フワちゃんの復帰の場について、さまざまな噂をされていたが、プロレスラーとして表舞台に立つことを選んだと知って、私は「その手があったか」と膝を打った。
過去の不祥事を飲み込む「プロレス」という舞台
プロレス界の度量は大きい。「悪名は無名に勝る」という下世話なまでのバイタリティーは、プロレスの最もプロレスらしい部分だ。また、どんな者でも受け入れることができる包容力も、プロレスが持つ際立った魅力の一つだと思う。これまでも、多くの人間が不祥事の後の復帰の舞台として、プロレスを選んできた。狂言師の和泉元彌は、2000年初頭ワイドショーで激しいバッシングの対象になっていた。彼は「和泉流二十世宗家」を名乗っていたが、能楽協会はそれを認めず、協会側と和泉家の対立が表面化。和泉家は「和泉流二十世宗家和泉元彌」を商標登録出願した。
その結果、和泉元彌と母・節子さんは能楽協会を除名処分となった。除名の理由として、和泉元彌のダブルブッキングや、公演のドタキャンや遅刻が報じられたことが挙げられる。和泉親子は世間から悪者と見られるようになった。
和泉元彌が選んだ“プロレス復帰”の道
その騒動が収まりきっていなかった2005年、和泉元彌はプロレス団体「ハッスル」大会に参戦した。過去のバッシング報道を逆手に取って遅刻したうえに、ヘリコプターで登場。試合では、必殺技「空中元彌チョップ」で勝利を収めた。母の節子率いる「セッチー鬼瓦軍団」も登場。「セッチー鬼瓦せんべい(6枚1000円)」は当日10分で完売した。
イメージ刷新で新たな転機に
プロレス出場について、和泉元彌は「『プロレスをナメている!』とか色々言われましたが、試合後は最高なエンタメだと1万5千人の観客の皆様から拍手を頂きました」「いろいろな意見や見え方もあったと思いますが、なんとなくその後から『和泉さんにしかできない、何か楽しいことをやってくれるよね』という感じのことは言われるようになりました」と述べている。当然、この試合にはマスコミが殺到し、大変話題になった。プロレス参戦によって彼に対する世間のイメージが変わり、“新たな転機”のひとつになったことは確かだろう。
泰葉の“ハッスル参戦”も大きな話題に
2008年、タレントの泰葉がハッスル参戦した時も大きな話題になった。2007年に夫の春風亭小朝と離婚後、彼女はブログで小朝を「金髪豚野郎」と書き、ドメスティックバイオレンスを受けていたと告発。ワイドショーを大変騒がせた。そして、2008年の大晦日の『ハッスル・マニア』に出場。対戦相手を、回転“海老名”固めで破った。マイクパフォーマンスでは「いっ平、お姉ちゃんは勝った!お前も負けるんじゃないぞ!」と絶叫し、リング上で自身の曲「お陽様よほほえんで」を熱唱した。
このプロレス参戦が、彼女にとってどんな意味があったかはよくわからないが、この当時、彼女の湧き上がる感情を受け止められる分野は、プロレスしかなかったのではないだろうか。しかし、参戦後の彼女の道のりは平坦ではなく、10年後には自己破産、さらにその後は精神的な不調など、騒動はその後も続いた。
暴露本作者・中牧は蝶野正洋とも対戦
また、ベストセラーとなった、桑田真澄の暴露本『さらば桑田真澄、さらばプロ野球』(1990)を出版した中牧昭二は、1992年にプロレスラーとしてデビューした。運動用具メーカー勤めだった中牧は、暴露本を書いた以上は、会社にとどまることはできなかっただろう。
1997年には、新日本プロレス東京ドーム大会に参戦。ドームの大舞台で蝶野正洋との対戦を実現させた。プロレスラーとして大きく花開いたと言ってもいいと思う。
現在のプロレスは明るくメジャーな世界に
このように書き並べると、プロレスがスキャンダルを利用した少し影ある分野だと感じるかもしれない。しかし、現在のプロレス、特に女子プロレスは非常に夢のある、明るくメジャーな世界だ。日本人女子レスラーのアスカ、イヨ・スカイ、カイリ・セインらは、世界最大のプロレス団体WWEで活躍する世界的なスーパースター。間違いなく大きなお金を稼いでいるだろう。
イヨ・スカイとカイリ・セインは、フワちゃんが所属するプロレス団体「スターダム」出身。フワちゃんは英語のバイリンガルだから、海外でも活躍しやすいだろう。まぁそれは気が早い話で、まずは日本で実力を磨く必要があるけれど。
フワちゃんの“プロレス復帰”が最適解だと感じる理由
少し前に、プライベートのフワちゃんをしつこく撮影する者に、彼女がキレる動画が出回っていた。フワちゃんが、ネットメディアによる「オルタナティブ芸能界」に復帰したとしても、従来のように活躍する姿をどうしてもイメージすることができない。また、例えばユーチューバーとして復帰しても、従来の(人が他人に払うべき最低限の)敬意を取り戻すことができないように思えてしまう。
プロレスの方がずっと活躍する姿が想像できる。プロレスラーとしてスターになれば、それこそ気安く接することのできないオーラを身に付けることだろう。フワちゃんは、唯一にしてベストのチョイスをしたように感じる。
もちろん、プロレスラーは本当に厳しい仕事だ。私は10年以上にわたって、毎月1回、レジェンドレスラー達にインタビューする仕事をしている。彼らが体に負ったダメージの深刻さを目の当たりにして、胸を痛めることも多い。
間違いなく命がけの仕事だ。フワちゃんの武運を祈らずにはいられない。
文/椎名基樹
【椎名基樹】
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』、週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』などを担当。KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。Xアカウント @mo_shiina
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