厚生労働省の人口動態統計によると、2019年の初婚夫婦の年齢差は、同年齢の21.0%が最も多い。次いで夫が1歳上で、同年代同士の結婚が多いことがわかる。
一方で、夫婦で10歳以上離れた「年の差婚」を選択する者もいる。なぜ、その選択に至ったのか。一緒にいることで、周囲からどう見られるのか。
「妻は22歳、夫は33歳」11歳の“年の差婚”で「クラブもキ...の画像はこちら >>
今回は、妻と11歳差の会社員・小坂井さん(33歳)に話を聞いた。

きっかけは「上司とのダブルデート」

——お二人の出会いのきっかけは何でしたか。

小坂井さん(以下同):僕の働いている会社の、取締役部長から紹介してもらいました。彼とは中学校1年生からの友人で、もともと彼に声をかけられて今の会社に入社しています。ある日、部長から「奥さんと、その妹さんと出かけるからついてきて」と誘われて、そこに、のちに妻となる女性がいたというわけです。

——第一印象はいかがでしたか?

正直、最初は恋愛対象として見ていませんでした。「当分、恋はしない」と思っていた時期でしたし、当時は僕が31歳で、彼女は21歳。11歳も年下だから「恋愛対象に見てもらえないだろうな」と思っていました。

——それがどうやって交際に発展したのでしょうか?

積極的にアプローチしてくれたのは、実は彼女の方でした。僕の顔のパーツ、特に目が好きだとストレートに言ってくれたんです。


二人でも会うことが増えて「付き合ってないのに遊ぶのもな」と感じて、思い切って交際をスタート。付き合い始めたのは令和6年7月7日で、その1年後に婚姻届けを出しています。

「蛙化した!」でも、位置情報共有アプリは「断固拒否」

——なぜ、奥さんは22歳という若さで結婚を決意したのでしょうか?

同棲してみて、このままだと「だらだらいきそうだな」と感じたそうです。ずるずると関係を続けて、そのままデキ婚……となりそうだったので、子どもを迎えるためにもきちんと形にしたかった。ちょうど区切りがよかったので、令和7年7月7日に結婚しました。

——小坂井さんに結婚願望はあったのですか。

結婚したいと思ったことは一度もありませんでした。僕の地元である岐阜は、高校卒業後や20代前半で結婚する人間が多く、周囲はすでに結婚していたんです。でも、僕はバドミントン、麻雀、ゴルフなど、趣味の時間を大切にしたかった。

一方で「子どもは欲しい」と思っていたんです。僕の趣味を尊重しつつ、子どもを育ててくれる女性なんていないだろうな……と、半ば諦めていました。でも、彼女はそれを許してくれた。これが結婚を決意した理由のひとつです。


——付き合った当初から、趣味に理解があったのですか?

はじめは違いました。それまで、妻は「LINEの返信は5分以内」「毎日電話」が当たり前という恋愛をしていました。一緒にいる時にスマホをいじるのもNGでした。

「位置情報共有アプリ入れようよ、周りはみんな入れてるよ」と言われたけど、僕は断固拒否(笑)。LINEも既読スルーしていると「蛙化(注:交際直後に冷めて態度を変えること)した!」となじられました。

でも、徐々に妻が変わっていったんです。友だちといる時に電話をされて「それはやめてほしい。せっかくの友だちといる時間を、他のことにとられたくない」と伝えたり、5分以内の返信を「しない」という態度を徹底したことで、理解をしてもらいました。

——なぜ奥さんは変わることができたのでしょうか?

妻がまだ20代という若さで、外にコミュニティがあることが大きいと思っています。夜まで仕事をした後も友人と遊びに行くなど、彼女自身が自由なんです。だから、僕の行動をとやかく言わない。

年上や同い年の元カノたちは、電話をしてきたり、束縛したがる人が多かった。
僕は全く干渉しないから、それを物足りないと言われたこともあります。妻とは「お互いに干渉しない」という共通の性格が、結婚の決め手になりました。

「おじさんじゃん」には「山田涼介と付き合ってるようなもんや!」

——ジェネレーションギャップを感じる瞬間はありますか。

妻は周りから「33歳?おじさんじゃん!」と言われるらしいです。僕は30代をまだ若いと思っているけど、22歳にとっては「おじさん」なんですよ(笑)。

でも「普通の30歳はそうかもしれないけど、アイドルに例えれば許される」という独自の理論を持っていて。妻は「山田涼介も30歳やろ?それと付き合っとるみたいなもん!」と返して周りを納得させているそうです。(笑)。

——一緒に過ごしていて、年の差を感じることは?

