その活躍ぶりは今さら語るでもないが、彼らは当時のジャニーズJr.(現ジュニア)内において6人それぞれが強い属性と個性をもった、どこかアベンジャーズ的な雰囲気があった。
ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹……彼らをアベンジャーズと表現したのは、彼らには次期デビューを目指し切磋琢磨を続けるJr.界の中で、宿命のような何かを背負う6人が選ばれた感があったからだ。
「バカレア組」と呼ばれていたSixTONES
6人が最初に顔を揃えたのは、2012年に放送されたAKB48メンバーとの初共演ドラマ『私立バカレア高校』(日本テレビ系)のメインキャストへの抜擢だ。AKBとジャニーズ(当時)との共演は話題性も高かった。
しかし、彼らはその勢いのままデビューするには至らず、実際正式デビューを飾るまではまだ時間を要する。
翌年になると6人揃っての活動は、ステージや雑誌などでもパタリと見られなくなり、「バカレア組」は自然消滅したような雰囲気が漂った。
デビュー確実な雰囲気がありながら解体されていくことは、現在のジュニアにおいても珍しいことではない。
ファンは「あの6人がよかった」といった惜しい気持ちを抱えつつも、それぞれの別の場所での活躍を応援していた。
後輩グループに先を越されるかたちに
15年春、突如として6人は揃ってステージに立つ。しかも、通称ではなくグループ名を携えて。のちのインタビュー記事などによれば、ここに至るまで6人は進路や現状への悩みや疑問を退所も含めそれぞれ抱えていたという。
そんななか、やはりこの6人でやりたいと直談判し、正式なグループ「SixTONES」としての再出発が決まった。
とはいえ、群雄割拠の世界である。
2018年1月にユニバーサルミュージックの新レーベルより、King & Princeがデビューする。
当時の事務所のメインストリームともいえる王道アイドル路線が受け、デビュー曲も初週売り上げが歴代2位という大ヒットを記録。
これもあるあるだが、後輩に先を越され、しかも驚異的なヒットを見せつけられたかたちだ。
待望のデビュー曲はYOSHIKIが担当
結成から5年、ドラマ放送からは8年近い月日が流れていた。
滝沢秀明新社長のもとでの初のデビューグループ。しかし、それは単独デビューというものではなく、同じくJr.内の人気ユニットSnow Manとの2組同時デビューというかたちだった。
彼らはソニーミュージック、Snow Manがエイベックス、2組のデビューは2社同時リリースというものだった。
2組は舞台やコンサートなどでもしばしば一緒になることも多く、“スノスト”と称されることもあった。
盟友同時デビュー、友情を感じるいっぽうで直接比較されるという側面もある。
話題性も高い大型デビューではあるが、「抱き合わせ」のような印象もどうしても出てしまい、それぞれのファンの中には単独デビューのほうがよかったという声もあった。
そしてこのSixTONES待望のデビュー曲を担当するのはX JAPANのYOSHIKIだと発表されたときにも大きな話題を集めた。
彼らはロック調の曲をJr.時代から披露することも多かったため、一部のファンは『紅』のようなハイテンションな激しいロックでのデビュー曲になると想像した。
しかし、実際にお披露目されたデビュー曲『Imitation Rain』は、X JAPANの楽曲のなかでいえば『Forever Love』などを彷彿させる流麗なバラード曲という、旧ジャニーズアイドルのデビュー曲としてはある種異例の雰囲気をもつ作品となった。
デビュー前から6人の知名度が高かったワケ
冒頭で記したが、6人はデビュー前からそれぞれが何かを背負うような存在でもあった。京本政樹の息子である京本大我。田中樹の兄は元KAT-TUNの田中聖であり、森本慎太郎の兄は元Hey! Say! JUMPのメンバー・森本龍太郎である。髙地優吾は人気バラエティ『スクール革命!』の新入生オーディション合格と同時入所という存在。
髙地と松村北斗は、中山優馬と一緒にCDリリースも飾ったジャニーズJr.の4人組グループB.I.Shadowのメンバー。中山優馬、山田涼介、知念侑李と「B.I.」メンバーで結成された7人組グループNYC boyzでは紅白出場も果たすなどしたが、同グループの中島健人と菊池風磨がSexy Zoneとしてデビューしたことで事実上解体状態となってしまった。
ジェシーもまた、田中樹もメンバーだったHip Hop JUMPというグループで活躍したり、アメリカ人ハーフという特性を生かすようなポジションを任されることも多く、のちにはJr.イベントの中心に位置するなど、当時のJr.界の象徴、顔的な存在でもあった。
それゆえ同時デビューの段階では、メンバー個々の一般的知名度は、メディアより舞台などでの活躍が目立っていたSnow Manよりも、SixTONESのほうが高かったことは確かだっただろう。
しかし、売り上げの数字だけがすべてではないが、デビュー後のCD売り上げなどは少しずつSnow Manに差をつけられることもあった。
6人の6周年を前に思うこと
その後も順調にキャリアを重ね、常に最前線で活躍を続ける彼らではあるが、少なくともデビューに至るまでは、多くの人の理想とは少しずつ違うような遍歴を重ねてきた印象を抱く。はたしてSixTONESは勝ったのか。
来年1月のデビュー6周年を前に、そんな音楽雑誌の特集タイトルめいたことが、ふと頭をよぎった(戦う相手が何なのかはわからないが)。
SixTONES(バカレア組)がこの6人での再始動を直談判したように、彼らは“この6人”であることに大きなこだわり、そして誇りを持っていることを、その発言から感じることがある。
グループ名の読み方は“ストーンズ”と変更されたが、当初は“シックストーンズ”と読み、6つの音、原石といった意味合いをもたせたものだった。
6つの音は、それぞれは違う音であることも、彼らがそれぞれの個性、キャラクター性を大切にしてきたことが見てとれ、やはりこの6人でなければならないという意思は最初からそこにあった。
“6人”であることにこだわる彼らにとっては、区切りのいい5周年よりも6周年のほうが大切という考え方もあるようだ。
紅白のあと、ほどなく突入する6周年イヤー、かつて原石だった6人は、今以上に磨かれ輝く1年になるだろうか。6つの石、音は、ひとつの塊として、この先どんな光や音を放つのか。
SixTONESは勝ったのかーー。そんな勝ち負けなんていうものよりも大切なのは、6人一緒にすべてを背負っていくこと。6周年を前に、そんな気がした。
<文・太田サトル>
【太田サトル】
ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。
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