穏やかな車内に迷惑すぎる親子が登場
佐藤拓也さん(仮名)は、大阪発の新幹線で実家へ帰省する途中だった。「僕は窓際の席で外の景色をぼんやり眺めていたんです。穏やかな車内の空気は、次の駅で乗り込んできた親子によって一変しました」
通路を挟んで隣に茶髪で派手な格好の母親と、小学校低学年ほどの男の子が座った。男の子は流行中のアニメキャラのTシャツを着ており、席に座るなり大声で騒ぎ始めたという。
「ママ、スマブラやっていい?」
「はいはい、いいけど静かにしなさいよ」
母親はそう言いながらも、視線はスマホに釘付けだった。口先だけの、全く意味のない注意だった。
「雑魚すぎー!」ゲーム音とともに響く“実況”
「男の子はリュックからNintendo Switchを取り出すと、イヤホンも使わずにゲームを始めました。大音量のBGMと派手な効果音が車内に響き渡って、それだけでも十分うるさかったのですが……」もっと迷惑だったのは、彼の「実況」だったという。
「弱いって! アイテムゲットしちゃうって!」
「はい、ここでメテオドーン! 雑魚すぎー!」
有名なゲーム実況者の話し方をそのままマネしているようだった。周囲の乗客から冷たい視線が刺さっているのに、母親はスマホに夢中で息子を止める気配はなかった。
佐藤さんは我慢の限界を感じていた。注意すべきか迷いながら親子を横目で見ていた。
その瞬間だった……。
母親の絶叫と子供の泣き声
男の子が叫びながら座席の上でピョンピョン跳ね、Nintendo Switchを振り回した。その腕がテーブルのペットボトルを強く弾き飛ばしたのだ。
キャップが緩んでいたのか、大量のジュースが母親のズボンにふりかかった。
「ちょっと! なにしてんのよー!」
ようやくスマホから顔を上げた母親が、金切り声をあげる。しかし、もう手遅れだった。母親のズボンはびちょびちょに濡れていた。
「怒られて大声で泣きじゃくる息子と、濡れてびちょびちょのズボンで『もー! 最悪!』とヒステリックに叫ぶ母親。その姿が滑稽でしたね……」
車掌が駆けつけ、タオルで後始末をする親子の姿を横目に、佐藤さんは「君たちが招いた結果だよ」と、心の中でつぶやいたのだった。
<文/藤山ムツキ>
【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。
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