画像加工が当たり前になり、SNS上では誰かの容姿批判が繰り広げられる現代。
自分の素顔をさらけ出すなんてもってのほか、コンプレックスを持っている人の方が多いでしょう。


左右の視線が合わない状態である「斜視」を生まれつき抱えるしゃしみさんは、かつてコンプレックスだった斜視をあえて武器にして、SNSで発信活動を行っています。

「斜視あるある」を中心にした投稿はたちまち話題を呼び、中にはTikTokで450万回以上再生されたものも。

今回は、しゃしみさんが斜視をチャームポイントと捉えられるまでの苦労や、人生のターニングポイントについて伺いました。

「斜視あるある」がSNSで大反響。「目、どこ向いてんの?」蔑...の画像はこちら >>

小学生時代に斜視を指摘されてコンプレックスに

ーーしゃしみさんは、どういったタイプの斜視なのでしょうか。

しゃしみさん:私は間欠性外斜視といって、基本的には片目が外側に向いているけど、目に力を入れればまっすぐ向けるタイプの斜視です。

自分が斜視だと気づいたのは、小学校低学年の頃でした。同級生に「目が変だよ」と言われたので親に話したところ、斜視であることを知らされました。

親としては、別にわざわざ言うことでもないと思っていたみたいです。幼少期に斜視について説明しても、理解できないと思いますし。

でも、小学校で「目、どこ向いてんの」「気持ち悪い」と言われるようになってからは気にするようになりましたね。

ひどいじめを受けたり、塞ぎ込んでしまったりとかではないですが、コンプレックスになってしまいました。

ウィンクやポーズで斜視を隠していた学生時代

ーー思春期に入ると、とくに女性は自分の見た目を気にする人が多いと思いますが、しゃしみさんはいかがでしたか。

しゃしみさん:思春期って、体型や顔のかわいい・かわいくないとかも気になり始めるじゃないですか。目って顔の中でも一番気になるパーツですし。


だから、写真を撮るときは斜視がバレないようにウインクしたり、前髪で目を隠したりしていました。

そのとき流行ったポーズでもありますが、わざと下向いてピースすることも少なくありませんでした。人と話すときも目を合わせられなくて、わざと視線を外していました。

人からの見られ方は、ハタチくらいまでずっと気にしていましたね。

ーー斜視には治療があると聞いたことがありますが、しゃしみさんは行いましたか?

しゃしみさん:私は大人になってから眼科に行ったところ「再発の可能性があるし、正直治らないと思う」とお医者さんに言われて、治療はしていません。

子どもや軽度の人は、プリズムメガネというメガネを使用して治療するそうです。メガネで治らなければ、手術で直す方もいらっしゃいますね。

友人が褒めてくれて斜視の捉え方が変わった

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斜視の時
ーー斜視をコンプレックスに思わなくなったきっかけを教えてください。

しゃしみさん:ハタチになってから、高校時代の友だちに斜視であることをカミングアウトしたんです。「私、斜視なんだけど目がずれているときある?」って。

友だちは「分かってたよ」「気づいてたよ」と言いつつ「かわいいと思うけどね」と褒めてくれたんです。

そのときに、斜視を気にしてたのは自分だけだったんだと気づきました。

そこからすぐに斜視を気にしなくなったわけではありませんが、考え方が徐々に変わっていきました。


ーー具体的に、どのような変化がありましたか。

しゃしみさん:自分で斜視について調べるようになりました。それまでは、斜視のことを調べても落ち込むだけだと思って、調べるのを避けていたんです。

そうしているうちに、自分の場合は斜視をコントロールできることが分かりました。目に力を入れると、斜視じゃなくなるんです。

斜視をコントロールするようになった

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左は斜視の時で、右は斜視をコントロールしている時
ーーすごい発見ですね。

