しかし、大谷どころか、野球のやの字も知らなかった高齢者までもがロサンゼルス・ドジャースを語る日がくるとは驚きだ。さすがの私でも予想できなかった展開だ。
※本記事は、江本孟紀著『長嶋亡きあとの巨人軍』より適宜抜粋したものです。
アメリカの草刈り場になってしまうのか
一方で、日本のプロ野球に目を向けてみよう。それぞれのチームを応援するファン同士では盛り上がっている。だが、ワイドショーで門外僕のコメンテーターがあれこれ議論するなんてことにはなっていない。MLBの話のほうが身近に感じて、国内の話はそっちのけ……。そんな状況を見るにつけ、野球界はどんどん廃れていくんじゃないのかと心配になってくる。
大谷に期待したいのはやまやまだが、彼の主戦場は、はるばる遠いアメリカである。華々しい活躍はなおのこと、巨額の契約金や年俸についても、毎日こと細かに報道されている。そんな姿に憧れた日本人選手がMLBに流出する事態は今後も続くだろう。
スター選手がこぞってアメリカに行くのは、日本のプロ野球にとって大きな損失だ。このままアメリカの草刈り場になってしまうばかりでは、あまりに寂しいではないか。
「MLB挑戦に失敗した選手」の処遇を考える
だからこそ考えてみたことがある。「MLBに挑戦した選手の出戻りを、おいそれとすぐに受け入れてはいけない」というルールを設けるべきではないか。
最近でいうと、阪神からポスティングでMLBに移籍した青柳晃洋だ。渡米からわずか半年ほどで帰国し、7月31日にヤクルトと契約した。彼は2021年、22年に最多勝利と最高勝率のタイトルホルダーだ。くわえて2022年は最優秀防御率のタイトルまで獲得したものの、続く2023年と24年は低迷していた。
そこに来ての、MLB挑戦だ。2025年1月にフィラデルフィア・フィリーズとマイナー契約を結び、招待選手としてスプリングキャンプに参加することになった。だが、阪神時代の後半に見せていた制球難は克服されぬまま、「使いものにならない」と判断されてしまった。
マイナーキャンプに合流して以降も改善する様子がなく、結果を残せないまま7月23日に自由契約の憂き目となった。青柳が通用するかは、正直厳しいと見ていたので、シーズンの途中で帰国したことにはまったく驚いていない。
だが、情けないと思ったのは、ヤクルトに入団した直後の記者会見での一幕だ。
「月10万円の給料では、家族を養えない」
これを聞いて、「この期に及んで何を言っているんだ」とため息をつきたくなった。
日本で億単位の高額年俸をもらっておきながら、こんな理由で帰国するとは……。情けないと思わないのかと、本人に問いただしたくなった。
MLB挑戦は「僕のわがまま」なのに…
9つしかないポジションを巡る競争が日本以上に激しいのがMLBだ。日本で実績を残した選手たちが次々と渡米する姿を見て、「よし、オレも」と手を挙げたくなる気持ちもわからなくはない。だが、通用しないとわかった途端にすごすごと帰国し、どこかの日本のチームに入団するパターンが多すぎないか。
こうした選手を見るにつけ、「日本のプロ野球を舐めているんじゃないのか」と思えて仕方がない。
MLBに挑戦する際の決意表明で頻出するのが、「僕のわがままで行かせてもらう」という台詞だ。一方で日本に帰ってきたときには、青柳しかり「家族を養うために帰ってきた」が、定番フレーズとなりつつある。
「おまえさんは、日本にいたときにどれだけ稼いだんだ? メジャーに移籍したときのお金だってあるだろう」
こう聞きたくなるものだし、マイナーに落ちれば稼ぎが減るなんて当然のことだ。そんなことくらい、MLBに挑戦したいと考えた時点で知っておくべき情報だ。
「上辺だけの綺麗ごと」ではなく…
「自分のわがままを球団に受け入れてもらってMLBに行かせてもらいましたが、マイナーでやるつもりはまったくありません。
自分が置かれた状況を包み隠さず公表するほうが、よほど誠実じゃないかと考えているのは、はたして私だけだろうか。
<談/江本孟紀>
【江本孟紀】
1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。
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