近年、飲食業界で問題となっている無断キャンセル問題。業界側もネット上での事前決済やデポジット(預り金)、申し込みサイトでの無断キャンセル時の補償ありのプラン、予約者の情報が管理される予約管理システムなど、さまざまな対策を講じており、こうしたサービスを利用する飲食店も増えている。

「ふざけんな!」予約の“1時間半後”に来店した客が“自動キャ...の画像はこちら >>
 実際、こうした対策によって無断キャンセルは減ってきているが、一方で困るのは予約した時間通りに来ない客。早く来てもらう分には空いていれば案内も可能だが、時間通りに来ない客のために座席を確保しておくと、店の売り上げは減少してしまう。

予約時間に来ない“遅刻客”に対する店側の苦悩

 そのため、最近は一定時間を過ぎても来ない場合は、自動的にキャンセルとする店もある。松山晴紀さん(仮名・39歳)が勤める居酒屋チェーンも、そうした自動キャンセルを採用しているが、事前に遅れる旨の連絡などがあった場合は可能な範囲で対応している。

 ただし、なかには事前連絡もなしに大幅に遅れて来店する迷惑客も……。キャンセルとなったことを説明しても必ずしも納得してもらえるとは限らない。

「8名様のグループで金曜の夜7時から予約でしたが、時間になっても現れませんでした。10分過ぎた時点で申し込み時にご登録いただいた電話番号にかけてもダメ。メールアドレスもわかっていたので、そちら宛に『すでにご予約の時間が過ぎております』といった内容のメールを送りました。そして、自動キャンセルとなる30分が経ったため、もう一度電話とメールをしましたが、結局先方と連絡が取れなかったため、マニュアルに基づいてキャンセル扱いとしました」

 ちなみに松山さんが勤める店では、よほどの大人数でもない限り、無断キャンセルされてもキャンセル料の請求は行っていない。

予約から1時間半後に突然来店…

 予約席の札を外して他の客を案内したが、なんと夜8時20分に自動キャンセルとなったグループが何食わぬ顔して「予約した○○ですけど」と現れたのだ。

 しかし、対応したアルバイト店員が名前を聞いても、予約していたリストに名前が見当たらず、何時からの予約か確認すると、予約者本人と思われる20代半ばくらいの男性が「7時」とぶっきらぼうな口調で答えたとのこと。そこでキャンセル扱いになったことを告げた途端、騒ぎ始めたそうだ。

「私は本来、本部の人間なのですが、その日は人手が足りずに店長代理として入っていたんです。
レジ前でウチのスタッフに詰め寄っている人がいて慌てて間に入りました。そこで、30分過ぎても来なかった場合はキャンセル扱いになること、その旨が申し込みのページにも明記されること、そして電話・メールをしても連絡が取れなかったことを伝えたのですが……」

キャンセルを知った途端…“まさかの逆ギレ”

 予約時間から大幅に遅れてもテーブルに空きがあれば、予約ではない一般客扱いでの案内が可能だったが、この日は金曜日。店内は混んでおり、8名グループを案内するには待ってもらうしかなかった。

「もちろん、そのことも説明したのですが納得してもらえず、『ふざけんなよ!今すぐ案内しろよ』と逆ギレしてきたんです」

 似たようなトラブルは過去に何度か経験していたようで、「内心『またか……』とうんざりした気分になりました」と松山さん。

 しかし、ここで思わぬ助けが入る。グループのほかの男性が「おい、7時から予約だったって聞いてねぇぞ!」と予約した男性に言ったのだ。

「30分の自動キャンセルは本当に知らなかったらしく、電話に関しては登録番号以外からの着信は拒否設定。まあ、着信拒否については通話中のような『ツー・ツー』という音が聞こえたのでそうかなと思っていましたが、メールに関しては『確認してなかった』とのこと。ただ、本人は時間に遅れても『店に行けばなんとかなる』と思っていたようです」

友人たちが何度も謝罪することに

 結局、予約した男性はグループの全員から責められ、最初に彼を咎めた友人と思われる人物が「知らなかったとはいえ、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。キャンセル料が発生するならお支払いします」と申し出たとか。

 キャンセル料が発生しないことはその場で伝えたが、その人物は「悪いのはこちらですから待たせていただきます」と言い、席が空くまで30分近く待っていたそうだ。

「たぶん、こちら気を遣ってくれたのでしょう。飲み食いした後のグラスやお皿を片付けやすいようにテーブルの端にまとめておいてくれて、最後に支払いを済ませて店を出るときも頭を下げてきたので、逆にこっちが恐縮しちゃいましたけどね。
ただ、予約した本人だけはバツの悪そうな表情をしていました」

 どうしても間に合わない場合は仕方ないが、大幅に遅れそうな状況で何の連絡も入れないのは規則以前の問題。遅れる場合は一言連絡を入れるのが最低限のマナーではないだろうか。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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