世の中には「特殊清掃業者」に対する思わぬ偏見や誹謗中傷が溢れている。
「特に会社としての知名度が上がってきた今は、身に覚えのないクレーム対応に追われることもあります。
ただ、それでもYouTubeやメディアに出演することには意味があると思っています」

都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、特殊清掃業者の苦悩について話を聞いた。

Googleの口コミで誹謗中傷や身に覚えのないクレームも多々

「お前らみたいな仕事には、ろくなやつがいない」特殊清掃業者が...の画像はこちら >>
日々の業務をこなしている中で、謂れのない誹謗中傷やクレームを受けることもある。

「他の清掃業者と勘違いしているのかはわかりませんが、電話はもちろん、Googleの口コミやLINEなどで弊社のサービスを受けたかのような文言でクレームが書かれることがあります。たとえば、『ワンルームのロフトの片付けをお願いしたのですが、とっておいて欲しかったものが捨てられていたり、大事なものを投げられたりして最悪でした。ここには頼まないほうがいいと思います』といったものですが、身に覚えがありません。

私は、営業部門を統括しているので全ての案件を基本的に把握しております。過去現場を遡ってみても、そのようなことはありませんでした。

二人組の作業員で対応した現場が酷かったと言われたこともあるので、社内でヒアリングしたり、調べてみたのですが、まったくの事実無根で、冷やかしだと思われます」

一体どこの誰の仕業なのだろうか。

「こちらとしては心当たりがないので、悪いレビューなどは同業者が嫌がらせでやってるのかもと勘繰ったことはあります。他にも見積り依頼を受けて現場に行ったら誰もいないみたいな冷やかしもありました。

そういった現場の場合、前日にリマインドとして依頼主にメールを送るのですが、返事がないんですよね。もしかしたら他の業者と同時に見積りをしていて、前の業者で決めてしまったから他の業者の見積りは無視してるという可能性もあると思います。

また、精神的に不安定な方からの依頼で、見積り当日に『今は人と会う気分になれない』とお断りされることもありました。
そこから着信拒否にされる時もあるので、こちらとしても見積りの際、事前にメールへの返信がなければキャンセルになるといった規約を考えてもいいのかもしれません」

YouTubeやメディア出演で知名度アップにつれて冷やかしが増加

会社としての知名度が上がってきたからなのか、イタズラ電話やLINE、仕事に関係のない相談を受けることも増えてきたと言う。

「LINEで『いま自分で工事をしていて苦戦してます。どうしたらいいでしょうか?』みたいな内容がよくきますね。簡単な内容であれば相談に乗って解決してあげますけど……。

毎年、年末くらいになると必ずLINEしてくる方がいます。

『フェンスを掃除する場合、どんな形のモップを使えばいいですか?』ときて、こちらも『フェンスによります』とか、『中性洗剤を使って拭き上げてみてください』と対応するのですが、やりとりを続けていくと、文章が支離滅裂になっていくんです。会話のキャッチボールが成り立たないと言うか。ただ、今後お客様になってくださる可能性もあるので無下にはできず、結局は対応するのですが、『お見積りのご相談でしょうか?』と料金の話に繋げようとすると、無視されるんですよね。今年もそろそろ、その方から連絡がくる時期かもしれません」

最近はなくなってきたが、創業当時は直接嫌味などを言われることも多かったとか。

「見積りをしていると、『なんでこんなに費用が高いんだ。お前らヤクザな仕事だろ!人の死で飯を食いやがって。お前らみたいな仕事には、ろくなやつがいない』って言われたことがありました。その場合はなぜ、こんな費用がかかるのかをしっかりと説明して納得してもらいます。
業者としても、なぜこの金額がかかるのかというのをきちんと説明する義務があるので。僕は創業当時はうまく説明できない時もありましたが、最近は知識がついてきたので、きちんと納得いただける形で見積りを出せるようになってきたかと思います」

特殊清掃業者に対する悪いイメージを払拭するために…

「お前らみたいな仕事には、ろくなやつがいない」特殊清掃業者が明かす、偏見や誹謗中傷に対する苦悩
世界基準のサービスを提供するべく、研修に参加(画像提供:ブルークリーン)
そもそも、なぜYouTubeやメディア出演を積極的に行うようになったのか。過去には特殊清掃業者はひどい偏見を持たれていた。

「特殊清掃は死体洗いみたいな感じで“反社会勢力や社会不適合者がやる仕事”という偏見を持たれている時期もありました。アングラな仕事で闇バイトの一環みたいな捉え方をされたこともあります。

特殊清掃は衛生環境が悪化してるところに入っていって消毒、消臭するという危険な仕事です。リスクを抱えて仕事をしてくれている仲間達を悪く言われるのは心外です。

なので、YouTubeを始めたり、メディアに出たりして、特殊清掃という仕事はどういうものなのかを伝える活動をしていくことに決めたんです。絶対にイメージを変えてやると思いました」

YouTubeを始めた後もコメントで誹謗中傷をされることは何度もあった。

「僕は片目にあざがあるんですけど、『孤独死現場を特殊清掃する前に自分の目のあざを特殊清掃しろ』って書かれたこともありましたね。でもそのコメントはちょっと面白いなと思って笑ってしまいました。この目は昔から自分でも結構自虐ネタとして使ったりしてるんで。
他人に言われても何も思わないというか。でも誹謗中傷の中でも仕事そのものに対する否定は悲しくなりますね。『なんでこんな仕事やってるの?』と言われたときは少しこたえました。“こんな”という部分が引っかかって……」

特殊清掃の悪いイメージを変えるには、小さなことからコツコツやることが大事だという。

SNSを使って特殊清掃はこういう世界なんだよ、こんな人たちが働いているんだよ、ということを周知させようとがんばりました。
現場でもお客さんに対して“悪い人がやる仕事”という誤解を解くために、一件一件しっかりと誠意を持って対応しました。また、Webサイトもきちんとプロにお願いして作ってもらい、会社として資本金を用意して、売り上げを立てて納税する、より社会に還元できる企業になることを目指して励んでおります。

完全にクリーンな会社を目指し、ここまで突き進んできました。僕は少なくとも、特殊清掃の仕事は専門職で技術職だというプライドを持って仕事に取り組んでいます。ですが、まだ偏見を持たれてる方も多いので、これからもまだまだイメージ戦略に伸び代があると思っています」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。
これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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