毎日ちゃんと歯磨きしているから大丈夫——そう思っていませんか?
実は、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れ、つまりお口の中の汚れのおよそ40%を取りきれず、残ってしまうといわれています。歯科の現場において、「フロスや歯間ブラシを使っている人」と「使っていない人」の口内では、10年後に明確な差が出ているのが事実です。


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今回は歯科医が、“フロス・歯間ブラシをしない人が後悔する理由”と“正しい使い方”を紹介します。

「毎日磨いているのにむし歯ができる」その理由は“歯と歯の間”にあるかも

歯医者が断言!“フロス・歯間ブラシをしない人”が10年後に後悔するワケ
歯垢を染め出すと、歯間に歯垢が溜まっているのがわかる
歯ブラシの毛先は、どんなに細くても歯と歯のすき間の汚れには届きません。その結果、プラーク(歯垢)が残り、むし歯や歯周病の原因となります。

歯の表面はきれいに磨けていても、歯磨きで落とせるのは全体の約60%。残りの40%は“フロス・歯間ブラシの領域”です。 歯と歯の間にできたむし歯を治療するには、2本の歯を削る必要があり、詰め物では対応できず、被せ物や神経の治療、さらには抜歯が必要になることもあります。

“フロス・歯間ブラシをしない人”が10年後に後悔する3つの理由


歯医者が断言!“フロス・歯間ブラシをしない人”が10年後に後悔するワケ
歯と歯の間に歯石が溜まっている
歯間清掃は口内環境に大きな影響を及ぼします。歯間清掃を行わないと後悔する理由は大きく分けて3つあります。

①歯石がたまりやすくなる……歯と歯の間に残った歯垢はやがて歯石となり、歯周病菌が繁殖しやすい環境をつくります。歯石があると歯周病はさらに進行しやすくなります。

②口臭の原因になる……歯垢の蓄積は口臭の原因にもなります。特に歯周病由来の口臭は独特で、悩みの種になることも多いです。口臭が気になる方には、歯間清掃の習慣化は不可欠です。

③歯を失うリスクが高まる……歯周病は自覚症状がないまま進行し、気づいたときには抜歯が必要になることもあります。
特に歯間の根元部分にできたむし歯は、抜歯のリスクが高くなります。

こうしたトラブルから歯を守る最大の予防策が、“歯間清掃=フロス・歯間ブラシ”なのです。

歯間清掃を毎日する人の口内環境は良好


歯医者が断言!“フロス・歯間ブラシをしない人”が10年後に後悔するワケ
歯と歯の間に大きなむし歯ができている
歯科医が診てすぐにわかるのは、フロスや歯間ブラシを習慣にしている人の歯茎は引き締まり、血行も良く、健康的な色をしているということです。 歯茎の健康は、歯の寿命だけでなく、口臭予防や第一印象、さらには健康寿命の延伸にも関係しています。

歯周病菌やむし歯菌は、つるつるした歯の表面では繁殖しにくく、歯と歯茎の隙間や歯と歯の間など、狭い場所を好んで繁殖します。

「めんどうくさい」「続かない」人へ――歯科医が教える続け方のコツ


毎日の歯間清掃が面倒で続かないという声も多く聞かれます。そんな方におすすめの続け方をご紹介します。

・寝る前だけでもOK。1日1回「リセットタイム」をつくりましょう。
・お風呂に入りながらゆっくり行うのもおすすめ。小さな鏡とフロスをお風呂場に置いておくと便利です。
・初心者には、柄付きの「ホルダータイプ」のフロスが使いやすくておすすめです。
・歯間に入るようであれば、歯間ブラシの方が扱いやすい場合もあります。

理想は毎回の歯磨き時に鏡を見ながら丁寧に行うことですが、まずは“完璧”を目指さず、「毎日少しずつ」続けることが大切です。


一度習慣化すると、歯間清掃をしないと口の中がスッキリしない、口臭が気になると感じるようになり、自然と続けられるようになります。初めて歯間清掃をする方には、奥歯の歯間を掃除した後のフロスや歯間ブラシの臭いを嗅いでみることをおすすめします。

きっと驚くような臭いがするはずです。しかし、継続して清掃を行えば、その臭いもなくなっていきます。

フロスか歯間ブラシか

デンタルフロスか歯間ブラシか、どちらを使うべきか悩むかもしれません。私は、基本的に歯間があいているならば歯間ブラシをおすすめしています。

フロスは、使用法が正しければ歯間ブラシよりも高い清掃効果があるのですが、使用法にコツがいるため、うまく使用できない人がいるためです。とはいえ、歯科医院で習い、自分でも練習することでフロスもうまく使えるようになります。

フロスを使ったほうがいい人
・歯間が狭い人、特に若い人や、歯並びにガタつきがあるなどスペースのない人はフロスを使いましょう。
・歯と歯の接触面の物詰まりがよく気になる人 食事のたびに物が詰まって歯が押されているような感じが気になる人はフロスの使用がオススメです。

歯間ブラシを使ったほうがいい人
・歯間の隙間が広い人、歯ぐきの下がりがある人、歯並びの関係で隙間があいている人は歯間ブラシを使いましょう。
・ブリッジ(連なっている被せ物)や矯正器具をしている人 糸が通らない部分には歯間ブラシを使用しましょう。

歯間ブラシかフロスかは、一度歯科医院で相談をしてから決めると、自分にとって最良の選択ができます。
お口の中でも、フロスしか入らない部分や歯間ブラシを使った方が良い部分があります。また、歯間ブラシにはサイズがあり、部分によってはサイズを変える場合もあります。

歯間清掃は食べカスを取るのが目的ではない


歯間清掃は、食べ物の詰まりを取るためのものではなく、歯と歯の間の歯面をきちんと磨くことが目的です。フロスを使う際は、歯と歯の間に糸を通したあと、片側の歯の、歯と歯茎の間(歯周ポケット)に糸を沿わせて入れます。そのまま、こするようにして動かし、歯面の汚れを落とします。

次に、もう片側の歯にも同様にフロスを当てて清掃を行えば、その歯間部の清掃が完了したことになります。

歯医者が断言!“フロス・歯間ブラシをしない人”が10年後に後悔するワケ
フロス
歯間ブラシは、歯と歯の間に入れたら、片側の歯面に沿わせてゴシゴシと動かします。もう片側の歯に沿わせるように角度を変えて同様に清掃をすることで一部分が磨けたことになります。

歯医者が断言!“フロス・歯間ブラシをしない人”が10年後に後悔するワケ
歯間ブラシ
フロスも歯間ブラシも勢いよく入れたり、無理やりいれると歯茎を傷つけてしまいます。ゆっくりと入れて動かすのがポイントです。また、1つの歯間を清掃するたびに、付いた汚れを洗い流す、ふき取るなどすると、より清潔にケアを行うことができます。

歯間清掃は、ただ歯と歯の間に通して抜くだけでは意味がありません。使用法になれるまで鏡を見ながら練習をしましょう。


歯磨きよりフロスが重要?歯科医が伝えたいこと


歯間清掃は「物詰まりを取るためのケア」ではなく、「歯を守るための最低限のケア」です。 10年後に“歯を失って後悔する人”と“健康な笑顔を保っている人”の違いは、たった1日数分のフロス習慣かもしれません。

「フロスをしない=歯を失うリスクを上げる」と断言できるほど、歯と歯の間のケアは重要です。 未来の自分のために、今夜から1本のフロスを始めてみませんか? 10年後、きっと「やっておいてよかった」と思えるはずです。

<文/野尻真里>

【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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