しゃしみさん:みんながみんなコントロールできるわけではありませんが、私はそういうタイプでした。

そこから、鏡やスマホ動画で、自分の目が普段どうなっているかを研究するようになりました。

たとえば、テレビを見ていたり、ぼーっとしていたりすると斜視になりやすいことが分かったり。「じゃあ、勉強しているときはどうかな」などと、遊びながら研究しました。

なので今は、人とお話するときや写真を撮るときは、自分で視線をコントロールしています。そのおかげか、私が斜視であることを知らない人もいます。

このあたりから自信がついて、斜視がチャームポイントになるんだと感じ始めました。


TikTokを始めた理由

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TikTokを始めた理由
ーーTikTokで活躍するようになったきっかけを教えてください。

しゃしみさん:もともとTikTokで動画を見るのが好きだったこともあり、自分のキャラを生かして、みんなに元気を与えられる存在になりたいという漠然とした思いがありました。でも、何の動画をあげたらいいかわからなくて。

とりあえず、流行りの音源で顔芸をおもしろおかしくやった動画をあげたんですよね。そしたらコメント欄で斜視のことを突っ込まれて。

でも、悪いコメントではなくて、盛り上げてくれるような温かい内容でした。

そこから、斜視をさらけ出しながらやっていこうと思いました。

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コメント欄
ーー「斜視になりやすい時まとめ5選」など、知らないことばかりで勉強になります。動画にはどのような反応が寄せられますか。

しゃしみさん:実は、斜視を知らない人もけっこういるんですよね。なので、コメント欄で「知ることができてよかったです」と言ってくださる方は多いです。

あと、斜視のお子さんを持つ親御さんからのコメントもよく来ます。逆に、自分の親が斜視ですっていう方もいて「親子で投稿を楽しみにしてます」という嬉しい反応も届きます。


斜視を言い訳にして内気になるのはもったいない

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自作のキャラクター
ーーしゃしみさんのお部屋に飾られている、かわいい動物のイラストは何でしょうか?

しゃしみさん:これは、私が描いている斜視のキャラクターのイラストです!

あるとき、ライブ配信中に斜視のリスナーさんから「斜視のかわいいイラストを描いてほしい」とリクエストがあって、描いてみたんですよね。

もともとイラストを描くのは得意ではなかったのですが、作成してみたらウケて。LINEスタンプやTシャツ、ステッカーなども作るようになりました。

コンプレックスを生かしたキャラクターって、すごくかわいいと思うんです。

ーーしゃしみさんのようなかわいらしい女性が斜視について明るく発信していると、同じく斜視の方々は自信が持てるのではないでしょうか。

しゃしみさん:ありがとうございます。斜視を言い訳にして内気になっちゃうのは、もったいないと思っていて。

たまに「しゃしみさんは斜視だけど、もともとかわいいから私とは違う」みたいなネガティブなコメントが来るんですけど「斜視でもかわいくなれるよ!」と思う反面、気持ちも分かるんです。

普段はポジティブに発信していますが、実は私、ぜんぜんネガティブで。

ーーそうなんですか?しゃしみさんと話していると、クラスの真ん中で笑っている明るい女の子という雰囲気を感じます。

しゃしみさん:学生時代は、ありがたいことにそうでした(笑)。

でも、私は斜視以外にもコンプレックスがたくさんあります。
落ち込むこともあるし、ネガティブになってしまう気持ちも理解できます。

でも、それで「斜視だから彼氏ができない」「自分はかわいくない」と考えるのはもったいない。好きなメイクも、どんどんすればいいと思いますよ。

コンプレックスはチャームポイントになるんだよってことは、引き続き動画で伝えていきたいですね。

<取材・文/松浦さとみ>

【松浦さとみ】
韓国のじめっとしたアングラ情報を嗅ぎ回ることに生きがいを感じるライター。新卒入社した会社を4年で辞め、コロナ禍で唯一国境が開かれていた韓国へ留学し、韓国の魅力に気づく。珍スポットやオタク文化、韓国のリアルを探るのが趣味。ギャルやゴスロリなどのサブカルチャーにも関心があり、日本文化の逆輸入現象は見逃せないテーマのひとつ。X:@bleu_perfume
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