10月の外免切替制度の厳格化で、悪質な外国人ドライバー問題は収束に向かうと思われていたが、現実は違った。大黒ふ頭や海ほたるで、外国人たちが爆音を響かせて“爆走族”化。
取材班は、現地に赴き異様な光景を目撃した!

制度の穴を突く中国業者が、外国人の危険運転を助長!?

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 外国人の交通事故が激増している。内閣府によれば、’20年の5441件から’24年には7286件と増加傾向で、国籍で最多は中国。

 原因と指摘されるのが、外国人が母国の運転免許を日本の免許と切り替えることができる「外国免許切替(外免切替)」制度の甘さだ。

 事故の急増を受けて、外免切替制度は10月に厳格化。この問題をSNSで早くから発信してきた「髙橋X羚@闇を暴く人。」は、こう振り返った。

「6月には、各地の運転免許試験場に制度が厳格になる前に外免切替しようとする外国人の列ができた。中国のSNS『RED』などに外免切替ツアーの広告が出て、東京・府中の免許試験場近くのホテルは、免許取得に必要な滞在証明書の住所欄に堂々とホテルの判子を押していた。まさに駆け込み需要目当てのビジネスですが、外国人の危険運転の犠牲になるのは日本人です」

日本の免許はバーゲンセール?

“外免切替”制度の厳格化も「日本の免許はバーゲンセール」悪質な外国人ドライバーが減らない理由。“爆走族”化する者も
外国人[爆走族]の実態
 住所がホテルでは事故後、逃走されれば追跡は難しい。制度が厳格化され住民票が必須となったが、本質的な問題解決には程遠いという。

「厳罰化したとはいえ、すでに日本の免許を取得した外国人の更新期間は3~5年。日本語がわからず、交通法規を理解してない人は多く、今後も事故の増加は予想されます。また、ジュネーブ条約に加盟する日本の免許はほかの条約加盟国でも運転できる。とりわけ自国の免許で運転できる国が限られている中国人にとっては魅力で、いまだに『世界100か国以上で運転できる日本の免許はバーゲンセール』と宣伝する業者はいます」(髙橋氏)

 さらに、彼らの交通ルールを無視した爆走を後押ししているのが「JDM」と呼ばれる、日本のカスタムカー文化の海外での人気ぶりだ。

 首都高では猛スピードで爆走する外国人が頻繁に目撃され、事故も起きている。


JDMの聖地・大黒PAは異国のよう

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大黒PAでは、19時頃をピークに中国人のみならず中東系の外国人たちも集まり、何をするでもなく車を見物していた
 10月の日曜、午後7時前に取材班が“JDMの聖地”・横浜の首都高大黒PA(パーキングエリア)を訪れると、改造スープラ、シルビア、ランボルギーニなどの高級車が30台ほど並び、エンジンの爆音を轟かせていた。

 周囲には見物したり、写真を撮るギャラリーが群がり、その数100人は下らない。

 国籍も中国人をはじめ、欧米系、中東系と多彩だ。さらに違法の“白タク”と思われる車両も近くに止まり、外国人観光客がどんどん降りてきて、まるで祭りのような賑わいに。ペルー人男性(30代)は、興奮気味に話した。

「ゲームと同じクルマがあって感動したよ! これからツアーで首都高を走るんだ。(外免切替で)日本の免許がそんな簡単に取れたんだったら、早く来日すればよかったよ」

 実は中国のSNSで大黒PAを検索すると、「聖地(圣地)」「天国(天堂)」などの単語がタグ付けともに、動画による“夜の湾岸爆走ツアー”の募集が並ぶ。

 投稿には「1人8000円で首都高同乗体験!」「プロドライバーが案内」などの文言。だが、見る限り正規の会社ではなく、ほぼ“個人”の小遣い稼ぎとわかる。

 取材班も当該アカウントにコンタクトを取り、約束をしていたはずが「今日は気分が乗らない」と姿を現さなかった。

聖地化とともに、法定速度を超えて爆走する輩も

“外免切替”制度の厳格化も「日本の免許はバーゲンセール」悪質な外国人ドライバーが減らない理由。“爆走族”化する者も
外国人[爆走族]の実態
 このJDM聖地化でもうひとつ、問題なのが外国人によるレンタカー爆走行為だ。旅行中の台湾人カップル(20代)に話を聞いた。

「台湾でも大黒PAは有名。クルマはレンタカーで、料金は一日3万円。
首都高の運転は初めてだけど怖くなかった。レンタカー会社の契約書に法律を守ることと書かれていたので、さほどスピードは出してません(笑)」

 大音量でエンジンをふかしながら日本の改造車を止めて車を見せあっていた中国人(30代)はこう話す。

「首都高を何周かしてきたところ。休日の夜はクルマが少ないので、飛ばすのにいい。それでも200km/hくらいしか出してないよ。改造車も多いので、ちょっとしたバトルになって楽しかった」

 都内には、複数の外国人向けのJDMレンタカー業者が店を構える。外国人向けの業務も多い行政書士の田中良秋氏は、こう指摘した。

「業者は、外国人客が日本の交通法規を遵守する前提でクルマを貸すが、遵守できることの確認手順や程度は、業者によって異なる。外免切替であろうと日本の運転免許を所持しているなら、レンタルを断る業者は少ないでしょう」

取材班も煽り運転の被害に!

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外国人[爆走族]の実態
『RED』に広告を出していたレンタカー会社は日本の運輸局の認可を受けているのか。複数の業者に電話したところ、許可の話を出した途端、切られてしまった。

 実は大黒PAと同様、千葉県の海ほたるPAにも外国人が運転するJDMが多数集結する。翌週の土曜、現地を訪れた取材班は中国人ドライバー(20代)に話を聞いた。

「アクアラインは直線が長く続くので、スピードを存分に味わえる。
明日は大黒にも行く予定です」

 実際に取材班は海ほたるの出口から出るときに、外国人が運転するランボルギーニに、猛烈な“煽り運転”を受けた。途中で急カーブもあるだけに、これで事故を起こせば命の危険もあっただろう。

 海ほたるでは10月6日、無免許でJDMのレンタカーを運転したイタリア人が事故を起こしている。レンタカー契約は免許を所持する同乗の女性が交わしており、途中で運転を代わったのだ。

 事故だけでなく、外国人の煽り運転に遭った日本人の声も複数聞かれた。外免切替が厳格化されても、外国人による交通事故が減る兆しは見えそうにない。

厳格化で変わったポイント

厳格化前
●10問中、7問正解で合格になるイラスト問題
●住民票の写しOR旅券と一時滞在証明のみ

厳格化後
●免許申請時に申請者の国籍にかかわらず、例外的な場合を除き住民票の写しの添付を求める
●短期滞在者は免許を取得できない
●イラスト問題を廃止。問題数を50問に増加。審査基準を90%以上に引き上げ

“外免切替”制度の厳格化も「日本の免許はバーゲンセール」悪質な外国人ドライバーが減らない理由。“爆走族”化する者も
行政書士・田中良秋氏
【行政書士・田中良秋氏】
WINDS行政書士事務所代表。外国人向けの査証やビザ取得・更新、在留資格・帰化・永住といった分野に詳しい

※週刊SPA!10/28発売号より

取材・文/齊藤武宏 取材協力/青山大樹

―[外国人[爆走族]の実態]―
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