AKB、“卒業メンバーと”6年ぶり紅白

「AKB48、“卒業メンバーと”6年ぶり紅白」が映し出す“ほ...の画像はこちら >>
 AKB48が6年ぶりに紅白に帰ってきます。そこに卒業メンバーも加わると判明し、話題となっています。

 出演するのは、前田敦子、高橋みなみ、小嶋陽菜、板野友美、峯岸みなみ、大島優子、柏木由紀、指原莉乃の8名です。
グループの全盛期を支えたレジェンドが一堂に会して、結成20周年に華を添えることになりました。

 彼女たちがいたころのAKBといえば、話題にならない日はないというぐらいのメディアジャック状態でした。

 たとえば、熱愛が報じられた峯岸みなみが恋愛禁止のルールを破ったという理由で坊主にして号泣謝罪したり、またイベントでの握手券との抱き合わせでCDを販売することが国会で議論されたりと、国民の注目を集める出来事をたくさん提供してきました。

 そうした側面から、批判的に、もっと言えば否定的に語られるケースの多いAKB48ですが、しかし、そこは悪名は無名に勝るといったところ。話題になり続けてきたことで、いまでもヒット曲を覚えている事実もあるわけです。

数々の「国民的な大ヒット曲」を生み出したAKB

「会いたかった」、「ヘビーローテーション」、「フライングゲット」、「恋するフォーチュンクッキー」などは、オタやファンの外にも届いた、れっきとした国民的な大ヒット曲です。桑田佳祐が自身のラジオ番組で「フライングゲット」と「恋するフォーチュンクッキー」を、それぞれの年を代表する日本のポップスに選んだことからも、その価値がうかがえます。

 筆者も「恋するフォーチュンクッキー」はいい曲だと思います。これを聴くと嫌なことや厄介事を忘れていられるからです。それは馬鹿にすることのできないポップスの重要な役割なのです。

 マニアックな視点では、最後の方でエルトン・ジョンの「Are You Ready For Love」っぽい転調が入るのもいい。「恋するフォーチュンクッキー」のディスコサウンドと、エルトンのフィラデルフィアサウンドを結びつける遊び心には妙味があります。

 紅白でもこれらの曲をメドレーで披露すれば、絶対に盛り上がるでしょう。


卒業メンバーの復帰が映し出す“ほろ苦い現実”

 その一方で、神メンバーの復帰はほろ苦い現実も映し出しています。それは理屈抜きの娯楽とプロフェッショナルの仕事が両立しているヒット曲がほとんどないことの裏返しだからです。つまり、かつてのAKB48が体現していた下世話さが音楽から失われているのです。

 確かに、米津玄師や藤井風、Mrs. GREEN APPLE、king gnuにOfficial髭男dismといった本格派のミュージシャンが台頭してきていることは喜ばしいことです。またガールズグループやボーイズグループにも歌やダンス、ラップの実力が求められる時代になりました。

 それは海外展開を目論む日本の音楽にとって欠かせない要素であることは間違いない。

 けれども、音楽が一番の趣味ではない人たちにも訴えかける力を持った、良い意味で大味なヒット曲も欠かせません。一方で生真面目になりすぎずバカバカしさに向き合える器があるから、シリアスなアーティスト性を備えた人たちが際立つのです。音楽を盛り上げるためには、対照的な両輪が必要なのです。

AKBレジェンドの再集結が教えてくれること

 その観点からすると、いまはシンガーソングライターバンドもアイドルも、一様に実力主義に傾いているきらいがあります。なんだか音楽がスポーツっぽくなっているのです。

 AKB48の代表曲にはその種の貧乏臭さが全くありません。今回の紅白で歌えば、それはこの時代に対する立派な批評となるはずです。


 ただ昔を懐かしむのではない。AKBレジェンドの再集結は、芸事の肝も教えてくれることでしょう。

文/石黒隆之

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
編集部おすすめ