―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―

令和時代において、中年の多くが悩むのが若い世代との関わり方だ。とりわけコンプライアンスが重視される時代、注意しなければパワハラやセクハラ認定されてしまうこともある。
これまで、さまざまな困難に立ち向かってきた就職氷河期世代も40-50代と中年になり、こうした壁にぶち当たる。彼らは人生後半戦をどう生き抜くべきか? 今回は同世代のひろゆき氏が若者との関係性について考える。

若手社員の社交辞令にダマされるな!信頼関係を築くのは幻想でし...の画像はこちら >>


 氷河期世代の中には若手との距離感に悩む人も多いです。これが正解かは不明ですが、同じく氷河期世代の僕がやっているのは、まず自分の経験や考えを念頭に置かない、ということです。

 そもそも、なぜ若手との関係がうまくいかないのか。それは今の時代は、氷河期世代が経験した昭和・平成と価値観が一変しているから。注意や叱責をして若手を育てるという文化も、今はモラハラやパワハラでしかない。仮に「厳しく叱ってもらえるほうがありがたい」と言う若手がいたとしても、それは上司をおだてるための社交辞令みたいなもの。本気でそう思っている若手なんて全体の0.001%くらいしかいないので、実際は叱られると反発して普通に辞めていきます。

 だからといって、無理に今の時代に合わせようとしても、過去の経験や実績とのギャップにもどかしくなったり、ズレた認識を持ってしまい、単なるヤバいヤツになったりするパターンもあり得ます。

若手の多くは転職前提。いずれは辞めていく

 なので、シンプルに「淡々と伝える」「必要以上に絡まない」を徹底するといいと思うのです。
例えば若手がミスをしたら「君の成長を願って言うんだよ」と指導するのではなく、「評価が下がるから気をつけてね」と事実だけを伝える。そして、実際にそう言ってくれる上司のほうが社内評価は高かったりします。

 そもそも「若手を育てる」というのは昭和の感覚。今の時代、若手の多くは転職前提で就職しているので、会社に長くいる前提で考えること自体がズレているわけです。

 だから、仕事を若手に任せようなんて思う必要はなくて、任せる基準もシンプルに「やらせて失敗しても致命傷にならない範囲」だけでいいのです。本当に必要なら、あとは本人が勝手に学びます。そこで無理をして「こうすれば?」とか「自分の頃は~」と昔話をされたら、若手は一瞬で心を閉ざします。

 この感覚がわからず「自分がズレているんじゃないか?」と思うなら、若手に意見を聞くのもアリです。これは自分のズレを修正する以外に、若手の士気を高める可能性も秘めています。

 若手は上司から意見を聞かれたら、自分が対等に扱われている感覚になるし、それを重視するもの。だから意見を聞くだけで十分で、採用しなくてもいいのです。

 だから「信頼関係を築く」とか「雑談で距離を縮める」みたいな考えは持たないほうがいい。
チームとして信頼関係を築こうと考えがちですが、信頼関係みたいな幻想を追い求めるのは昭和世代の悪い癖で、そもそも仕事関係の人と仲良くなる必要もないのですね。

 若手を無理に理解しようとすれば、歪みが出てイラッとするし、説教もしたくなりますよね。だから、わかり合おうとするより、「違う生き物」として観察するくらいの距離感がちょうどいいんじゃないかと思います。団塊世代やバブル世代が、我々氷河期世代のことを理解していないと感じるように、違う時代を生きていれば、価値観が違うのも当然ですから。

構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)

―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―

【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし』
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