“婚活垢”と呼ばれるアカウントがある。その名の通り、自らの婚活の様子を配信するアカウントだ。
ラウンジのヌシさん(@healthy359)は現在30代半ば。婚活のスタートは22歳と若いが、一度も結婚したことはない。婚活で出会った男性は300名以上。会えば会うほど目だけが肥えた。「年収1000万円以上の男性と結婚する」を掲げて、鋭意活動中だ。
 彼女が婚活にハマった理由について、深堀りした。

「年収1000万円以上の男性」を狙い続ける年収300万円の3...の画像はこちら >>

「年収1000万円以上の男性との結婚」が目標

 ラウンジのヌシさんは中部地方に生まれた。祖父母と一緒に暮らす実家はいつも賑やかで、「いつか私もこんな家庭を築きたい」と憧れたという。高校時代までを地元で過ごし、進学に伴って上京。周囲の友人が若くして結婚していくのを横目にみては、内心羨ましいと感じていた。

「もともとは年収などについて何も考えていなかったんです。ただ、さまざまな男性と会ってデートを重ねていくうちに、どんどん理想が高くなってしまって……現在は年収1000万円以上の男性と結婚することを目標に頑張っています」

 ヌシさんの婚活遍歴は手広い。22歳でYahoo!パートナーに登録したのを皮切りに、マッチングアプリ、結婚相談所と渡り歩いた。
活動期間が10年以上におよぶため、自然と相手に求めるものも変化していった。

「当初は、話の合う人を求めて婚活をしていました。両親は父親が7歳ほど上だったこともあり、年上の男性に憧れた時期もあります。ただ、自分が30代の中盤に差し掛かると、若い男性のほうがいいですね(笑)。35歳以下で検索することが多いです。とはいえ、若い男性は20代女性を求めていることが多く、塩対応されてしまうこともしばしばなのですが」

「収入証明書」には抜け道が

 現在、ヌシさんの主戦場は結婚相談所。収入証明書や独身証明書を提出せねばならず、身元がしっかりしている男性が集まるメリットがある。だがヌシさんは、「こんな抜け道もある」と実体験を教えてくれた。

「たとえば年収1000万円と書いてあった男性がいました。会話が進んでいくと、彼がこう打ち明けたんです。『実は無職なんだ。去年、土地を売ってまとまったお金が入ったから、『去年の年収』としては間違っていないんだけど』。なんだよ、と呆れてしまいました。
また、『確かに収入証明書を提出するときまでは勤務していたけど、そのあと辞めた』とのたまう男性にも会ったことがあります。実際に話を聞いてみないと、わからないですよね」

「年収2000万円以上」の男性と出会うも…

 実際にコンスタントに稼いでいる男性にも出会えたが、縁がなかったこともある。

「不動産経営の男性は、年収が2000万円以上ありましたが、『今すぐ子ども産める?』という勢いで、焦っていました。結局、『子どもを今すぐ産んでくれないなら嫌だ』と振られてしまいました」

 年収の巧妙な誤魔化しにも驚くが、もっと大胆な場所を誤魔化す男性もいる。

「結構多いのは身長ですね。プロフィール欄に書く身長と体重は自己申告なので。私は175センチくらいあるといいなと思っているのですが、明らかに170センチあるか微妙な男性が来たこともありました」

「婚活が趣味」という指摘は図星か

 危ない目に遭ったこともなくはない。

「マッチングアプリをしていた頃は、車デートでホテルに連れ込まれそうになりました。車を降りて、相手の男性に『お車代』を渡して帰ってもらいました。本来の『お車代』じゃない気もしますが(笑)」

 完璧な人間はいないとはいえ、こうしたネガティブな側面によって婚活へのモチベーションは落ちることはないのか。だがヌシさんは笑顔で首を振る。

「楽しいですよ、これまで出会えなかった人に会って話ができるのは、結果がどうであれ素敵な時間です。そういえば、ある男性から『君は婚活が趣味であって、結婚がしたいんじゃないんじゃないの?』と言われたことがあります。結婚は本当にしたいですが、婚活が趣味というのは当たっているかもしれません」

 ヌシさんが婚活に全霊を捧げるのには理由がある。
彼女は「平凡な女子です」と本人が言うように、年収300万円ほどのOLだ。高校時代にこそ有名セクシー女優の追っかけをするなど熱を上げたが、現在は同じ熱量で入れ込むものはない。婚活で出会う「はじめまして」の瞬間に一番ときめくのだという。

「家と会社の往復の生活で、特に趣味があるわけではない私にとって、婚活は潤いなのかもしれません。仮に仕事だけしかしていなかったら聞けない話、知らない世界があるのですから」

 これまで婚活に費やしたお金は300万円以上。ここまで傾注したものは、確かに立派な趣味だろう。

「結婚できない」一番の理由は…

 ヌシさんが相手から“お断り”される理由はさまざまだが、一定数、婚活を趣味とするスタンスを「真剣さに欠ける」と判断する男性がいるという。

「私がSNSで自分の婚活記録をつけているのをみて、『真剣に取り組んでいないのではないか』と言われることはありました。私は婚活を自分が楽しみ、可能なら、多くの人にその楽しさを伝えたいのでSNSをやっているのですが」

 現在、ヌシさんは“婚活界隈”の人々とリアルオフ会をするなどして、情報を共有している。

 話も面白く、容姿にも気を使っているヌシさんがなぜ婚活市場で「売れ残る」のか。真剣さが伝わらないことはあり得るが、話を聞いていくうちに核心が見えてきた。

「私、相手の男性には婿に入ってほしいんです」

 ヌシさんの実家は父親が母親の家に入り婿として入った経緯がある。
家族円満の成功例として自らの家庭を思い浮かべるヌシさんは、相手の男性にもそれを求めているのだという。

「年齢もちょうどよく、年収も1000万円に近い、いい感じの男性がいました。けれども、やはり“入り婿”のワードを出すと途端に『親が許さないと思う』と顔が曇りますね。結局、入り婿でもいいという男性はいませんでした。だから、なるべく最後のほうにこの条件は出すようにしています」

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 いまだゴールは見えてこないというヌシさんだが、その目は希望に満ちている。「目標は500名に会うことです」。単調な日常に刺激を与えてくれる婚活。目的を遂げれば、家庭を築いて平穏な日常がやってくる。その端境に長く留まって、ヌシさんは終わらない青春を楽しんでいるのかもしれない。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。
Twitter:@kuroshimaaki
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