ぽっちゃり体型を自身の個性・武器として活躍する女性インフルエンサーは少なくないが、3桁体重の女性たちは日常生活でどんな「あるある」や「悩み」があるのか。
今回は、西川口のぽっちゃりBAR「はんぷてぃだんぷてぃ」キャストのちはるさん(身長152センチ・体重140キロ)をインタビュー。食費のため現役保育士としても働く日々について語ってもらった。
※インタビューと写真は6月の取材時のもの
140キロ女性の“意外な過去”
――ちはるさんはこちらの西川口のぽっちゃりBARで一番大きいんですか?ちはる:そうですね。お店で働き始めた1年ちょっと前は136キロで1番ではなかったんですが、そこから2ヶ月ほどで140キロに到達しまして。
――僕らが取材してきた中でもトップクラスです。今も保育士として働いているとか。
ちはる:私は普段、夜間保育で保育士として働いていて、週1~3日でお店に出勤しています。夜間保育の仕事なので、生活リズム的には両立しやすいです。
――ちはるさんは昔から体が大きかったんですか?
ちはる:小学生の頃からずっとソフトボールをやってきて、高校卒業後もスポーツ系の短大に進学したので、ずっと50キロ台でした。ソフトボールではインカレにも出ています。
5年で80キロ増…自身にとっても急激な変化
――え、ちはるさんは今おいくつなんですか?ちはる:26歳です。運動をしなくなってからも学生の頃と同じように一日5食の生活を続けていたら、2~3年でこんなことになって、私もいまびっくりしています。
――(笑)。
ちはる:運動量に関係なく1日5食は食べたい体みたいで、短大を出てからも2年ほどは友達と少し運動する機会もあったんですが、コロナ禍以降は目に見えて体重が増えていきました。
――5年で80キロ増だと、毎月1.5キロくらい増えてきた計算ですけど……。
ちはる:私はけっこう急激な変化でした。コロナ禍で保育士の仕事が暇になった時期もあり、ずっとウーバーイーツで食っちゃ寝生活をしていたんです。いよいよ本格的に仕事復帰だと思って、鏡を見たら「あれ? デカくなってる」みたいな(笑)。
短大の同期には「誰?」と言われる
ちはる:短大の同期には「誰?」って言われます。
――コロナ禍の精神的ストレスもあったんですかね。
ちはる:単純にお腹がなかなか満たされなくて、自分の食欲に従っていただけですね(笑)。ずっと運動はしていましたけど、もともと出不精な性格で太りやすい体質もやっぱりあると思います。家族もよく食べる人たちばかりで、動かなくなった人からだいたい太っていきます。
――スポーツ系の学生だと、1日5食くらいは必要なんですかね。
ちはる:一日中、授業でも部活でも体は動かしていました。
コンビニ1回で3000~4000円。食費に全フリする生活
――ちなみに夜間保育ってどんな働き方なんですか?ちはる:朝6時に保育が終わって、朝10時に寝るという生活です。私は朝の締め作業の前にコンビニ弁当を2~3個平らげて、パンなどを食べながら帰宅するんですが、15時くらいには空腹で起きてしまいます。お菓子も大好きで常に食べていますね。
――子どもたちと夕食をとるときも、ちはるさんだけ2つも3つもお弁当を並べているわけですか(笑)?
ちはる:夜間保育は来園時間がバラバラで、揃ってごはんを食べないので、私はAくん、Bくん、Cくんとそれぞれ一人前ずつ3回夕食を食べるみたいなかたちです。子どもたちから体重や見た目について何か言われることは意外とないですね。たぶん、子どもたちは「大人になったら大きくなるんだ」くらいに思っています。
ちはる:コンビニに1回行くと3000~4000円くらい買いますし、1回の食事で普通の人の1.5食分ぐらいは平気で食べます。ラーメン2杯とか。
――ラーメン2杯は普通の人の2食分ですけどね。
ちはる:食以外、とくに趣味もないので支出は食費に全フリしています。このお店で働き始めたのも、食費を稼げる場を探していたときにTikTokのライブ配信を見たことがきっかけです。
軽自動車がシャコタンに、エレベーターは3人が限界
ちはる:お店では「ポイズン」というキッチンの戦力外の部類に入れられるほど、料理は苦手です。「カロリー補給」というメニューがお店にあるんですが、よくビールジョッキに山盛りにされた唐揚げをお客様にご馳走になっています。「唐揚げは飲み物」というのが私たちの考え方なので。
――天職ですね。
ちはる:私たちレベルだと普通に話しているだけでもお腹が空くので。営業中に散々食べさせてもらった後、ココスの朝食バイキングにキャストのみんなで行くこともあります。ごはんに行くときは食べ放題が基本で、ビュッフェの在庫を枯らしたみたいな逸話ばかりです。時間無制限の食べ放題店でも「申し訳ありません。そろそろ……」と、途中で退店を促されることもあります。
――絶対にインカムやバックヤードで噂になっていそうな(笑)。
ちはる:移動するときも大変です。私、5人乗りの軽自動車を持っているんですが、「はんぷてぃ」のキャストスタッフが4人乗るとシャコタンになってしまうので。アクセルベタ踏みでも、なんでもない上り坂で9キロくらいしかスピードが出ないという……。エレベーターも4人で重量オーバーのブザーが鳴ります。
人の迷惑にならないように…
――なかなか肩身が狭くて大変そうですね。こちらのお店にはどんなお客さんが多いですか?ちはる:もちろん、ぽっちゃり女性好きも多いんですが、飲み屋街にあるので2~3軒目にフラッと立ち寄る方も多いですね。3~4割は女性客です。SNSを見て福岡など遠方からいらっしゃる方もいました。「はんぷてぃ」は“体重が重い人ほど偉い”というコンセプトのお店なので、私も自己肯定感をだいぶ引き上げてもらっています。
――ここでは脚の速さや収入は関係ないんですね。
ちはる:お店の外に一歩出たら、ちゃんと人の迷惑ならないように、なるべく小さくなって生きています。太ってから電車で席を譲られることが増えたんですが、私が座ると隣の人に窮屈な思いをさせちゃうので、ちょっと気まずいです。
――ちはるさんくらい大きいと、入店できない手狭な飲食店などもけっこう多いのでは。
ちはる:カウンター席のみでテーブル席のないお店は無理ですね。部屋探しは湯船の大きさ重視で選んでいますし、一時期は着る服がなくて本当に困っていました。服はほぼSHEIN一択です。下着もIカップあるので、ぽっちゃり専用の下着屋さんで買っています。
――そう考えると、みけぽだからこその出費もけっこう多そうです。
ちはる:暑がりなので逆に冬はTシャツとサンダルでも平気ですけどね。関西の有名なぽっちゃりバーには180キロの女性の方もいるんですが、ここまで来たら私ももっと大きくなって、「はんぷてぃ」をもっと盛り上げていきたいと思っています。
<取材・文/伊藤綾>
【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。
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