夏が終わり、秋を迎えて肌寒くなってきた。夏は特殊清掃の繁忙期といわれているが、秋になっても全体的な仕事の総数は変わらないという。
それは一体なぜなのか。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、特殊清掃の仕事内容の夏から秋の変化について話を聞いた。

秋になると孤独死の清掃作業が減るわけ

夏場は毎日のように孤独死が起きた現場の特殊清掃の依頼があった。しかし、秋になるにつれて減っていったという。

「夏場は7割くらいが孤独死の清掃現場ばかりでした。ですが、秋になり仕事の比重が変わっていきました。涼しくなって空気が乾燥してきたからか、火災現場の清掃が増えてきました。台風などによる水害現場の復旧などの仕事も増えています。

ちなみに統計をみると、1年間での死亡者数は変わらないんです。強いて言えば、夏と冬の死亡者数が、春秋よりは少し多いくらいです」

なぜ、秋は孤独死の清掃作業が減るのか。

「秋になると孤独死が減る原因の一つとして、孤独死の発見が少しずつ遅くなるということです。夏場は外に臭いが漏れたり虫が繁殖しやすく、孤独死が発見されやすかった。でも秋は孤独死の発見が少なくなります。
さらに、夏場は熱中症など突然死のリスクが高かったですが、秋には減ることも影響しています。冬になると心筋梗塞や脳卒中などの突然死の割合が増えてきますが、寒いので遺体が腐りにくくなり、死亡から発見までが長くなります。暖かくなってくる5月や6月に死亡してから半年後や1年弱経っている遺体が発見されるケースなども少なくありません。これが夏場の特殊清掃が忙しい理由です」

火災の現場が増加「まさかのアロマキャンドルが爆発」

特殊清掃業者が語る、秋になると「孤独死の清掃が減る」ワケ。そ...の画像はこちら >>
孤独死が減る代わりに増えた案件がある。

「孤独死現場が減った代わりにかなり増えたのが、火災現場の清掃です。最近あった酷い火災現場としては、アロマキャンドルが爆発して火災が起きたというものです。アロマキャンドルが爆発するなんて前例はいままでなかったようで……。エアコンや壁も溶けてしまって、部屋にある家財はすべて真っ黒焦げで炭になってました。消防の人もきちんと調べたけど原因がわからないということで、アロマキャンドルメーカーに話を聞かなくてはいけなくなったくらいです」

特殊清掃業者が語る、秋になると「孤独死の清掃が減る」ワケ。その一方で火災・水害の復旧作業は増加
火災の現場
こういった事故も空気の乾燥が引き金になることがあるという。

「知らないうちに引火性のガスが部屋の中に滞在してることもあるので、なるべく加湿器をつけたりして乾燥は避けてほしいなと思います。また、空気の流れを停滞させないように換気ができる環境も必ず作ってほしいです。寒くなってくると、ストーブの空焚きやキッチンの火の不始末でボヤを起こしてしまった現場が数多くあります。消防車を呼ぶまでもなく、自分たちで消火をした現場が大半です。
自分たちで清掃をしようと思ったけど、ぜんぜん綺麗にならないので我々になんとかしてくれといった内容で、何度もすすまみれの家を清掃しに行ったことがあります。全焼の場合は特殊清掃でなんとかできる範疇ではないので、そもそも依頼がきません」

集中豪雨で40件の依頼がきた日も

特殊清掃業者が語る、秋になると「孤独死の清掃が減る」ワケ。その一方で火災・水害の復旧作業は増加
水害
秋になって火災以外にも増えた現場がある。

「他に増えた現場としては集中豪雨による浸水です。我々の会社は大田区にあるのですが、集中豪雨が起こったときに、一瞬で大田区から40件の清掃依頼がきました。雨水が外から入って来たとか、外が洪水になって家の中に入ってきてしまったのでなんとかしてくれといった依頼です。

また、大雨の影響で家の中の排水管が逆流してトイレや洗面所から溢れ出てしまって、家の中が水浸しになったという現場です。一番酷かった現場は地下室が大雨によって冠水したケースです。階段が水浸しで、水を吸い上げてから部屋の中にあるものはすべて外に出して、清掃消毒、乾燥までしたので、復旧するのに3週間くらいかかりました。普通の水害だと15万から20万円くらいの費用で済むのですが、冠水の場合は100万円以上かかりました」

特殊清掃業者が語る、秋になると「孤独死の清掃が減る」ワケ。その一方で火災・水害の復旧作業は増加
悲惨な状態のトイレ
水害現場というのは清掃の工程がどうしても長くなってしまう。

「乾燥機を長いこと放置して部屋を乾燥させたとしても、それだけで終わらせることはできないんです。乾燥させるということは、水を蒸発させるということなんですが、水が蒸発すると湿度が高くなるんです。そこで洗濯機サイズの除湿機を持ち込んで、中の湿度を70%くらいから30%くらいまで下げなくてはいけません。
さらに、カビなどの二次被害を防がなきゃいけないので、かなり気を使います。ただこれをやるにも部屋の広さとか濡れ具合、浸水度合いによってかかる期間が変わったりするので、定期的な経過観察が必要なんです」

特殊清掃業者が語る、秋になると「孤独死の清掃が減る」ワケ。その一方で火災・水害の復旧作業は増加
水害
ただでさえ湿気が多い地下室である……。

「部屋の作りなどによっては3日で終わることもありますが、部屋全体が濡れてしまっている場合は2週間くらいかけて清掃をしないと、湿気を残したまま引き渡すことになります。そうなると、カビのリスクや害虫のリスクがあがるので注意しなくてはいけません。カビの発生は健康被害などの恐れもあります。なので必然的に作業完了までお時間をいただくことになります」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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