―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―

コンプラ全盛の時代、ちょっとした気遣いにも、相手次第ではリスクは伴う。大きく年齢の開いた若手社員との接し方は悩ましいものだ。
これまでの人生で困難に立ち向かってきた就職氷河期世代も40-50代と中年になったにもかかわらず、彼らの人生後半戦も困難の連続だ。そこで、いかに生き抜いていくべきか? 同世代のひろゆき氏が考える。

相手への気遣いがコンプラ違反に!悩める中年の自己防衛策とは/...の画像はこちら >>


 たとえ部下であってもドライに接したほうがいい。これは氷河期世代にとってリスクを最大限に減らすための防衛策である場合があります。会社員生活においては、「問題を起こさなければクビにならない」という日本のルールを利用して、穏便にやり過ごすのが合理的なわけです。

 その際に、若手から「扱いにくい」とか「いなくなってほしい」と思われるのは大きなリスク。そして、「どんな行動がリスクになるか?」という判断も、我々にとっての常識の範囲で考えないほうがいいです。というのも、常識を決めるのは、その時代の暇な人たちだからです。

 たとえば、車通勤をした日に残業で遅くなったうえに雨が降っていたので、部下に「送ろうか?」と誘ったとします。常識的には相手のことを考えた気遣いなのですが、今の時代ではその気遣いすら“地雷”になりかねないので、言うべきではないと思っています。

 相手からすれば、家を知られたくないとか一秒でも早く上司から離れたいとか、車に乗りたくない正当な理由なんていくらでもあるわけですしね。加えて、もしその部下があなたを貶めたいと思っていたら、コンプライアンス窓口に「夜中まで残業させられて、2人っきりの車に乗るように言われた」と通報することもできる。


 いくら善意であっても、誘ったという事実は覆らないので、あなたが無実かどうかは関係ないのです。

 部下3人を順番に送ったとしても、「2人きりのときにハラスメントをされた」とか言われたら、否定する証拠を出すのが難しいのです。

たとえ事実無根でも、疑われたらおしまい

 数年前に、草津町の女性議員が「町長から性被害を受けた」と告発した事件がありましたが、後に冤罪とわかっても、町長は相当な批判を受けました。録音があったのに裁判までいってるくらいなので、正しかったとしても、労力とダメージは相当なものだし、これは会社員でも大打撃です。それ以前に、一度でもこんな状況になったら穏便に過ごせなくなるわけです。アカデミー賞俳優のケヴィン・スペイシーも、複数の性加害で訴えられて、作品から降板。多額の違約金が発生しました。最終的には無罪でしたけど、そこから2年たった今も彼は現場に戻れていません。

 つまり「真実はどうなのか?」が重要ではなく、「そう思われた」時点で人生が変わるし失ったものは戻ってこない。今はそういう時代です。

 だからこそ、少しでもリスクがあるなら触れないほうがいい。自己防衛の基本は、“疑われる余地をつくらない”こと。
無実を証明するのは面倒だし、疑われないほうが圧倒的に楽。正義よりも、安全を優先したほうがコスパがいいのが現実なのです。

 なので、僕は2人きりにならないようにしているし、年齢に関係なく誰に対しても敬語と敬称を使うようにしているのです。若いからといって甘く見て接していると、どこかで足をすくわれかねません。誰がどこで出世するかわからないし、誰が根に持つかもわからない時代ですから。

構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)

―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―

【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし』
編集部おすすめ