メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。
中年男性が「イケオジ」になるための投資
30代、40代を超えてくると「イケメン」ではなく、「イケオジ」を目指したくなるもの。しかし、服も小物もどれもこれも安価で買える今の時代、何に投資をすれば「イケオジ」になれるのか分かりにくい……そこで、今回は紳士の三種の神器である「スーツ」、「革靴」、「バッグ」について、最高級品から現実的に買うべきアイテム・ブランドまでそれぞれ徹底解説いたします。
①スーツ
・ZEGNA/ゼニア ネイビーブルー CENTOVENTIMILA ウールスーツ 98万4500円
1910年当初から「世界で最も美しいファブリック(生地)をつくる」という目標を掲げていた若き18歳の創業者、エルメネジルド・ゼニア。原材料調達から製品としてのスーツを製造するに至るまで一気通貫で同社、および同社グループで手掛けられる世界でも大変珍しい管理方法です。
コストコントロールや製品管理にうるさいユニクロですら自社工場を長らく持っていませんでしたから(特殊な3Dニットなどの製造工場のみ保有する)、この希少さが理解できるでしょう。
既製品では100万円を超える
スーツ製品だけでなく、生地単体で世界中のテーラー(仕立て人)に卸しているため、スーツに関わる仕事をしている人ならば誰でも「世界最高のスーツ生地は?」と言われれば、ゼニアと答えるでしょう。同ブランドはフルオーダーのサービスも展開していますが、既製品でもなんと100万円を超えることも。私も一着しか持っていませんが……まさに一張羅の最高峰と呼べるでしょう。世界最高のスーツ、世界最高のスーツ生地、そのいずれも認められているゼニアならばイケオジとして文句のない逸品です……しかし、当然こんな値段、宝くじでも当たらない限り出せるわけもありません。たかがスーツに100万円てアホかと思う人もいるでしょう。
・FABRIC TOKYO
私はFABRIC TOKYOのオーダースーツがおすすめ。こちらは店舗で計測・オンラインで購入という珍しい形式のオーダースーツブランド。
価格帯は4万5000円~とオーダースーツにしてはかなりお値打ち。なぜこのブランドがおすすめかというと……まず「そもそもスーツはどこで差がつくのか?」を考えると理解できるかと思います。
素材で差別化するというのは相応のコストが必要
・デザイン
・シルエット
・素材/色
しかし、カジュアル服ならばまだしも、スーツのデザインなんてどれも似たり寄ったり。もちろんダブルにするとか3ボタンにするとか選択肢こそありますが、一般的なスタンダードスーツと言われれば皆選ぶデザインなどほぼ同じです。
ダブルや3つボタンなどは遊びスーツであり、一張羅としてスタンダードな逸品を求めるならさして変わらない。そこで差がつくことなどほぼありません。
また、色も黒・ネイビー……もしくはせいぜいグレーのいずれか。一張羅と考えるならビジネス向けならネイビー、幅広く使うか礼服として活用するならブラックくらいしかないでしょう。カジュアルなら色の組み合わせでおしゃれを演出できますが、「色でスーツを差別化する」など一張羅としてはあまり一般的ではないでしょう。
素材はもちろんスーツ差別化の大きな要素と言えますが……しかし、考えてみてください。実生活で「あの人のスーツ素材がいいな!」と思ったことありますか?? テレビで政治家を見て「いい生地だな!」と思ったことが一度でもあるでしょうか? 素材で差別化するというのは相応のコストが必要です。
それこそゼニアの生地などであれば誰もがわかるレベルでしょうが……現実的な価格で素材の差別化はなかなか難しいものです。
もちろん「着こなし(コーディネート)で差別化できるか?」と言われてもスーツの着こなしなんて決まりきってる。では「差別化はどこですべきか?」と言われると当然残された要素である「シルエット」です。
「マスターパターン」が重要になるワケ
シルエットを差別化するということは二択。高級既成服を買うか、それともオーダーメイドで仕立てるかでしょう。オーダーメイドと言ってもゼロから制作するフルオーダー(ビスポークテイラー)などではこれまたコストがかかりすぎる。というわけでできあがっているマスターパターンからカスタマイズしていくイージーオーダーが基本となります。
そこでFABRIC TOKYOというわけ。もちろんイージーオーダーブランドなど世の中に山ほどあるし、各都道府県どころか中規模程度の町なら1つや2つは必ず老舗のオーダー屋さんなどが存在します。「なぜそんな中からFABRIC TOKYOをおすすめするか?」というと……マスターパターンがイケてるからです。
実はイージーオーダーの肝はカスタマイズの原型となる「マスターパターン」です。
そして、スーツにも一応トレンドがあり80年代の「あぶ刑事」舘ひろしさんのスーツと現代のスーツって全然形が違いますよね?? 老舗のオーダースーツ屋さんの場合10年前のパターンをそのまま使ってるなんてところも少なくないのです。
そもそもオーダースーツを頼むのはトレンドに無頓着なオジサマが多いので、パターンなんて気にしない人が多い。なので実際お金をかけてオーダーしても結局「なんかやぼったい古めかしいスーツだな」となってしまうところが多いのです。
FABRIC TOKYOはパタンナーがトレンドブランド経験者なので形が若く、現代的。加えてD2C形式でコストも安い。今スーツをオーダーするならFABRIC TOKYOがおすすめです。
②革靴
ヨーロッパでは革靴を長く使い続け、子供に渡すなど受け継ぐ習慣が根付いています。革靴はいいものであれば世代を超えて使えるため(無論修理が必要ですが)、安靴ではなく、投資した一生物の革靴を好むイケオジも多い。それでは、どの革靴を選べばいいか?
