たびたびSNSで話題にのぼる出産費用問題。2023年より出産にかかる費用負担軽減のため、公的医療保険から出産時に1児につき50万円が支給されるようになった。
地方都市では稀に“お釣り” がくることもあるが、東京都で無痛分娩などを選択した場合、50万円という大金を支給されても決してじゅうぶんではないのが現実だ。
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そんななかでSNSでは「出産費用は男性が全額負担するべき」「夫婦の子なのだから折半」などと議論が白熱する。家庭ごとに事情が異なるため、“正解がない”テーマといえるが、当事者に話を聞かせてもらった。

無痛分娩に反対する夫に「出産費用を半分払うから好きにさせてほしい」と提案


「私はあり派です」と話してくれたのは、本村レミさん(28歳・仮名)だ。去年、彼女は第一子を出産したが「完全折半でした」と話す。

「夫やその家族は『自然分娩で産んでほしい』という考えで、『出産の痛みを感じることが大切だ』みたいなことを言ってましたね。ただ、私は絶対に無痛分娩で産みたいと思っていました」

レミさんは周りの出産経験者の意見を聞いて「自然分娩は絶対にありえない」と考えており、大好きな夫の意見とはいえ、自然分娩には首を縦にふれなかったそうだ。

「いつもは喧嘩もしないのに、結構揉めてしまって。どうしても嫌だったので、最終的に『自然分娩で産むことを考えたら、怖くてストレスがえぐい。出産費用を私も半分出すから好きにさせて欲しい』とお願いしました。当初は旦那が全て出す予定でしたが、無痛分娩だと、確かに金銭的負担は大きいと思って……」

夫は「そこまで言うなら」とOKした。レミさんは「働いていて良かった」と思ったそう。

「私が専業主婦で貯金ゼロだったら、この選択肢もなかったかと思うと怖いですね(苦笑)。
共働きに加えて、独身時代の貯金がおそらく旦那よりあるので、この提案が出来ました。助成金も出るし、最悪全額払っても大丈夫だったけど。折半で提案してOKしてくれたので良かったです」

「入院して休んでたのは君」出産費用を半分請求してくる夫


“出産費用”は誰が払うのか?「入院して休んでたのは君」出産後、費用を請求してくる夫にア然
※写真はイメージです
「出産費用が折半なんてありえないです!旦那の口座から自動で引き落としにしてくれればいいのに」と声を荒げて話すのは、藤田まみさん(28歳・仮名)だ。

まみさんは、出産費用は当然、夫が出すものだと思っていたが、出産後に「普通に半額請求されました」と真顔で言う。

「1ヶ月検診が終わった頃でしょうか。普通のテンションで病院の領収書を見せられたんです」

まみさんは「はい」と受け取ると「半分でいいよ。いつくれる?」と聞いてきたようだ。

「話し合ってはなかったものの、旦那が払うと思ってました。『なんで?』と聞くと『入院したのは君じゃん!』と。いやいや、おかしいでしょう? と微妙な表情でいると、『病院で休んでいたのは君じゃん!半分も払う俺って優しくない?』と……。出産なのに“休んでいた”とは一体どういう解釈なのか、理解に苦しみました」

夫の主張に対して、強烈に違和感を覚えたまみさん。だが、夫の勢いは止まらない。

「今回の出産費用だけではなく、今後も教育資金は『全て割り勘にしょう!』と言うのです。
私はもともと旦那より手取りが少なく、今は産休を取っています。それなのにこれからずっと割り勘っておかしくないですか……? それなら私に給料を渡してもらって、ちゃんと家計簿つけたいのに、それも嫌だって言うし」

さらに夫は育児に参加することは少なく、「泣いてるよ」「おむつ濡れてるよ」などと、まるで他人事なんだとか。

「彼からしたら『半分も出してやってる』っていう感覚なんでしょう。子供が生まれる前までは、気にならなかったけど、こんな変な価値観の人だと思わなかった。最近は、この人と結婚してよかったのか、自問自答しています」

「高収入だから全額出してくれるはず」とあぐらをかいていた


未婚のシングルマザーである筆者(吉沢さりぃ)も、出産費用は折半だった。

妊娠初期から険悪なムードが漂い、とても記事のネタにできないような大喧嘩の末の別れだったので、出産に関しては、金銭的なこと以外には本当に何もしてもらっていない。

ただ、安く見積もっても、年収は筆者の10倍以上もある人だったから、出産費用ぐらいは全部出してくれると思って、あぐらをかいていたのは事実。

いざ蓋を開けてみれば、「半分しか払いたくない」と言われ、さらに無痛分娩であることにも不満を抱かれ、挙げ句の果てに、筆者が病院の領収証に不正して「請求額を水増ししているのでは?」という疑いまでかけられた。あまりの衝撃に、大きなお腹を抱えて大横転しそうだったのを今でも覚えている。

おかげさまでメンタルめっちゃ強くなりました!今ではいい思い出(?)です。

この話をすると「別れているのに半分出すって、いい奴じゃん!」と男友達は言い、「なんで全部出してくれないの?」と女友達は言う。男女間で出産費用に対する考え方は違うんだなぁと、改めて感じるのだった。


<取材・文/吉沢さりぃ>

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720
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