高市早苗内閣の支持率は高いが、解散権は連立与党・日本維新の会によって事実上封じられている。選挙制度論や定数削減の綱引き、予算編成と特例公債法の難関を抱える中で、今期は「増税阻止」に全力を注ぎ、景気回復と安全保障で成果を示せるかが政権の命運を分ける試金石となりそうだ(以下、憲政史研究家・倉山満氏による寄稿)。
「1月解散」の声も聞こえるが大義名分はあるのか
高市早苗内閣、相変わらずの高支持率である。期待値の高さか。初動の外交で成功したのも、大きかろう。東北地方を中心とした熊害での対応の遅れは問題にされていなし、一国の首相に対し「お前の汚い首を叩き斬ってやる」と大暴言を吐いた中国総領事もいまだお咎めなしだが、まだまだ高市首相への期待値は高い。
70%の支持率があったら、どんな総理大臣でも解散したい。「1月解散」の声も聞こえてくる。人によっては、「これより上がることないんだから、今の内に解散すべきだ」とも。
さて、1月解散だとして、何日に投票か。毎年1月末に予算を審議する通常国会を召集するので、1月解散だと、その前に投票日を迎えておくことになる。仮に一番後ろの25日日曜日の投票だとして、公示日は12日前の13日火曜日。振替休日の翌日だ。では、それ以前の正月早々に臨時国会を召集して、冒頭解散? 大義名分は?
解散権を維新が封じているようにしか見えない
連立与党の日本維新の会は、「成果を出してから」「定数削減は譲れない」と発信している。果たして50議席も、一気に削れるのか。「次の解散は、定数削減の後で」「その時の選挙制度は中選挙区制になろうか」と続く。これ、高市首相の解散権を、連立与党の日本維新の会が拒否権を行使し、封じているようにしか見えない。
そもそも、ほぼ全野党が反対する中、与党だけで議員の身分を削減する法案を強行するのに、大義があるのか。しかも短時日(たんじじつ)で。
選挙制度の改革は「一大事業」
仮に選挙制度を変えるとなると、一大事業だ。平成の政治改革では、海部・宮澤の二代の内閣が吹っ飛んで、政権交代した細川内閣でようやく実現したほどの、大事業だ。政界には、現行の小選挙区比例並立制をやめたい意見が強いのは分かる。だから中選挙区制に戻したいとの主張も分かる。ただし、中選挙区制(正確には、大選挙区単記非移譲式と言う)は、人類が考え出した最悪の選挙制度とも評される。この制度、泣きたくなるくらい死票(有権者の一票が無駄になる)が多くなる。民主主義が成立しないとも言われる。
よって、「また、アレに戻すのか?」との批判も強い。そこで、「中選挙区制に戻せ」論の主流は、「連記式にしよう」である。
ただし、完全連記か制限連記か、「中選挙区制に戻せ」論者の中でも、まとまりがない。たとえば、その選挙区が定数3だとして、3人全員の名前を書けるのが完全連記、2人の名前を書くのが、制限連記。これ、「5人だった場合どうするのか」の議論もある。
ちなみに「移譲式」とは、同じ党から候補者が出ていると、片方の候補者の当選が確定すると、別の候補者に票が上積みされる。この制度の利点は、票割りがないこと。票割りとは「お前はA候補に入れろ、お前はB候補にいれろ」のように、ボスが有権者に指示して共倒れを防ぐこと。かつての中選挙区制では非移譲式だったので、票割りが上手い者がボスになった。個人の意思、関係なし。
今の高市氏の力では増税阻止が限界
選挙制度の変更までやると、どの選挙制度にするかで、絶対にまとまらない。ちなみに、「順位付小選挙区制」という制度もある。この制度、「たった一つを除いて、世界で最も優れた選挙制度」と言われている。その一つとは、ムチャクチャ面倒くさい。私もどの制度にするのか、現行制度をやめようとしている議連の代表者に聞いてみたが、「そこまで詰めていない」だった。
そもそも、1~3月は解散してはならない時期である。予算審議があるからだ。むしろ、肝心の予算編成が行われているのは、年内だ。解散時期に集中させることで、予算から目をそらせようとする、誰かの陰謀かと勘繰りたくなる。高市首相は減税志向だが、黒幕たちはすぐに増税をやりたがるので、国民が監視を怠ると、知らない内に増税されている羽目になりかねない。
正直、今の高市首相の力では、増税阻止が限界である。首相個人の人気は高いが、政権基盤が弱すぎる。だから、年内は「すべての増税を潰す」に専念して良いのではないか。とにかく、予算で増税をいれないだけで十分。既に決まっていた、ガソリン減税は年内に行うようだ。
満点と言えるかどうかはともかく、悪い流れではない。
高市内閣の生命線は「安全保障」と「景気回復」
浮ついた議論の前に、本筋を見つめた方が良い。与党の維新が連立を離脱すれば、予算は成立しない。そもそも参議院では、自民党は数が足りてない。また、今年の予算は特別である。5年に一度の特例公債法を通さねばならない。この法律が通らねば赤字国債が発行できず、予算の半分は成立しない。しかも特例公債法は予算と違って単なる法律なので、衆議院の優越が無い。高市内閣、自前の予算を編成し、特例公債法とともに通すまでは、いかに支持率が高かろうが、油断はできないのだ。
だが、チャンスとピンチは同時に訪れる。
高市内閣の生命線は、第二が安全保障で毅然とすること、第一が景気回復。国民はマトモに飯を食わせてくれるなら、多少の苦痛には我慢してくれる。
それより、高市首相の支持率に自民党のそれが追い付いていない。有権者は既得権益と戦ってくれと願っている。切り込めるか。
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】
憲政史研究家 1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。
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