「残クレアルファード」というワードがSNSを中心に話題になったことで「残クレ=悪」という風潮となりました。残クレ自体は考えられた商品で、近年高額化が進む新車を手頃な価格で買えるようになる点は評価できます。

ですが、「残クレは情弱向けの商品である」と元ディーラー営業マンの筆者は断言します。では、ローンを組んで車を買う場合に情強はどのようなローンを組むのか、実際にシミュレーションしながら解説します。車を“気軽に”買える残クレですが、“安く”買えるとは限らないのです……。

賢い人は残クレなんか使わない

「残クレで車を買う人は情弱」元ディーラー営業マンが明かす“残...の画像はこちら >>
冒頭で申し上げたように、情強(情報強者)は金利負担の大きい残クレは使いません。残クレはあらかじめ決められた将来価値(残価)をローンの最終回に据え置くことで毎月の負担が抑えられる画期的な商品ではありますが、据え置かれた残価にも金利(利息)の負担が発生します。そのため、同じ期間で残クレと通常のローンを組んだときに負担する金利が高額になります。

できるだけ金利を負担したくない人は、支払い金額が増える、あるいは期間が伸びたとしても負担の少ないローン商品を選ぶ傾向が強いと思われます。

残クレでセレナを買った場合の金額をシミュレーション

残クレを契約したときにどれくらいの金額になるのか、見ていきましょう。今回は筆者が先日注文したセレナでチェックしてみます。

「セレナ e-POWER ハイウェイスターV」(車両本体価格381万8100円、所要資金380万円)を毎月均等払い60回(5年)の残クレで購入した場合はいくらになるのかシミュレーションしてみると、毎月の支払い金額は4万3800円(初回のみ5万962円)となります。5年後の残価が217万6000円と50%以上が保証されています。この残価が高ければ高いほど、残クレは支払う利息が多くなります。ちなみに日産の残クレの金利は5.2%です。

日産のシミュレーションによると、クレジット支払額合計が476万7362円、うち利息80万7362円です。
毎月の支払いで259万円支払っているのに5年後に217万円もの残債が残ってしまうのです。

残クレ最終回を迎えたら乗り換えてしまえばいい、と思われる方もいるかもしれません。もし残クレの返却要件(既定以内の走行距離、既定以内の傷やへこみ、事故による修復歴なし)を満たしていなければ、217万円を一括返済するか再度ローンを組んで支払わなければなりません。しかも80万円の高額な利息を払った上で、です。

金利の低いローンを契約したらどうなる?

「残クレで車を買う人は情弱」元ディーラー営業マンが明かす“残価設定型ローン”の落とし穴。銀行ローンの差額は50万円以上
金利
残クレ以外のローンを組んでセレナを買ったらどうなるのか、というところも見ていきましょう。通常のローンはディーラーでも取り扱っていますが7%程度と高い金利です。銀行を利用すれば実勢金利は1%台~3%程度、信販系だと5%程度なので、今回は銀行のマイカーローン3%、借り入れは同額の380万円でシミュレーションしてみます。

(5年)
毎月の返済額:6万8281円
総返済額:409万6860円
トータルの利息:29万6860円

(7年)
毎月の返済額:5万210円
総返済額:421万7682円
トータルの利息:41万7682円

(9年)
毎月の返済額:4万192円
総返済額:434万772円
トータルの利息:54万772円

車の保有期間は長期化していますが9年間ローンを支払うのは現実的ではないので、最長でも7年くらいが妥当かと思います。残クレよりも毎月の負担は増えてしまいますが、金利負担が少ないのでトータルの負担は抑えられます。残クレとローンの差額は外食を減らす、コンビニでの買い物をスーパーにするなど工夫すればカバーできるはずです。

銀行ローンの注意点

金利負担が非常に低い銀行ローン、車の購入でお金を借りるならこれにしようと思う方もいらっしゃいますが、注意点がいくつかあります。

ひとつ目は手間です。最近はネット完結型のマイカーローンが増えていますが、金融機関によっては平日日中に複数回店舗まで足を運ばなければなりません。さらに源泉徴収票など書類を用意する必要も出てきます。


ふたつ目は審査の厳しさです。完済まで車を担保として差し出す残クレなどディーラーローンに比べると審査が厳しいのでお金を借りられない可能性があります。

最後みっつ目は金利変動リスクです。銀行など金融機関ローンは変動金利を採用していますので、情勢によっては毎月の返済額、総返済額が増えてしまいます。

これらの条件を許容できるのであれば、銀行ローンも選択肢となり得るでしょう。

残クレは「最後の砦」

銀行ローンの手続きが面倒、手続きしてみたけど審査に通らない、という場合にはディーラーが提供している残クレは車購入の希望になり得ます。予算をオーバーするなら諦めれば良いと思われるかもしれませんが、どうしても車が欲しい人も一定数います。そういった人たちに対しては非常に良い商品である、と言えるでしょう。

<文/宇野源一>

【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801
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