2025年10月31日夜の東京都は、分厚い雨雲に覆われた。
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ハロウィン当日、全国の目は渋谷と新宿に向けられる。
ここに毎年多くのコスプレイヤーが集合し、時として騒動も発生するからだ。渋谷区、新宿区の両自治体はハロウィン限定の路上飲酒禁止区域を設定し、大勢の警察官と警備員を配置する。

「新宿ハロウィン2025」普段の週末と大差ない歌舞伎町。コスプレを全力で楽しむ外国人旅行者も
歌舞伎町
新宿区の場合は、日本有数の歓楽街・歌舞伎町を抱えている。今や日本人のみならず、外国人旅行者も歌舞伎町へ足しげく通うようになった。さて、2025年のハロウィンを迎えた歌舞伎町ではどのような光景が繰り広げられたのだろうか——。

コスプレイヤーは少なめ…


「新宿ハロウィン2025」普段の週末と大差ない歌舞伎町。コスプレを全力で楽しむ外国人旅行者も
歌舞伎町
歌舞伎町に足を踏み入れると、焼き物や揚げ物のいい匂いが漂ってくる。

冒頭に書いた通り、この日の天候は雨。しかも、雨足がだんだんと強くなっている。そのような状況ではむしろ飲み屋が賑わうようで、酒とつまみの誘惑に誘われて暖簾の下をくぐる人が多い。一方、外を出歩く人はあまり多くない。時折コスプレ衣装を着た外国人旅行者が通ることはあるが、これは多数派ではない。

今年の新宿ハロウィンが盛り上がっていたかそうでないかと問われたら、残念ながら「そうでない」と言わざるを得ない状況だ。

この時の歌舞伎町の人出は、いつもの金曜日と大きく変わりないように見える。
たまにどこからかやって来るコスプレイヤーが、今日はハロウィンということを思い出させてくれる。そんな具合だ。

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仮装
2025年の新宿ハロウィンは、例年よりも「閑散としていた」という表現を使うしかないだろう。

去年よりも綺麗な歌舞伎町


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警備
ただし、それはある面において好影響を与えていたことも書かなければならない。

まずは、ゴミが非常に少なかったこと。去年は歌舞伎町や新宿駅東口広場のあちこちにゴミが捨てられ、それがまた新しいゴミを呼んでまさに「ゴミ溜め」となっていた。しかし、雨の状況下ではその辺にたむろする人も殆どおらず、それ故にゴミがあまり出なかったようだ。

また、あれほど問題視されていた路上飲酒もあまり見かけなかった。これもまた雨の影響かもしれないが、ともかく今年の新宿ハロウィンには「マナー知らずの来訪者」はあまりいなかったように思える。

そのような中で「ガチの格好」をしてきたコスプレイヤーは、悪天候の中でも本気でハロウィンを楽しもうとしている人たちだったと断言してもいいだろう。

メキシコからの旅行者というコスプレイヤーカップルは、筆者のお願いで写真撮影に応じた後、メキシコのお菓子を「君にあげるよ」と言って分けてくれた。これには素直に感動してしまった。筆者も日本のお菓子を持参しておくべきだったという後悔もあるが、ハロウィンとはこうした交流に巡り合うことができる貴重な日なのだ。
¡Mil gracias! ¡Feliz Halloween!

結果として「理想的な形のハロウィン」に


「新宿ハロウィン2025」普段の週末と大差ない歌舞伎町。コスプレを全力で楽しむ外国人旅行者も
規制
ゴジラロードを北上し、「トー横」に差しかかるとそこに見えるのは白く無機質な覆いである。

今年のハロウィンも、トー横は立ち入り禁止。その周囲は一方通行で、誰しもが左回りに歩行するよう指示された。ただし上述したように、この日のトー横周辺を歩く人は決して多くない。歌舞伎町では渋谷と同様、大勢の警察官と警備員が配置されていたが、肝心の「警備される側」、つまり来訪者はまばら程度にしかいなかった。多くの人が、JR新宿駅東口から見てより手前側にある飲み屋に入ってしまった印象だ。

もしかしたら、これが「理想的な形の新宿ハロウィン」なのかもしれない。

なぜ、外国人旅行者は日本の繁華街で「路上呑み」をするのか。それは結局のところ、日本の都市部の治安は良好に保たれているからだ。これがたとえば、アメリカの大都市ではそうはいかない。路上で酔っていようものなら、窃盗や強盗に遭う可能性が高いからだ。

もちろん、外国人旅行者の路上呑みは都市衛生に多大な負担がかかる上、繁華街の飲食店には全く利益が発生しない行為である。が、何かしらのきっかけで彼らが路上呑みをやめ、飲食店を利用してくれるようになれば、その時点で新宿ハロウィンにつきまとっていた問題の大部分を払拭することができたと言えるのではないか。


警備員や新宿区職員による積極的な声かけの効果もあったはずだが、やはり雨が最大の要因となり、路上吞みをする外国人は殆ど姿を消した。そこにあるのは、いつもの週末と大差ない歌舞伎町の光景である。

渋谷・新宿は池袋の例に倣うか?


「新宿ハロウィン2025」普段の週末と大差ない歌舞伎町。コスプレを全力で楽しむ外国人旅行者も
コスプレ
さて、ここ数年で「ハロウィンのメッカ」が渋谷と新宿から池袋に移りつつある。

池袋ハロウィンが渋谷・新宿と異なるのは、これが「主催者のいるイベント」であるという点だ。明確な実行委員会が存在し、もちろんながら参加規約も設定されている。池袋ハロウィンは「秩序あるイベント」であり、それがもたらす安心感が多くの人に認められるようになったのだ。

渋谷と新宿のハロウィンがその例に倣い、誰もが楽しめるコスプレイベントとして整備される可能性は今後あるのだろうか。

<取材・文・撮影/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』
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