会話ではしょっちゅうあります。お互い違う情報を持っていることが前提になるので、「これわかるよね」ではなくて、「こうらしいよ」という説明が多いですね。

自分の知らないことを「興味ないからいいや」と流していたら楽しくないけど「そんなの知らなかった!」と受け止めると、楽しく過ごせます。

——たとえば、どんなことを知れたのですか?

妻のジェルネイルは自宅でできるタイプで、僕が家でやってあげています。もともと妻が自分でやっていたのですが「片手を固めている間に暇だから、やってみてよ」と言われて始めました。


お互いの「好き」を持ち込めるのは、年の差夫婦ならでは。妻の知らない、知る必要のない情報を僕が知っていて、その逆もある。同じ情報を持っていない方が、逆に良いのかもしれません。

あとは、たまに話が過去に遡りすぎると、差を感じますね。「僕が大学生の頃、妻は小学生だった」という話になるので、そうなるとさすがに差を感じます(笑)。

——年の差があると上下関係が生まれてしまったりしませんか。

妻の方ができることもたくさんあるので、特にそうなりません。妻は母子家庭出身で、3人姉妹で料理担当だったので、料理が上手いんです。

僕は苦手だから、一緒に台所に立つとイライラされたり「もういい。皿準備して」とこき使われたり(笑)。妻の帰りが遅いと僕もご飯を作ったりしますが、まだまだ妻にはかないません。

「クラブもキャバクラもOK」スキンシップがあるから不安もナシ

——趣味の時間を持ちながら、夫婦ではどれくらい一緒に過ごしているのですか。

僕は週4でバドミントンをして、金曜は麻雀、土日はゴルフ。
ほとんど家にいません。夫婦で一緒に過ごすのは、夜ご飯と寝る時くらいで、平日に3時間くらい。妻は美容師なので、月火休みだから、休みもあわない。でも、これくらい少ない方が、逆に上手くいく秘訣なのかもしれません。

——門限や連絡頻度などのルールはありますか。

「他人に行動をとやかく言われるのが嫌」という性格が共通しているから、ナシ。友人に「キャバクラ行こうよ」と誘われた時、「妻が嫌がるから断る」というのは嫌なんです。友だちの意見で決まったことだから、自分の意見じゃないから許してほしい」という言い訳もしたくないんです。

お互いに自由な行動を許し合っているから、妻が「クラブ行ってくるわー」と言っても、「行ってこやー」と返します。

——他の男性に取られる不安は……?

ありません。理由の一つは、妻の方から好きだと言ってくれたこと。もう一つは、二人でいる時はそれなりにスキンシップを取っているからです。


ちなみに僕たちの間の「浮気の線引き」も明確で、お互いよりも優先するものができたら浮気。たとえば、夫婦でご飯に行く予定だったのに、他の相手から連絡が来て、そっちを優先するのはアウト、という考えですね。

夫婦円満の秘訣は「等身大の自分」をさらけ出すこと

「妻は22歳、夫は33歳」11歳の“年の差婚”で「クラブもキャバクラもOK」なワケ
小坂井さん夫婦
——年の差婚を成功させる上で、最も大切にしていることは何でしょうか?

二人が幸せならいい、無理をせずに楽しければいい、という考えが根底にあります。特に大事にしているのは、「等身大の自分でどれだけいられるか」ということ。「若い妻のために気を遣う」というのは違っていて、どれだけ自分をさらけ出せるかが重要なんです。

よく「付き合っていた頃はよかったのに、結婚したら違った」という話を聞きます。それって、自分をさらけ出せていなかったわけですよね。嫌なものは拒否という態度で示して、我慢をしない。それが、無理なく夫婦を続けるコツなんじゃないでしょうか。

——趣味を最優先する夫と、それを許容する妻。この一見非常識な「お互いに干渉しない」というルールこそが、二人の関係を盤石なものにしている。夫婦円満の秘訣は、年齢や世間体といった「常識」ではなく「自由」にあるのかもしれない。

<取材・文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother
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