・John Lobb/ジョンロブ CITY II 22万8800円
スーツや革靴などフォーマルウェアといえば、イングランドが筆頭です。先ほどのスーツはイタリアに譲りましたが(イタリアのスーツ用ウールは光沢があり滑らかで、イギリスのスーツ用ウールはかなりかっちり目、現代において広く重宝されやすいのはどちらかというとイタリア生地かと思います)革靴はイギリスを選びましょう。
ヴィクトリア朝~エドワーディアン時代の貴族・上流階級向けとして名を馳せたジョンロブですが、現在はオーダーメイドをロンドンで、既製品をフランスで手がけており、棲み分けがなされています。
既製品であるフランスの生産はエルメス傘下にあり、同じくエルメス傘下にある世界最高峰のレザータンナーである「アノネイ」などをジョンロブに採用。ハンドメイドを行うクラフトマンブランドなどには製造工程で劣る部分もあれど、既製品として最高級であることは事実です。
……しかし、当然こんな値段、万馬券でも出せない限り買うはずもありません。現実的におすすめできる一張羅革靴はどれか……。
高級ブランドを賢い値段で手にする方法
・Jalan Sriwijaya/ジャランスリワヤ 98317 Bandung / BLACK CALF (LEATHER SOLE) 3万7400円
もともとインドネシアの工場で高級ブランドの下請けなどを手がけていたところです。実はインドネシアは大手ブランドなども含め靴の生産を行う世界的な拠点として知られています。世界第4位の靴輸出国であり100億足以上の靴を手がける靴大国インドネシア。
実はイタリア高級ブランドの生産拠点がインドネシアだったり……。内陸国ではないので輸出に優れており、また人件費などの各種条件も整っていたため元々NIKEやadidasなどグローバルブランドの生産拠点として活用されてきた歴史があります。つまり高級ブランドを賢い値段で手にするためにはおすすめの生産国。そんなインドネシアで本格的な英国ライクな革靴を作ってるのがこのブランド。
3万円という手頃な価格でビスポークシューズなどに採用されるハンドソーンウェルテッドを使うなどコスパ最高です。よくあるグッドイヤー製法よりも馴染みやすいといわれるハンドソーン。この価格でできるのは驚異的です。
ソールは交換可能なので修理し続ければ一生物とまでは言わずとも、使用頻度にもよりますが10年でも愛用可能。フォルムも美しくレザーの質も申し分ない。現実的にはこれでも高いと思うでしょうが、正直、1万~2万円の革靴を頻繁に買い替えるより断然おすすめです。
③バッグ
・HERMES(エルメス)- Sac a Depeches Light 149万円
公文書という意味の”デペッシュ”ですが、その名の通り、書類やノートパソコンを持ち歩くのに最も相応しいサイズ。エルメスらしい美しい仕上げによる曲線美と独特のフラップデザインが特徴。
エルメスの中でも重要アイテムとして認識されているもので、一般に販売はしていません。公式サイトでも存在自体は確認できますが、当然オンライン通販などにも対応しておらず、店頭でも「ありません」の一点張り。
一定の購入履歴がある上顧客のみ購入可能ないわゆる「修行」が必要なアイテムとなっています。また、価格も現在日本円で概ね100万円以上となっており(レザーやサイズによって異なりますが)究極のブリーフバッグにふさわしい存在として君臨しています。
……しかし、当然こんな値段、遺産でも入らない限り買うはずもありません。現実的におすすめできる一張羅ブリーフバッグはどれか……。
ブリーフバッグにデザイン性はさほど必要ない
・PELLE MORBIDA/ペッレモルビダ MH009-フラップビジネスバッグ 8万9100円
姫路レザーなど国内の優れた産地を活用し、ブランディングコストなどを乗せない原価ベースでの値付けをする良心的なブランド。モノ作りに対してコストはかなり安く、さすがプライベートブランドといったところ。
その分、海外製品と比べシンプルなデザインが多めですが、そもそもブリーフバッグにデザイン性はさほど必要ないでしょう。アンダー10万円でこのクオリティが手に入るなら間違いなくおすすめ。
ここからさらに一歩先に進むのであれば、フィレンツェに工房を構える「cisei/シセイ」などいくつかおすすめのバッグブランドがありますが……コストを考えるとこのあたりがいいかと。もちろん10年使う覚悟で購入して大丈夫ですよ。
イケオジであればノースフェイスのリュックなどではなく、こうしたシックなフォーマルバッグを一つ揃えておきましょう。おすすめです。
以上、イケオジが投資しておくべきアイテム3選でした!
―[メンズファッションバイヤーMB]―
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『ロードマップ』のほか、『MBの偏愛ブランド図鑑』『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)
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