に関する調査を実施しており、来場者の満足度は関東が71.9%、関西が84.4%との結果も得ています(「大阪・関西万博をデータで深掘り!来場率や満足度、人気パビリオンを徹底分析」)。
来場者の満足度は高く、リピーターも多く来場しました。それが累計来場者数を大幅に増やすことにつながり、公式キャラクター「ミャクミャク」のグッズの売れ行きも好調。黒字化に大きく貢献しました。運営費の黒字化は万博の関係者も高く評価しており、開催したことの意義を強調するポイントの一つになっています。
万博開催が成功だったと言われる所以です。
警備費の増額分が国負担なら納得できるが…
しかし、この運営費には含まれていないものがあります。その一つが警備費です。警備費はもともと運営費から捻出することになっていましたが、2023年9月に当時の西村康稔経済産業大臣が国負担にする方針に変更。
2022年7月に「安倍晋三元首相銃撃事件」が起こって日本中を震撼させ、2023年4月の「岸田文雄元首相襲撃事件」によって、いよいよ日本でもテロ行為が頻発することを印象づけました。
こうした状況を鑑みても、警備費の増額は避けられなかったでしょう。その分を国が負担するのであれば納得はしやすいものの、全額を国負担としたことには違和感を覚えます。
仮に当初の警備費200億円を運営費に含んでいたとすれば、黒字はギリギリのラインです。
「インバウンド比率」は目標を大きく下回る結果に
万博の機運醸成費103億円も国負担。この費用は全国的な認知度を向上させ、国民の興味関心や期待感を高めるためのもの。関係機関と連携しながらプロモーションを行い、各自治体と万博参加国との交流を促進する費用です。この費用は万博のチケットの販売促進のみを目的としておらず、参加国・地域と各自治体との交流促進といった、地方創生など国の政策を推進する観点から国が負担することになりました。
例えば、万博を契機とした観光客誘客への取り組みとして、宮城県は道の駅に多言語タッチパネル式道路情報提供施設を整備しています。新たな周遊ツアーも造成しました。
しかし、万博の訪日外国人割合は6.1%であり、12%程度としていた想定を大幅に下回っています。万博を契機として、関西圏以外の地方自治体にどれほどのインバウンドによる経済効果が生じたのかは不明確。機運醸成費を国負担としたお題目が結果として崩れ去っているように見えます。
結局のところ、万博を起点とした地方自治体へのバラマキの一環だと受け取られても仕方がないのではないでしょうか。
若者のためのイベントが「シニアばかり」
そして、チケットの販売枚数は2200万枚で、目標の2300万枚を下回りました。枚数以外にも、来場者の属性が気がかり。クロスロケーションズの調査では、50代以上が来場者全体の7割を占めたことがわかりました。60代以上は5割に達しており、来場者の大半がシニア層だったのです。
万博の機運醸成委員会は、取り組み方針である「機運醸成行動計画ver.2」において、ターゲット層の筆頭にファミリーを含むこども・若者層を置いていました。未来を担うこども・若者層に「見て」、「体験して」、「感じてもらう」ことが重要だとしていたのです。
そのために自前のSNSやインフルエンサーを活用し、万博の魅力をアピールしていました。大学コンソーシアムとの連携、学生ボランティアの参加促進も行っています。
しかし、クロスロケーションズの調査では、10代から30代は2割にも届いていません。
結局のところ、1970年の大阪万博に熱狂していたかつての若者や子供たちが、追体験するために足を運んだと見ることができます。そうなると、最先端技術など世界の英知を結集して新たなアイデアを創造し、イノベーションを起こすという本来の趣旨が揺らいでしまうようにも見えます。
大阪・関西万博は、長い間負の遺産として知られた夢洲を復活させるため、インフラ整備を急ピッチで進めて統合型リゾート建設の足掛かりを作りました。万博の経済効果は大きく、来場者の満足度が高いのも間違いありません。
とはいえ、問題点が多かったのも事実であり、手放しで喜べる状況ではないような印象を受けます。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年10月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/61-wQA+eveL._SL500_.jpg)
![Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2024年 10月号[日本のBESTデザインホテル100]](https://m.media-amazon.com/images/I/31FtYkIUPEL._SL500_.jpg)
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年9月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51W6QgeZ2hL._SL500_.jpg)




![シービージャパン(CB JAPAN) ステンレスマグ [真空断熱 2層構造 460ml] + インナーカップ [食洗機対応 380ml] セット モカ ゴーマグカップセットM コンビニ コーヒーカップ CAFE GOMUG](https://m.media-amazon.com/images/I/31sVcj+-HCL._SL500_.jpg)



