現在、40~50代でバブル崩壊後からリーマンショックなど就職の難易度が高かった時代に社会人となった就職氷河期世代。その支援の議論は今年の前半は活発だったが、いつの間にか静かになった。本稿ではその現状について述べる。
■鳴りを潜めた就職氷河期世代の支援策
コメを含めた物価高対策の話題は続いているが、年末年始から春くらいまで続いていた就職氷河期世代支援の話題はめっきり聞かなくなった。衆院選前くらいからは、どちらかというと外国人問題の話題が熱を帯びているように感じる。もちろん、就職氷河期世代の支援が行き届いたわけではない。一部からは「就職氷河期世代の困窮イメージそのものが間違いなのではないか」という声も上がっているが、仕事や金銭面に困っている40~50代が実際は誰もおらず、政府が支援をやめたということでもない。
筆者が経営する求人サイトサービスや人材紹介サービスに登録する40~50代の状況にも、就職氷河期世代の報道イメージそのままかはさておき、上や下の世代とは違った苦しさがある。
今回は、政府の就職氷河期世代向け支援は現在どうなっているのかと、就職氷河期世代で転職を目指している人の実情について述べたい。
■厚労省の特設サイトもひっそり変更
実は厚生労働省が運用していた就職氷河期世代支援の特設サイトが、10月1日に改変されたのをご存知だろうか。9月までは風間俊介さんを起用した「就職氷河期世代活躍支援」のサイトだったものが、10月1日から「中高年の活躍支援」へと対象が広がったのだ。ちなみに2024年9月以前は佐々木蔵之介さんが起用されており、こうした広報キャラクターとデザインの変更はあってもずっと「就職氷河期世代活躍支援」だった。
10月から新たに広報キャラクターに起用されたのは俳優の岡部たかしさんである。40代前半の風間さんより、50代前半の岡部さんのほうが「中高年」のイメージにも「就職氷河期」のイメージにも、より適しているような気がする。
しかし、岡部さん出演の中高年の活躍支援スペシャルムービー「あなたに本気の支援があります」篇が「中高年の活躍支援」特設サイトと支援の活用を後押しするのかは、個人的に疑問だ。むしろムービーの中で、岡部さん以外の登場人物が支援の活用をいったん躊躇する姿がとてもリアルに映る。
ちなみに「中高年の活躍支援」特設サイトで案内している支援内容は、「就職氷河期世代活躍支援」特設サイトの時と変わらない。お馴染みのハローワークでの仕事の斡旋、ニートなどを含めた就労に悩みを抱えた15~49歳の「若者」にカウンセリングや職場体験などを提供する地域若者サポートステーション(サポステ)、この他、家庭の立て直し支援や、住まい支援、家族支援、ひきこもり支援などである。
これらの支援も、求める人に合った一つ一つの支援は効果がありそうだが、就職氷河期世代や中高年の実際の悩みにどれくらい沿ったものなのかは疑問だ。様々な支援をとにかく一箇所に集めただけで、実際の悩みとはずれてしまっているような気がしてならない。
■非正規雇用でなくても将来不安が消えない氷河期世代
このように、必ずしも就職氷河期世代の実際の悩み解決につながらなさそうな支援を、国が公費を使ってかなり幅広く提供している状況も、「就職氷河期世代が困窮しているイメージが間違っている」という声が上がる遠因になっていそうだ。もちろん、就職氷河期世代なら誰もが苦しんでいるなどということはなく、 筆者が経営する求人サイトサービスや人材紹介サービスでも、すぐに転職先が見つかり、収入面での問題もない就職氷河期世代は多くいる。就職氷河期世代を取材したいメディアの依頼で広報担当が協力者を探した際にも、「そこまで就職で苦労したわけではない」と断られることが多かったという。
経歴上では非正規雇用が続いている人でも、配偶者の転勤に合わせた結果や、農業などの本業を優先した結果など「非正規のキャリアで悩んではいない」という人物が一定以上いる。
データで示せるわけではないが、現在の40、50代は、それ以前の世代である現在の60代以上に比べて、同じ職種であっても転職回数が多いように感じる。業界や職種の経験自体は長くても、1つの職場で長く働いた人が減っている。また、まったく異なる業界・職種への転職経験がある人も多く、大きく違う職種への転職が複数回ある人もいる。
終身雇用・年功序列が薄らいだ時代になっていたとはいえ、こうした頻繁な転職や異業種転職の傾向は、順調な経歴ではなかったことを物語っており、給与も上がりにくかったと予想できる上、このあとの転職でも決して有利にはならない。
例えば、基本のキャリアは介護系なのだが転職歴が10回を超え、さらにコンサルティングや不動産などの異業種、果てはファンドや芸術系まで含んだキャリアの人物を見たことがある。ほかに建設業やシステムエンジニアなどまったく異なる職種を渡り歩いた上で、娯楽業に就いたものの、コロナ禍以降の業績低迷で将来への不安を抱えた人物もいた。
■就職氷河期世代が困窮シニアに変わる未来
このように、筆者たちが目にする就職氷河期世代には、仮に正社員でもそれまでの経歴が安定せず、現在の雇用や賃金、将来(特に老後)についての不安を抱えている人が多い。反対に「非正規雇用から抜け出せない」という人や、ニート・ひきこもり状態の人を目にすることは少ない(単に転職市場で目にすることが少ないだけかもしれないが)。だからこそ「中高年の活躍支援」特設サイトとのズレを感じる。公的な支援は必要だが、どんな支援が適しているかというと難しい。
例えば、仕事や収入の安定への希望はあっても、積極的に新しいスキルを学んで好条件での就業を目指したいわけではなく、また単に知識を身につけても実務経験がなければ転職時に評価されにくいため、教育機会の提供などが効果的とは言いにくい。
しかし、このまま就職氷河期世代が老後を迎えれば困窮するシニアが大量発生する可能性が高いのも事実。職種による差はあるものの、現在即戦力として人手不足を埋めている60代以上と比べると、就職氷河期世代で同レベルのスキルや経験を持つ人材はかなり減少している印象がある。
最前線で活躍できる就職氷河期世代が少ない現状を放置すると、本人たちの老後の収入が減るだけでなく、企業の年齢構成がより高齢層と若手のみという歪な状況になってもおかしくない。そのためにはやはり、真のニーズに沿った氷河期世代支援がこれからも必要だと思われる。
【中島康恵】
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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